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吉田潮「だからテレビはやめられない」(3月13日)

日本アカデミー賞が面白い謎 ハイレベルすぎるエリカ様いじめ、広末涼子のワイプ芸…

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「日本アカデミー賞 公式サイト」より
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、視るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 日本映画が息を吹き返している。

 日本アカデミー賞なんて、ちょっと前までは誰も注目していなかったような気がする。例えて言うなら「ベストジーニスト賞」とか「ベストドレッサー賞」みたいな扱い。受賞したから素晴らしい、とは限らない。田舎の洋品店すら真に受けない。そんな微妙な賞。

 が、ここ数年は日本映画が盛り上がって、話題になっている。たぶん、テレビが寡黙なメディアになったから。寡黙、つまりは自主規制でがんじがらめになり、自由が失われてしまったという意味。一方、映画はR指定などの問題もあるが、萎縮傾向にあるテレビに比べれば、断然自由で面白い。個人的には、園子温や若松孝二あたりが日本映画界をぐっと押し上げたと思っている。伊丹十三亡き後、日本映画は沈みっぱなしだったからなぁ。

 そのせいか、テレビで放映する「日本アカデミー賞授賞式」(日本テレビ系/3月8日放送)も楽しめるようになった。司会が関口宏から関根勤に代わり、古臭い権威のようなものが払拭された感もある。緊張で萎縮してちっとも面白くない関根勤も珍しいので、必見だ。選考される作品や俳優には、ある種の教育的見地と利害関係が匂うものの、納得のいくノミネートでもある。無理やりぶっこまれて思いっきり場違いなアイドルとか、故人をたたえて褒めちぎる上っ面の年功序列式はちょっと鼻につくけれど、まあ年に一度の祭典だしね。

 受賞者を予想するのも楽しみだが、結果は実はどうでもいい。見逃しちゃならないのは、会場で登壇した俳優たちの緊張と困惑の表情、趣味の悪いドレスなどだ。さらに、聞き逃しちゃならないのは、率直なコメントにちりばめられた本音である。

●寺島しのぶに何があったのか……

 沢尻エリカに対する寺島しのぶのコメントは、本音なのか愛嬌なのか判断しがたいが、チクチク刺しまくり。「(沢尻は)役なのかなんなのか、ついていくのが大変でした」とひと刺し。また、沢尻が現場に持ち込んだぬいぐるみ・コスモに対して、「(現場では)コスモの世話をしていました」と下手に出る寺島。ぐっと抑えた大人の女のコメントが秀逸だった。

 主演女優賞ノミネートの吉永小百合が「私は樹木希林さんのように演技力がないので……」などと謙遜のコメントを発していたが、まるで昔のアイドルである。謙遜するのが美学と教え込まれた悲しき世代の象徴だなと痛感した。というか、樹木自身はそんな吉永の謙遜すら聞いちゃいなかった。登壇中にもかかわらず、司会席に座っちゃっていたのだ。自由というべきか、それとも体調が悪かっただけなのか。

 樹木の受賞後のコメントも、「振込(賞金)だけいただいて、あとは皆様・エリカ様に」とアカデミー賞と沢尻への皮肉が一服盛られていた。最優秀主演女優賞をとると、来年の司会を任されるのだが、そんな慣習も伝統も一蹴しそうな気がする。樹木の司会は、ちょっと観てみたいけれど。

 もちろん授賞式は生中継ではないので、会場ではもっと面白いやりとりがあったのかもしれない。それを規制しちゃうのがテレビだから仕方がない。編集された授賞式を2時間、じっと画面を観ていて気付いたこと。それはやたらと堺雅人と広末涼子が映ったことだ。カメラが抜きやすい位置だったのか、受賞に関係ないからリラックスしきっていたのか。カメラで不意に抜いても常に笑顔でリアクション。まるでバラエティ番組におけるワイプ芸人。どうでもいい宴席で満面の笑みをキープする秘訣を、ぜひ教えてほしいものだ。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

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●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。