つまり、SNSで大量のユーザを集めると共に広告で儲け、さらに無料ゲームで取り入れたユーザを有料課金コンテンツや課金ガチャへ誘導する仕組みだ。SNSとソーシャルゲームを連携させた、実に巧みなビジネスモデルといえる。
●パッケージガチャはコンプガチャより射幸心煽る?
業界の自主規制に従い、コンプガチャを中止した後、グリーの新収益源になっているのが「パッケージガチャ」だ。数百種類のカードを1つの箱に入れ、1回300円程度の料金でカードを1枚ずつ引いてゆき、最上級レアカードの「SSレア」を引き当てる課金ガチャだ。
たとえば人気ソーシャルゲーム『探検ドリランド』には、ユーザ目当てのSSレアは箱の中のカード330枚中に1枚しか入っていない。つまり確率は330分の1なので、パチンコ並みといわれている。パチンコとの違いは、毎回330分の1の確率に賭けるゲームではないところだ。一度引いたカードは次回の課金ガチャから除外されるため、最悪でも330回引けばSSレアを引き当てられる。パチンコより一見良心的に映るが、そうでないところがポイントだ。
コンプガチャは毎回抽選でカードを引くため、パチンコのように青天井だった。だから途中であきらめるユーザもいたと言われる。ところが、パッケージガチャは「10万円前後注ぎ込めば、必ずSSレアを獲得できる」仕組み。それがわかっているので、途中であきらめるユーザが少ない。
30代の男性ユーザは「パッケージは必ずSSレアを獲得できるとの心理が働き、1回5〜10万円で済んでいたコンプ以上に金を注ぎ込んでしまう。パッケージはコンプより射幸性が強い」との感想を漏らしている。
しかも、ゲーム内ではSSレア複数枚を所持するのが定石となっている。SSレアは330枚中1枚しか入ってないので、2枚、3枚と獲得するためにはその分パッケージガチャに挑戦しなければならない。最初の挑戦で仮に5回目にSSレアを引き当てたとしても、2度目は330回目になることもある。パチンコ初体験で当たりを取った客ほどパチンコ依存症に陥りやすいと言われているが、パッケージガチャにもそれと似たような傾向がありそうだ。
●国民生活センターも警戒
国民生活センターは、コンプの中止で課金ガチャ被害の相談件数が一旦下火になったのも束の間、パッケージで「V字急増するのでは」と警戒を強めている模様だ。
こうして「健全化」を謳う業界自主規制の隙間を潜り、射幸心を煽るとの指摘のある事業を続けるグリーは、「ユーザを、ネギを背負った鴨としか見ていない」(業界関係者)との批判も多い。
現在、グリーが注力しているのが世界展開だ。
昨年9月、「東京ゲームショウ2012」で基調講演した田中良和社長は、新興国におけるスマホ普及急拡大に触れ、「ゲームを楽しみたくても楽しめない新興国の人たちに、ゲームを楽しめる環境をつくるのが当社の使命」と言い、「ゲームは成長産業であり、世界中の人たちにゲームは求められている」と強調した。また、メディアの取材に対しては、今後の目標について「5年後に世界中で10億人が利用するサービスをつくる」と語り、「日本で誕生した会社でも、全世界に通じるサービスをつくれることを自ら証明したい」との意気込みを語っている。
しかし、あるゲームアナリストは「射幸心の高い課金ガチャを世界中に広められることこそ世界の人たちの迷惑。また、日本のゲーム業界に対する信用を損ねかねない」と懸念を語る。
(文=福井晋/フリーライター)