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業界構造が再編する家電小売業界

ビックカメラ、コジマ電気買収の背景にある「YKK戦争」

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 一方のビックカメラはどうか? 今期(12年8月期)の業績予想は、連結売上高が前年同期比13.4%減の5300億円、営業利益は同54.8%減の90億円の見込みだ。ビックは創業者の新井隆二氏が健在だ。09年に有価証券虚偽記載問題の責任を取って会長を辞任。相談役に退いたとはいえ、新井氏個人名義と信託口の分を含めると28.53%を保有する筆頭株主で、最高実力者であることに変わりはない。

 ビックは8位のベスト電器を持分法適用会社に組み入れている。07~08年にかけてヤマダがベストの買収を仕掛けたとき、ビックはベストの増資を引き受け、ホワイトナイトとして買収防衛策に協力した。しかし現在、15.03%を保有する筆頭株主だが、提携したメリットを生かしきっていない。ベストの前期(12年2月期)の連結売上高は2617億円で、前期比で23.2%減と大きく落ち込んだ。今期(13年同期)はさらに8.9%減少し2383億円になる見込みだ。08年の実績(4135億円)に比べて4割以上減る。

 ビックとコジマ、ベストの3社の今期の売上高(見込み)を合計すると1兆1088億円。1兆円の大台に乗せ、首位のヤマダ電機に次ぐ2位に浮上する。しかし、「コジマ、ベストという経営不振企業を束ねるビック主導の合従連衡は弱者連合でしかない」(流通担当のアナリスト)

 ビックがベストで提携効果を出せていないのは、出資比率が小さいからだ。業界には暗黙の「40%ルール」がある。40%以上の出資関係にないと、メーカーから共同仕入れを認めてもらえないという商慣行だ。価格競争を勝ち抜くには、共同一括仕入れでコストを下げるのが、一番の早道だ。ビックの宮嶋社長は統合会見で「仕入れを統合するために、(コジマの)過半数の株を握る必要があった」と述べたのは、このルールがしっかり機能していることを物語っている。

常に主導権が変わる家電小売業界の歴史

 ここで、家電量販店の歴史を振り返っておこう。戦後の家電流通地図は、2度塗り変わった。当初はナショナル、日立、東芝などメーカー系列の販売店が主役だった。高度成長期に定価販売のメーカー系列店に挑戦状を叩きつける形で登場したのが、大量仕入れ、大量販売により低価格を実現した家電量販店だった。量販店を束ねる役割を果たしたのが72年に設立されたNEBA(日本電気大型店協会)である。東京の第一家庭電器や福岡のベスト電器などNEBA系の量販店が80年代後半には家電流通市場の3分の1のシェアを握るまでになった。NEBA系量販店の黄金時代である。ベスト電器は17年間、家電売上高日本一を続けた。これが第1幕だ。

 流通形態が劇的に変わるのは1992年。大店法(大規模小売店舗法)改正で、大型店の出店が可能になった。一方で家電専門のディスカウンターが台頭してきた。これを象徴するのが94年に勃発した「YKK戦争」である。NEBA系は「北関東の風雲児たち」の血で血を洗う闘いを高みの見物と決めこんだが、ニューカマーたちの勢いは、あっという間に全国各地に広がった。駅前型小型店舗から郊外型大型店へと家電の流通形態は様変わりした。郊外型大型店を展開するヤマダ電機やコジマ、都心型大型店のヨドバシカメラとビックカメラなど、NEBA非加盟店が家電流通の新しいリーダーとして発言権を強めていった。第2ステージの幕が上がった。

BusinessJournal編集部

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