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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第23回

大手新聞社長、不倫相手を入社させた!? なぜ同棲にいそしみ何もせず出世できた?

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●思惑違い

 ロンドンから帰国した村尾は、市谷仲之町の賃貸マンションを借りた。都営地下鉄新宿線の曙橋駅から徒歩5分ほどのところだった。家賃が安いうえ、女としけこむのに目立たない場所で、東京駅周辺にタクシーで15分圏内という条件にもぴったりだった。

 思惑違いだったのは、世論調査室次長というポストがタイムカード職場と同じで、記者時代のように自由が利かないことだった。午前10時から午後6時頃まで、本社に拘束されるので、新しい女と関係を築くにしても、社内の女しかいなかった。ドンファンを自任する村尾にとって、社内の女をゲットするのは美学に反したし、リスクも大きかった。結局、東京に戻って3カ月たっても、新しい女は見つからなかった。

 そんな時、由利菜の正社員採用が決まった。富島に頼んだという痕跡が大事なだけだったが、由利菜と同棲しながら時々社内の若い女を摘み食いすればいい、と勝手に夢想した。

 「由利菜が入社した時、確か彼女はまだ離婚していなかったな。それなのに、あいつ、ロンドンから俺のところに荷物を送りつけてきた。最初から強引だったな」

 由利菜が入社して通産省記者クラブに配属になったのは93年10月で、村尾の帰国から7カ月後だった。当時、由利菜は大学時代の先輩と離婚していなかった。その先輩は1年半前に東京勤務になっており、日亜記者として東京で仕事をする以上、同居するのが普通だ。だが、妹の賃貸マンションに一緒に暮らすことにして、その早稲田の住所を自宅として会社へ報告した。

 由利菜は妹のマンションにも同居したわけではなかった。自分の電話をそこに設置しただけで、帰ることはほとんどなかった。実際は村尾の借りた市谷仲之町のマンションで同棲したのである。

 実は由利菜が妹のマンションを住所に登録したのは、市谷仲之町が通り道になったからだ。夜の帰宅の際、新聞記者はハイヤーやタクシーを使うことが多いが、いつも自分の自宅とまったく違うところに帰るのはまずい。しかし、早稲田へ向かう通り道なら、途中で理由をつけて降りてしまえば、疑念を持たれる心配はなかった。

 「確か、彼女が離婚したのは94年春だった。それから1年余りたった頃、困ったことが起きたんだ」

●予期せず広がった噂

 由利菜は帰国すると、すぐに夫との間で離婚の話し合いに入り、半年後の94年春、協議離婚が成立した。晴れて、村尾との同棲生活は不倫でなくなったが、それから1年後、新たな問題が起きた。通産省記者クラブに所属したのは1年で、94年秋から日銀記者クラブに所属、マーケット取材を担当することになったのが原因だった。

 「『芳岡(由利菜)記者は自宅に住んでいないんじゃないか』という噂が経済部で流れていると聞いたんだ。あのときは冷や汗をかいた」

 通産省クラブ詰めの時は、女性記者に遠慮したのか、キャップが自宅に電話してくることはなく、ポケベルを鳴らすくらいだった。噂が出たのは日銀クラブでマーケット取材の担当になってからだった。欧米市場が開くのが日本時間の夜で、キャップやサブキャップが深夜や早朝に由利菜の自宅に電話で情報を伝えることが多くなった。

 しかし、自宅に電話しても、いつも留守電になっていた。由利菜に情報を伝えるにはポケベルで呼び出す以外に方法がなかった。しばらくすると、日銀記者クラブの記者の間で「芳岡記者は、夜と朝はどこにいるかわからない」という噂が広まり出した。

 「彼女に自分のマンションを買わせたのが正解だったな。噂は自然に消えていった」

 同棲がばれるのを恐れた村尾が、自分の借りている市谷仲之町のマンションの近所にマンションを借りるか、買うか、するように勧めた。由利菜のほうも、結婚しないで同棲生活を続けるなら、自分のマンションを持っているほうがいい、と思ったのだろう。村尾に頭金の半分を出させ、隣の市ヶ谷左内坂の中古マンションを買ったのである。95年春のことだ。

BusinessJournal編集部

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