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ダマされないための「儲けのカラクリ」 第13回

アップルが、iPhone部品生産遅れたシャープに甘いワケ

文=坂口孝則
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●iPhone 5とシャープ液晶

 ところで、現在iPhone 5の生産遅れについて、シャープの液晶の供給遅れが問題だったと報じられている。複数の関係者やニュースによると、液晶の歩留まりが悪化しており、想定の数量を生産できなかったためだという。

 この液晶の供給遅れで、周辺の部品メーカーは影響を受けたといわれる。当たり前だが、液晶がなければiPhone 5の生産ができないので、他の部品メーカーは準備をしていたものの、供給することができなかったのだ。

 iPhone 5を利用している立場からすれば、確かに液晶は優れており、一部で批判された「黄色がかった」画面色だけれど、私は気にならない。数世代前の機種と比べると、その進化に驚くほどだ。

 とはいえ日本の技術力は、その製品機能の高さだけではなく、優れた生産力にもあったはずだ。もし、シャープの歩留まりが悪化し、供給数量が確保できなければ、他のディスプレイメーカーに変更することもできたはずだ。完全に切り替えるわけではなくても、そのシェアの一部を他社に担ってもらうこともできたはずだ。実際に、iPhone 5のディスプレイはシャープ1 社ではなく、シャープを筆頭として、複数社から調達されているといわれる。

 しかし、アップルはシャープを無理に外さずに、生産を待ち続けた。もちろん、生産管理の問題や契約の問題はあるだろう。ただ、この事実から、アップルがシャープ・鴻海連合との関係を重視していると考えるのは穿った見方だろうか?

 サムスンディスプレイとアップルの関係。そして、アップルと鴻海・シャープの関係。いずれにせよ、製造業の領域では、スマートフォン関係のビジネスを中心に動くようになってきた。実際、影響を受けたと書いた部品メーカーの売上と利益も、アップルとサムスンのスマートフォン頼みという側面が大きい。

 その状況下において、日本メーカーが生き残りをかけ、どのようにスマートフォンに加担していくか。日本製のガラケー、スマートフォンが元気のない中、せめてアップルとサムスンのスマートフォンに部品を供給すること。そこに儲けの源泉も詰まっているに違いない。

 アップル商品もサムスン商品も使っているファンとして一言。

 アップルはん、サムスンはん、日本メーカーをよろしゅうたのんます。

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坂口孝則

坂口孝則

関西の某国立大学卒業後、携帯電話メーカーへ。購買部に配属される。バイヤーとして担当したのは200社以上。株式会社アジルアソシエイツ取締役、未来調達研究所取締役(現職)。バイヤー同士の情報交換ができる場、購買ネットワーク会発起人。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。メルマガ「世界一のバイヤーになってみろ!!」代表執筆者。コスト削減のコンサルタント、調達業務研究家。物流コンサルタント。
未来調達研究所株式会社

Twitter:@earthcream

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