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『四〇〇万企業が哭いている』著者・石塚健司氏インタビュー

巨悪を撃つべき“身勝手”検察特捜部が、中小企業を潰した訳

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石塚 私も今回調べるまでは、これほど多くの中小企業が粉飾決算を行っているとは知りませんでした。上場企業の場合には、金融商品取引法などで禁じられ、それ自体が違法行為です。ただし非上場企業やほとんどの中小零細企業の場合には、実質的には誰も損害を被ることはないので粉飾決算自体は法に触れないんです。ただし、粉飾決算をし、銀行から融資を受けたり、取引先から支払いを受けると詐欺罪に問われる可能性があるわけです。本書に出てくる佐藤氏や朝倉氏もその部分では法に触れていましたし、私も今回の事件が冤罪だとは思っていません。

 ただし、粉飾決算自体は、古くからあるものです。特に、建設業界では広く蔓延っていると取材中に聞きました。というのも、建設業界は公共事業を主としていますから、赤字を計上し、いつどうなるかわからない会社には公共事業を国や自治体から受注することが難しいからです。

●検察の勘違い

ーー中小企業の7割超が粉飾決算をしている状況で、朝倉氏が捜査対象になったのは、やはり「震災復興保障制度」を利用したことを追及したほうが、世間受けが良いと特捜部が考えたからでしょうか?

石塚 特捜部はそもそもまったく別の事件(本書では種田<仮名>事件と書いている)を追っていました。この事件とは、種田という元銀行員の男が、銀行員時代に次々と融資契約先の企業の決算報告書を粉飾し、自らが勤めていた銀行から大口の融資を引き出していた。さらに銀行の顧客らと共同で設立したコンサルティング会社に、融資契約先からリベートを振り込ませていた事件です。この事件での被害総額は立件されただけで計15億円にものぼります。種田はほかにも粉飾絡みの怪しい融資を繰り返していました。

 その中に、佐藤氏や朝倉氏と一緒に逮捕された井原という男がいます。種田事件では立件されなかった人物です。また、実は佐藤氏はかつて井原の会社のコンサルタントを務めていました。特捜部は種田事件で立件できなかった井原という男への一種のリベンジとして、朝倉氏の件を捜査していた節があり、井原の背後にいる種田というコンサルタントと似た経歴を持った佐藤氏を、種田と同じような悪徳コンサルタントだと勘違いしていたというのがあります。

 また、井原という人物を捕まえただけでは、高々3000万円の詐欺事件にしかならない。特捜が扱う事件は1億円に届かないと寂しいと考える検察上層部もいます。そこで目をつけたのが、悪徳コンサルタントと見立てられた佐藤氏がコンサルタントを務めていた朝倉氏です。伊原も保障制度を利用していましたが、朝倉氏は震災復興保障制度を自分の手で手続きをし、利用していたため、特捜部としても朝倉氏のほうが世間に受けると考えたのではないでしょうか。そうして、朝倉氏の会社は捜査対象企業とされたわけです。ただ、朝倉氏は佐藤氏のお客さんの中でも、非常に真面目で、地道にやってこられた方なので、とても今回のような仕打ちを受けるべき必然性が見当たらない。これは特捜部の身勝手な判断ではないかと思いますね。

ーー穿った見方をすると、最近、外資系コンサルタントを筆頭に目立つ人が多い。そこが特捜部にとって目障りだったのかと。

石塚 あくまで推測ですが、コンサルタントという職業に対し、特捜部は先入観や偏見を持っていたのかもしれません。実際に中小企業の経営者の方に取材をすると、「会社の借金をゼロにして、一からやり直す方法を伝授します」といった中小企業向けコンサルタントからのダイレクトメールがよく来るようです。確かにそういう怪しいコンサルタントがはびこっているのも事実です。そうした中で佐藤氏もまた悪徳コンサルタントに違いないと特捜部は見立てわけです。

●消えない被害金に関する賠償責任

ーーその後、裁判が行われ、一審では佐藤氏、朝倉氏ともに2年4カ月の実刑判決が下りました。その後状況はどうですか?

石塚 佐藤氏は、今年9月に高等裁判所で二審判決が出ました。控訴棄却で、一審と同じ判決です。直ちに上告手続きをしていますが、もう土壇場まで来てしまいました。佐藤氏の弁護団は執行猶予を取る戦略をとっていたのですが……。

 一方の朝倉氏は、10月に控訴審の1回目が行われましたが即日結審しました。ただし、昨年11月7日に予定されていた判決言い渡しは延期され、高裁は弁論再開を決定しました。これには、支援者が集めた被害弁済のための460万円を供託したことが大きかったのではないかしょうか。というのも、私の本を読んでくれた元金融大臣の亀井静香氏さん、作家の高杉良さん、評論家の佐高信さんらが呼びかけ人となり「朝倉亨さんを支援する会」を結成し、支援者の方々が支援金を集めたり、嘆願書を集めてくれました。

BusinessJournal編集部

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