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“意外な”好業績のジャパンディスプレイ、台湾・韓国勢との規模競争に勝てるか?

ディスプレイ日の丸連合、アップル一本足戦略にくすぶる懸念

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業績好調のジャパンディスプレイのHPより
 スマートフォンなどに使う中小型液晶ディスプレイで世界シェア首位のジャパンディスプレイ(JDI)。東芝、ソニー、日立製作所が事業統合して4月に発足したが、iPhone 5需要に沸き、業績は好調だ。ただ、先行き不透明の観測も浮上している。「アップルに頼り切って本当に大丈夫なのか?」とささやく関係者が多い。

●一応の評価を得た構造改革だが……

 懸念とは裏腹に、足元の業績は好調だ。未上場企業のため開示情報ではないが、関係筋によると、すでに4~6月期で黒字転換しており、通期でも黒字を見込んでいるという。業績改善の要因は、統合前に構造改革に着手した点。4月の発足前に1400人規模の従業員の削減に乗り出したほか、管理職の数を絞り込むなど次々と手を打った。証券アナリストは、「電機銘柄のこれまでの統合会社は、会社発足後に構造改革案を策定していた。自然とリストラなどが後手に回っていたことを考えれば、JDIの取り組みは評価できる」と語る。
 
 ただ、社内の受け止め方は異なる。中堅社員は「リストラの効果は大きいが、社員としてはそれ以上に経費削減で利益をなんとか出した印象が強い」と語る。東京都港区の本社受付は簡素で、本社内には応接室も設置していない。社有車はなく、大塚周一社長や役員全員が電車で通勤する。新幹線もグリーン車を使わない。「大塚さんはエルピーダメモリ出身。本社機能の徹底した固定費削減や役員の電車通勤などは、エルピーダの坂本幸雄社長の手法そのもの」(前出の社員)という。

●手ごわい韓国・台湾勢~スケールメリット追求では失敗する

 優れた経営手法を取り入れるのは、経営者としては当然の行動だ。「坂本流」に問題はないが、懸念されるのは事業構造もエルピーダと若干重なる点。実際、エルピーダの二の舞いにならないかとの指摘は統合前からあった。

 「標準品のDRAMとカスタム性の強い中小型液晶はビジネスモデルが違うと、大塚社長は繰り返している。だが、中小型液晶市場の勝敗のカギを握るのは米アップルの動向次第。いかにアップルに大量の製品を供給できるかで決まる。増産、増産で単なる規模競争に陥っては、韓国、台湾勢に中長期で勝つのは難しい」(前出の証券アナリスト)

●エルピーダも規模競争でサムスンに敗れた過去が…

 エルピーダメモリは、半導体の主要技術である微細化(ウエハー上の回路線幅を細くする技術。微細化が進めば、ウエハー1枚当たりからのチップ取得数が増える)ではサムスンに先行しながら、破たんに追い込まれた。パソコンからスマートフォンへのDRAMの主要市場の移行を読み違えたことが主因だが、その背景には規模競争では太刀打ちできないという厳然たる事実が存在した。

 JDIは2014年にも上場を予定する。想定以上に業績が好調との見方は内外で少なくないが、「アップル一本足」という、言ってみれば「博打」体質のままでは思わぬ落とし穴にはまる可能性もある。この不安が現実のものとならないよう、祈り続ける関係者が多いことも事実である。
(文=江田晃一/経済ジャーナリスト)

『21世紀の国富論』


ディスプレイ産業=国富なり

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