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W杯予選、裏MVPはザックをしびれさせた遠藤の”自然体”

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 昔、釜本邦茂選手の右45度からのピンポイントシュートが有名だった。初めは相手も止められなかったが、徹底的に釜本の右足を封じたのだ。そこで彼は、一級スター選手であるのに願(がん)を立て、ゴールに向かって左足シュートの練習を積む。その数が1万本になったとき、左足のキックの強さが右足とまったく同じになったという。

 それで、左右45度のどちらからでもシュート可能となり、得点の量産が始まった。加えて、たくさん相手を引きつけて味方選手が飛び込めるスペースをつくった。釜本が樹立した日本リーグの202得点も、国際Aマッチの75得点も、オリンピックの7得点も破られてはいない。

 香川も、オーストラリア戦で少しはできていた「オープンに広げる攻め方」を、もうひとつの極意としたほうがよい。これはサッカーだけでなく宇宙の原則だ。専門バカでは天下を取れない。専門分野に、もうひとつの掛け算が必要だ。これは「押し」だけではモノが売れず、「褒める」だけでは人が動かず、「技術」だけではヒット商品が生まれないのと同じだ。
 
遠藤、監督をしびれさせる

 本田や香川ほど目立たないが、ゲームを観るとき遠藤保仁選手だけを追っても退屈しない。彼の著書(『自然体』<小学館101新書>)のタイトルの通り、本田とは対照的に、彼は「自然体」といわれる。ところが、試合中の彼の表情を見ると、時々ものすごい形相をしている。

 ところが、そんなときほど彼のキックは、いっそう正確なロングパスや柔らかいショートパスになるのだ。これは不思議な自然体だ。特にヨルダン戦の本田へのラストパスはどうだろう。遠藤の必死の形相で出したグラウンダーに、本田がほとんどついていくだけでネットを揺らした。

 あまり話題とならないが、遠藤は監督の戦術にきわめて忠実だ。また、ゲームメーカーだから、そうでないと監督のサッカーが成り立たない。オマーン戦では「左サイドから右サイドへボールを突き差し、それを右サイドが打て」という戦術に従い、ボールを左にたくさん供給した。ヨルダン戦では、「左右両サイドからシュートを打つ」という戦術に従い、両サイドにボールを供給した。そして、オーストラリア戦では「相手のロングパスのセカンドボール(ロングパスを相手の選手が受けたボール)を取れ」との戦術を達成すべく、相当下がって相手ボールに食らいついていた。

 ところが忠実なだけでない。監督は遠藤によって自分の授けた戦術が、「それを超えて進化するのを見るとしびれる」という(元ガンバ大阪・西野朗監督)。人は誰でも、自分の言うことを実行してくれると嬉しいものだが、それを超えてくれるともっと嬉しい。

 リーダーの指示に忠実なだけのロボットではいけない。その指示に従いながらも、自分の強みを生かして、リーダーをうならせるくらいでなければいけない。
(文=大西 宏/コンサルタント、ビジネス作家)

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●大西宏(おおにし・こう) 三国ケ丘高校(大阪府)時代、サッカー全国大会にMFとして出場し2位。パナソニック元営業所長、元販売会社代表。同社サッカー部長時代に同部を天皇杯獲得に導き、ガンバ大阪発足に際してはその陣頭指揮を執り、釜本邦茂監督を招聘した。退職後は関西外国語大学教授などを歴任し、現在、キャリアカウンセラー、産業カウンセラーとして講演や企業・現役ビジネスパーソンのサポートを行っている。『自由と強制のリーダーシップ』(中経出版)、『松下幸之助の思考法』(実業之日本社)、『サッカー日本代表に学ぶキャプテンシー』(イーブック・ジャパン・アソシェーション)など著書多数。

BusinessJournal編集部

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