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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」第5回

ある外資系コンサル経営者が、部下に与えた“奇妙な”ミッションとは?

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筆者・鈴木貴博氏
 数多くの大企業のコンサルティングを手掛ける一方、どんなに複雑で難しいビジネス課題も、メカニズムを分解し単純化して説明できる特殊能力を生かして、「日経トレンディネット」の連載など、幅広いメディアで活動する鈴木貴博氏。そんな鈴木氏が、話題のニュースやトレンドなどの“仕組み”を、わかりやすく解説します。

 私が20代の終わりごろに実際にあった話。当時勤務していたコンサルティングファームのパートナー(共同経営者)の個室に呼び出され、奇妙なミッション(任務)を命じられることになった。

「ある有名企業の経営者への贈り物を選んでくれ」というのが、そのミッション。

「ただし」と、そのパートナーが私に命じたことは、

「値段は10万円以上だけれども、眼力がない人には2万円以下にしか見えないものを選んでもらいたい。2年ぐらい使っているうちに、その良さがしみじみわかるようなものを選んでくれ」

と言うのである。

 話を聞きながら、私にもそのパートナーの意図がだんだんと読めてきた。彼が贈り物を届けようとしている相手は、一代で自分の会社を大企業へと育て上げたオーナー経営者。そして当時、そのパートナーとはウマが合うというか、仲のよい財界人のひとりであった。

 会社を上場させ、数百億円の個人資産を持つその経営者に対して、私の上司のパートナーがふとした場面で苦言を呈したことがある。

 お金の使い方が下手だというのだ。

 その経営者は「バリュー・フォー・マネー」が口癖で、部下に対して「対価に見合った価格を支払うように」と厳しく指導していた。ところがパートナーである彼の目からは、結果として部下たちは安物買いの投資に走って、会社に損をもたらしているというのだ。

 本当にいい仕事をしている製品やサービスを選び、それに高いバリューがあるのであれば、たとえ金額が高くても、それに見合った対価を投資できるような企業に育ってほしい。その教訓となるような贈り物を贈りたい。あとはお前が考えておけ。とまあ、彼はそう考えて、私に対して奇妙な任務を命じたのである。

●贈り物で部下を評価?

 実はこのミッションには、もうひとつ裏がある。証拠はないが、絶対あると確信している。それは私が何を選ぶかで、私のことも評価しようとしているはずなのだ。

 これまでも何度か、酒の席でパートナーである彼が、「誰々にこんなことを頼んだら、こんな結果になった」と言っては、「あいつはそういうところがまだだめだ」と断じてみたり、逆に「あいつは実はすごいやつだぞ」と周囲に語る場面をよく目にしている。

 つまりこの条件で、私が一体何をどこでどう買ってくるのかについても、試そうとしているのである。

 さらに裏読みをすれば、彼の私に対する評価も「安物買いの欠点がある」というものだったのではないか。

 当時も今も、私は格安セレブを標ぼうしていて、それほどお金をかけずに素晴らしい商品やサービスを手に入れることを得意としている。少なくとも私はそう思っている。ところがコンサルティングファームの東京事務所の共同経営者として、真のセレブ生活を送っている彼から見れば、20代の私が手を出すような贅沢は、レベルが低いと内心苦々しく思っていたはずだ。

 まあ実際、そういう失敗を彼の前でしたことが一度あるので、身から出た錆ともいえるが、きっとそういう意図が彼にはあったはずだ。

 というわけでこの奇妙なミッションは、私にとっても少々本腰を入れて取り組まなければ、足元をすくわれる任務でもあったのだ。

●望ましい展開

 そのような背景から、私はこの任務に結構真剣に取り組んだ。