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野村、インサイダーでも課徴金なし!?根絶のカギは密告

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 情報を漏らした者も、総額2020万円の利益を得た者も免責され、その情報をもとに運用した者の責任の代償は8万円だけとは、なんとももどかしい。もし、株の売り抜けに失敗して1円でも損失を出していたら、もしくは、運用報酬を受け取らなかったら、利益額は0円で課徴金は1銭も払わなくてもよかったのだ。

密告者の免責+密告の報奨金を制度化すべし

 インサイダー取引を放置すると、市場参加者の間の公平性を損ねて、日本の証券市場の国際的な信用を失墜させかねない。だが、民主党が検討している「課徴金を利益額を超えて引き上げる」という対策だけでは、根絶はとても望めない。それどころか、課徴金対策だけでお茶を濁すと、逆効果になる可能性さえある。

 インサイダー取引の根絶に確実に効果があがるのは、内部告発つまり密告の奨励である。それも、密告して不利益を被らない程度では中途半端で、密告に多額の「報奨金」をつけて、次の不等式が成り立つことが必要だ。

・密告の経済的な利益(報奨金)>発覚した時に被る不利益(課徴金その他)-インサイダー取引による利益

 例えば、証券会社が複数の投資家にインサイダー情報を伝え、儲けさせた後、ひとりの投資家が証券取引等監視委員会に密告したとしよう。密告の受付窓口は今もある。現行法では、密告の経済的な利益はゼロである。それどころか密告した投資家も責任を負い、利益額相当の課徴金を取られる。さらに刑事罰を受けるかもしれず、名前を公表されたら社会的な制裁も待っている。上記不等式の右辺

・発覚した時に被る不利益-インサイダー取引による利益

は大きくなる。それに加え、民主党が検討している課徴金の引き上げを実施したら、右辺の数値はますます大きくなり、密告したことによるデメリットは拡大してしまう。密告すると、今よりもっと損になるのであれば、誰が密告するだろう。正義のために大損できるか?

 密告しても損をしない仕組みに変えるには、2つのやり方がある。
 

 ひとつ目は、右辺の「発覚したときに被る不利益」を密告者に限って小さくすること=「密告者の免責」で、2つ目は左辺の「密告の経済的な利益」を大きくすること=「密告の報奨金」である。どちらも現行法には規定されていないが、ダブルで実施すれば効果は大きいはずだ。

 密告すれば課徴金は取られず、インサイダー取引で得た利益はそのまま受け取ってよい。刑事罰も受けないし、名前も公表されない。さらに報奨金まで受け取れる。つまり、左辺にはプラスの数字が入り、右辺はマイナスになって、不等式は成り立つ--それだけのメリットがあれば、ほんの小さな正義感でも密告できるだろう。インサイダー取引はどしどし摘発され、やがて誰もやらなくなるのではないか。

独占禁止法には立派な先例が存在する

 密告と言えば、アメリカやイギリスの法律には、犯罪仲間を警察に密告したり捜査に協力したりすると刑罰が軽くなる「司法取引」という仕組みがある。それに似た内部告発の制度が日本で話題になると、必ずといっていいほど「日本人の国民性に馴染まない」という反論を受ける。また、「司法取引は日本の法体系に馴染まない」と、英米法と大陸法の違いを持ち出して、法律論を振りかざす人が出てくるかもしれない。密告の報奨金は財政難の折から「財源はどうするのか」と聞かれる可能性も高いだろう。

 国民性の議論を始めるとキリがないが、司法取引については日本にはすでに似た制度が存在する。06年の独占禁止法改正で導入された「課徴金減免制度」がそれである。これは「密告者の免責」を図る制度で、談合やカルテルのような独禁法違反行為に加わった企業が、公正取引委員会に「違法行為がある」と申し出て調査に協力すれば、その企業への課徴金は減免される。例えば、公取委が立入検査に入る前に最初に密告した企業は、課徴金が全額免除になり刑事告発も免れる。これを、インサイダー取引の密告の奨励でも、そっくりそのままやればいいのである。

BusinessJournal編集部

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