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「クラウドファンディング」運営者に求められる、明確な審査基準とは?

自称ニートがネットで”生活費集め”はOKか!? (前編)

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 ここで、このプロジェクト内容の信憑性や妥当性について、主に2つの大きな疑問が生じる。

 ひとつは、phaさんが「ニート」と自称していた点。彼のプロジェクトのページには、病気や障害などの働けない事情は紹介されていない。それどころか、「制作作業が終わったらなにがしかのバイトなどをしてお金を稼ぐことも考えている」と明かしている。彼には働けないほど切実な事情はないのだ。

 約2年前の姉妹サイト「日刊サイゾー」の取材で、phaさんは月収を聞かれ、こう答えている。

「だいたい10万円ちょっとくらいです。ブログのアフィリエイトやちょっとしたネットサービスを公開していたり、ネットで本を売ったり。それから時々原稿を書いたりしているのでパラパラと細かい収入があります」

 phaさんは仕事をしたくない自営業者であり、ニートでないことは彼自身も、筆者の質問に対して、自分のブログで「確かにその通り」と認めているのだ。

 2つ目の疑問は、phaさんが求めたのは「制作費」なのかという点だ。彼は、集めた資金の使い道をこう説明している。

「半年ぐらい前から原稿を書いているんですが、書いているうちにお金がなくなってきて困るようになってきました。文章を書いていると資料として本を買ったりもする。家で作業していると家賃や光熱費や通信費もかかるし、家にずっといると気が滅入るのでファミレスやカフェにも行く。たまには酒を飲んだり焼き鳥を食べたりして気力も補充したい」

 書籍を書き下ろす場合、資料代は税申告の際に経費として計上できるし、phaさんのような低所得者の場合は赤字申告で還付金が入り、資料代程度の額面は相殺される可能性が高い。

 通常、書籍の制作費といえば、遠方の取材に必要不可欠な交通費や宿泊費などを意味する。在宅でニートの本を執筆する際には、まず関係がない。他のほとんどの経費は生活費だ。「家賃や光熱費や通信費」「ファミレスやカフェ」「酒を飲んだり焼き鳥を食べたり」を「本の制作費」と言いきるには、語弊があるだろう。

 彼のプロジェクトを正確に表現するなら、「自営業者ですが、仕事をするのがだるいので貧乏になりました。とりあえず1カ月分の生活費が欲しいです」になる。

「働きたくない」は正当な理由になりうるのか?

 phaさんは、「働きたくないという気持ちはそんなに責められることじゃないし、もうちょっと働かないことについてみんな寛容になったら生きやすい社会になるんじゃないか、お金がなくてもインターネットがあれば結構楽しく暮らせる」と書いている。

 もっともらしい物言いだが、「『死ぬほど異常に何がなんでも働きたくない』という人は『働けない』とほぼ同じです。そして、単に『働きたくない』とか『だるい』という理由でクラウドファンディングを使っても別に構わない」とも書いている。

 バイトのような自助努力を後回しにし、他人が働いて得た金を当てにする。それは彼の自由だ。だが、「制作費」を無制限に拡大解釈するプロジェクトが承認された今、食えないクリエイターが制作費として生活費を求める案件を拒む理屈が立たない。

BusinessJournal編集部

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