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財務はピカピカになった一方、インサイダー疑惑や安全面は大丈夫か?

JAL再上場、稲盛経営の舞台裏と“一民間企業”としての今後

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 加えて、JAL再上場をめぐっては、より大きな疑惑がささやかれている。

「JAL再建を主導した支援機構は、JALのイグジット(出資の回収)が最大の課題でした。そこで、大量リストラやパイロット育成廃止などの行き過ぎたコスト削減により、利益を高くし、再上場時のJAL株式の初値を目いっぱい引き上げ、高値で売り抜けるために躍起なのです」(支援機構関係者)

 今まで国の全面的な支援の下、とにかくコスト圧縮に取り組んできたJALだが、上場後は一民間企業として、競合他社との激しい競争にさらされ、“攻め”の経営も強いられることになる。そのため、新規投資や採用などにより、これまで一時的に圧縮されてきたコストが増加してくることで、膨らまされていた利益も、徐々に適正な水準に戻っていかざるを得ないだろう。つまり、JALの業績は再上場時をピークに下降する可能性が高く、株価も「支援機構が売り抜けた後、下落するだろう。こうした事情を知ってか、海外機関投資家は、今回の再上場に伴うJAL株取得にほとんど関心を示していない」(市場関係者)との見方が有力だ。

「ウォールストリートジャーナル(日本版)」(8月21日付)も、JAL再上場を、上場後に株価が半値まで下落したフェイスブックと比べつつ、「株価が持ちこたえるかどうかは、世界経済や燃料価格市場の状況を見守る必要がある」と報じた。

 あるベテラン証券マンは、多くの個人投資家が、国や証券会社に踊らされて株を購入し、痛い目に遭う可能性を指摘する。

「証券会社が煽れば、そりゃあ初値は上がるだろう。だが、市況も悪いし、今後成長の見通しもないのでは、株価が下がるのも時間の問題だ。まるで、ブラック・マンデー(ニューヨークの株暴落)後の87年に行われた、政府保有NTT株の第二次売り出しと同じ構図ではないか。あの時、売り出し直後は野村證券などが買い支え、高値を維持し、国は7兆円を超える売却収入をせしめ、証券会社も手数料にありついた。しかし、株価はその後低落し、株を購入した個人投資家たちは、結局高値で株をつかまされ、損をした格好となった」

安全を犠牲にしてつくられた“ピカピカの”財務

 そして今、個人投資家たちにババを引かせようと虎視眈々なのは、支援機構だ。JALの中堅パイロットによれば、JALは上場審査の対象になる直近の決算がピカピカになるよう、本来使うべきカネもとことんケチり、利益を膨らませているという。

「例えば、パイロットの養成も完全にやめてしまいました。安全運航やモチベーション維持のために再開してくれという、現場からの切実な要求に対しても、幹部は言葉を濁すのです」(同)

 必要な支出を無理にカットし、利益を増やす。実際に支出しないのだから粉飾とは違うが、企業の体力を削ぎ、事業価値は毀損する。

 前出のパイロットによれば、コスト削減の一環として、パイロットを養成するために採用された訓練生は副操縦士に、副操縦士は機長に昇格するために必要な養成がなくなり、それぞれ「副操縦士になる夢」「キャプテンになる夢」を断たれ、モチベーションが喪失した現場では退職者が後を絶たない。その結果、日本に就航したLCC(格安航空会社)3社に所属するパイロットの約7割を、JAL出身者が占める事態にまでなってるという。

 こうした事態は、利用者への利便性にも影響を及ぼしかねない模様だ。

「JALエクスプレスという、JALの100%子会社がある。小型のボーイング737型機を使用し国内各都市間を結んでいますが、そこでもパイロットの2割が退職してしまいました。現在は抜けた分をJALからの出向者で持ちこたえているが、何かあったら人繰りがつかずに、欠航が玉突的に起きかねない」(ベテランパイロット)

BusinessJournal編集部

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