>  > 倒産した元人気企業社長の告白
NEW
話題の本『私、社長ではなくなりました。』安田佳生氏インタビュー

高額給与は社員のためにならず...倒産した元人気企業社長の告白

【この記事のキーワード】,
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ワイキューブ元社長が語った「やりすぎ」戦略とは!?

――私もワイキューブ時代の安田さんに取材をしたことがありましたが、当時の裏側が余すところなく書かれていて、驚きの連続でした。私が取材したのは、恵比寿にあったワイキューブの自社ブランド「Y-style」の店舗でした。当時は社員の方もみなさんオシャレなスーツを着ていて、面食らったのを覚えています。

安田佳生氏(以下、安田) 実は、「会社をブランディングする」というのは後付けの理由です。もともとは、私自身会社に行くのが嫌だったので、社員が「会社に行くのが楽しい」と思えるようにしたいと思っていました。たとえば、会社にカフェがあってパティシェがいたらみんなが楽しいだろうと。しかも、そのような会社を「福利厚生が充実している会社」だということでブランディングしたら、一石二鳥だと考えたのです。そこで、次々に会社内にバーやワインセラーを設け、自社ブランドもつくった。せっかくブランディングしたのだから、メディアが飛びつくような「やりすぎ」をやったのです。ただの無駄遣いではなく、福利厚生を「やりすぎ」れば、メディアもどんどん取材に来てくれます。人材業界でリクルートなど大きな企業がひしめくなかで対抗していくためには、強いブランドが必要だったのです。「施設にお金を使いすぎたからワイキューブはつぶれたのだ」という人もいますが、この「やりすぎ」戦略のおかげで売上も3倍になり、成功しました。

――会社の受付に美人を置くというのも、その一環ですか?

安田 もちろん美人だけでなく、優秀な人材であるというのがその前提ですが、昔、採用難だったときに、優秀な男性を採用するのは難しい時期がありました。そのときに私たちがクライアントにアドバイスしたのは、「優秀な女性を採用しよう」と。すると、女性に魅かれて男性も入ってくるようになり、結果としていい人材がとれるようになるとアドバイスしていたのです。また、私たちは採用のコンサルティング会社ですから、窓口に優秀な人材がいないと、クライアントに対する説得力がないじゃないですか。受付にきれいで賢い女性がいたら「さすが、ワイキューブ」となるわけですよね。

――ブランディング戦略の一環ですね。一方で「やりすぎ」戦略の失敗は?

安田 「3年間で社員の平均給与を1000万円にする」ことを目標に、社員の給与を高くしたのは失敗でしたね。本当は当時400万円だったワイキューブの平均給与を1000万円どころか、2000万円にまでしたかったのですが、770~780万円までいったところで、リーマンショックに襲われてしまった。あとは業績も3分の1になり、給与も下がる一方でした。給与の「やりすぎ」は、まったく業績向上に反映されませんでした。そもそも社長はグリーン車に乗っていいが社員はダメといったように、「社長だから特別なんだ」と、社員との間に線を引くような考え方には違和感があった。当時は、「社員の給料が一番高い会社の社長が一番偉い」と思っていたこともあって、社員の給与を高くしたのです。しかし、給与を高くすれば、社員の能力が上がるというわけでもない。反対に社員が、今の給料は自分の能力が高く評価された結果だと考え始めてしまい、「給与が上がったからもういいや」と守りに入ってしまう人が多かったですね。そして給与が下がった途端に、多くの人が辞めていきました。

――ワイキューブがあった00年代は、ライブドアに代表されるように「会社の儲け至上主義」が広がり、ほとんどの企業で社員に対する待遇が悪い時代でした。そんな中、安田さんが目指す方向は「社員第一主義」のような姿勢で、真逆ですね。

識者のブログ記事一覧Business Blog