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裁判所・検察・経済界にハシゴを外され続けた末路

なぜ日弁連は、弁護士余剰の元凶・新司法制度改革を推進した?

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 合格者が増えれば、国費を投じる司法修習費用も膨らむ。このため、司法修習期間を短縮してコスト増を回避する一方、司法研修所に代わる教育機関として、法科大学院創設構想が浮上する。

 この法科大学院創設構想には、日弁連の悲願である法曹一元構想がリップサービス的に加えられていた。法曹一元制度とは、経験を積んだ弁護士の中から裁判官や検事を選ぶという制度で、裁判官や検事を司法修習終了後純粋培養で育てる日本やドイツ、フランスとは異なり、英米では採用されている。

 日弁連は1500人体制で法科大学院制度が創設されると当初は勘違いし、法曹一元実現のために1500人への増員もやむなしとして、一転、法曹人口増加賛成に主張を転換するのだが、後に実は合格者数は倍の3000人だとわかってからも、法曹一元の夢を捨てきれず、法科大学院構想に反対できなかった。

●逆算で決めた合格者数3000人

 99年に発足した司法制度改革審議会では、改革を進められない法曹3者はついにオブザーバーに格下げされて発言力を失う。結果、法曹一元も実現しないまま3000人体制も容認せざるを得なくなったーー。

以上、小林弁護士が整理するように、「法曹人口大増員を日弁連が後押ししてしまった」というのは、こういう事情だったのだ。

 日弁連は法曹増員には反対し続けたと考える法曹人も少なくないので、小林弁護士の主張には異論もあろう。だが、法曹人口の大増員のいきさつを断片的に語れる法曹人はいても、これほど史実を踏まえた説得性の高い解説は、ほかに類を見ない。

 ところで、なぜ司法制度改革審議会は合格者数を3000人に設定したのか?

 法科大学院構想をスムーズに実現させるため、当初は、法科大学院の設置数や定員の上限を設けなかった。そうすると、東大などこれまで司法試験で大量合格者を出してきた大学が希望する枠だけで相当人数を食うので、総定員を4000人と想定し、その7~8割を合格させるには合格者数を3000人にしないと計算が合わなかったのである。

 しかし実際にはその想定をはるかに上回る、74大学が法科大学院を設置、総定員も5800人を超えてしまった。だが、裁判官や検事の採用人数は増えないし、弁護士事務所が雇いきれる人数を大きく上回る人数の合格者が毎年送り出される。

 現在日弁連は、1500人体制への削減を主張しているが、これほど就職難が問題になっているにもかかわらず、07年度以降ずっと2000人体制が維持されたままだ。その理由もまた諸説あり、中には有力政党との関係が深い、宗教団体系の法科大学院への配慮だとする説もある。

●進む両極化、合格率引き上げに下位校は必死

 新司法試験が回を重ねるごとに、実績は残酷に積み上がる。合格率が高い上位校への志願者が増えるのは当然で、下位校との差は開く一方だ。姫路獨協、神戸学院、明治学院、大宮、駿河台の5校が撤退を決めたが、それ以外の低合格率校25校への補助金削減も決まっている。

 毎年法務省から公表される、法科大学院別合格者数を独自に集計している弁護士のブログもいくつかある。中でも秀逸なのは、社会人経験がある新司法試験組の弁護士のブログ「JAPAN LAW EXPRESS」である。法科大学院修了者は5年以内3回の受験が可能なので、修了年度別に集計した合格者の延べ人数を、受験者の延べ人数で割って、累積合格率を出しているのである。

 結果はというと、上位12校くらいまでは、12年度の合格率と概ね同じ順位なのだが、それ以下になると、12年度の合格率が20位以内なのに、累積合格率だと40位以下という不思議なケースが出てくる。個別に見てみると、受験者数が近年極端に少ない。 

 こういうケースを見てしまうと、合格率を上げるために合格水準に達しない学力の修了者には受験を踏みとどまらせる法科大学院がある、という噂話が信憑性を帯びてくる。

 逆に、累積合格率は比較的高いのに直近が低いというケースもある。新司法試験開始当初1~2年の合格率が高いので、直近が低くても累積だと高く出る。年々、優秀な学生が上位校に流れていった結果がこれなのだろう。

 500人時代に社会人から司法試験に挑戦し合格した知人の弁護士が、以前「司法試験受験はバクチみたいなもの。合格は宝くじに当たるようなもの」と言っていた。合格者が2000人に増えたことで、合格ではなく法律事務所に就職できることが宝くじに当たるようなものになったのかもしれない。

●当事者は意外なほど気丈

 だが、先輩弁護士や社会から気の毒がられている新司法試験合格者本人たちは、意外なほど気丈だ。「法科大学院修了者の25%しか司法試験に合格できないことも、司法修習を終了しても就職先は容易に見つからないであろうことも、新司法試験3年目の受験者あたりからは織り込み済み」だという。

BusinessJournal編集部

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