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アルジェリア人質事件で露呈、欧米や民間軍事会社頼みのテロ対策の限界

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 資源の乏しい日本が石油や天然ガスなど、経済活動に不可欠な資源・エネルギ-を確保するためには、世界中のリスクの高い紛争地域に今後も進出せざるを得ない。日揮が、1990年代に起こった10年間のアルジェリアの内戦中にも撤退することなく、プラント建設を通じて同国の経済発展に貢献してきたことは間違いない。それが評価されて、現地のソナトラック社との信頼関係の構築につながった。

 しかし、それが現地住民の貧困や失業の解決、生活の豊かさにつながらない限り、欧米の外国資本・企業と同じように、日本企業も「外国人は敵だ」と見るテロリストの反発や攻撃を受けやすい。

 日揮は1960年代よりアルジェリアの幾つものプロジェクト事業に携わってきた長年の経験から、現地事情や内部人脈にも明るかったはずであるが、それでもテロの襲撃を防ぐことはできなかった。

●欧米では、政府や軍が民間企業の後押し

 欧米企業がリスクの高い紛争地域に海外進出する場合は、政府、軍、民間軍事会社が一体となって民間企業の進出を後押しし、軍主導でテロ対策がこれまで進められてきた傾向がある。特に、米国の場合は湾岸戦争以後、中東やアフリカでのプラント事業展開で、その傾向が顕著であった。ブラックウォ-タ-社、トリプルキャノピ-社、ダイン・コ-プ・インタ-ナショナル社などの民間会社はリスク・コンサルタント会社というより、いまや完全に軍の下請け会社となっている。

 アルジェリア人質事件では、軍や民間軍事会社に厳重に守られながらもテロ被害を防げなかった。そのことを考えると、欧米流の軍主導の力でテロを抑え込むテロ対策には限界がある。それよりも、現地の地方政府や部族人脈、NPOと協力して、テロの温床となっている貧困、失業、政治の腐敗などをいかになくすかが重要である。

 進出企業にできることは、現地でのプロジェクト事業を通じて、雇用を増やし失業を減らすのに貢献することである。それがテロに走る若者を救うことにつながり、軍主導のテロ対策よりも、より有効だろう。

 イスラム武装勢力やテロリストたちは、社会の貧困や腐敗を政治的にうまく取り込んで、テロ組織の伸長に利用してきた。日本が今後もこの地域で資源開発やプラント事業を続けるつもりなら、政府と民間が協力して、そうした事業に腹を据えて取り組む必要があるのではないか。
(文=野口恒/ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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