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『四〇〇万企業が哭いている』著者・石塚健司氏インタビュー

巨悪を撃つべき“身勝手”検察特捜部が、中小企業を潰した訳

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 朝倉氏は、逮捕されるまで銀行からの融資金を1度も欠かさずに返済してきました。また今後もそうしていくつもりでしたが、逮捕されたことで会社が倒産し、返済できなくなってしまいました。また、会社倒産後、彼は自己破産をしたので借金はなくなったのですが、詐欺事件の被害金に関する賠償責任は消えないのです。事件の被害金1億13000万円の賠償をしないと罪を償ったとは言えない。しかし、現在、朝倉氏は毎晩徹夜で日雇い労働をしていますが、日給1万2000円にしかならない。それではとても被害金額を弁済できる経済力はない。そこで、朝倉氏を支援する日本全国の中小企業経営者の方々が寄付をしてくれた。また郷原信郎弁護士が、自身のブログで今回の事件を取り上げてくれただけでなく、郷原さん自身が朝倉氏の弁護団の主任に就任されました。

【編註:当インタビュー後、朝倉氏の裁判で東京高裁は11月30日、一審の懲役2年4カ月の判決を破棄し、懲役2年を言い渡した。支援活動は執行猶予の判決を勝ち取ることを目標にしてきたが、執行猶予は付かず、刑期が4カ月短縮された結果となった。朝倉氏は上告の手続きを取った。詳しくは「朝倉亨さんを支援する会」にて】

●意味の「ない」裁判

ーー今回の裁判の意味とはなんだとお考えでしょうか?

石塚 「ない」と思います。この事件を法廷で裁いたこと自体、またこの事件を法廷にあげた検察の間違いだと考えています。佐藤氏と朝倉氏が有罪となり、しかも実刑判決を受けることで、助かる人や喜ぶ人もいなければ、社会にとってプラスになることもありません。

ーーこの事件を捜査した特捜部の大義や政治的な意図とはなんだったのしょうか?

石塚 今回の事件では、当時の特捜部特殊・直告第二班が捜査を担当しました。検察庁の組織改編により、佐藤氏の事件の捜査を開始した3カ月後に、その班は解体されることが決まっていました。これはあくまで私の想像ですが、特捜検事という仕事に憧れ、特捜部の「特殊・直告」という看板を最後に背負うことになった彼らは、なんとしてでも世の中の喝采を浴びるような捜査をしたいと意気込んでいたはずです。そういったタイミングで彼らのもとに転がり込んできたのが今回の事件で、それを自分たちの描いたシナリオに当てはめ、材料を組み立てて、捜査をし、法廷にまで出してしまった。

ーー検察がシナリオを描き、それに沿って捜査を進めるというやり方に対し、批判があるわけですが、今回の検察改革(特捜部の組織編成を一部改める、取り調べの可視化、特捜部の捜査に対し組織内で重層的にチェック)でそのようなことはなくなりますか?

石塚 なくならないと思いますね。大阪地検特捜部の証拠改ざん事件があり、その衝撃は検察庁にとってものすごく大きなものでした。そこで、検察庁は思い切った改革を始めたわけですが、その改革の中身をよく見ると、冤罪をなくすことや証拠の捏造といった捜査の仕方をチェックしようというのが主旨です。今回に関して言えば、冤罪や証拠が捏造されたような類の事件ではない。ただ、「特捜がする捜査としていかがなのものか」ということです。

 今回の事件のように、悪徳コンサルタントと見立てた当初のシナリオが捜査途中で崩れてしまったときに、特捜部はブレーキをかけるものではないのです。お題目として捜査途中で、当初描いたシナリオと違う事実が出てきた場合には、捜査から撤退してもいいと最高検察庁は改革の中で謳っています。しかし、東京地検特捜部の捜査というのは、古くから主任検事あるいは特捜副部長が捜査を指揮し、この人たちが集まった情報をもとに事件のシナリオを見立てる。そして、そのシナリオに沿った証拠を収集し、事件を組み立てるというのが特捜部のやり方です。そのシナリオを決める主任検事や特捜部副部長といった人たちの能力が低かったり、経験の浅かったりした場合、シナリオと事実が乖離したまま捜査を強引に進めるという方法は今後も変わらないと思います。

 さらに言えば、今回の検察改革により、特捜部の捜査は非常にやりづらくなった。取り調べの可視化の導入や捜査のチェック機能が多重に設けられたことで動きづらくなったわけです。また、裁判員制度の影響で、検察内の人員配置が変わり、特捜部に人員を割きづらくもなった。そうすると、佐藤氏や朝倉氏のような大きな組織が背後になく、少しでもひねれば有罪にできてしまうような弱い立場の人が特捜部の捜査対象になる可能性もあります。

ーー本書を読んでいると、裁判所が特捜部の意を汲みやすいのかなという印象を持ちました。

石塚 前著『特捜崩壊』でも書きましたし、決して一概には言えないのですが、多くの検察OBからは「君は検察の問題だというが、実は裁判所が問題なんだよ」と言われました。つまり、裁判所は良い言い方をすれば、特捜部の捜査に全幅の信頼をおいている。悪い言い方をすれば、検察がどれだけしくじっても裁判所は検察を擁護する。それが日本の裁判の実態と言ってもいいと思います。

『四〇〇万企業が哭いている ドキュメント検察が会社を踏み潰した日』


「中小企業が100万社潰れても関係ない」(特捜検事)

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