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“掘り出し物”は旧制高専出身から探せ!?

大卒採用増に隠れた、憂うべき大学の実態…日本電産・永守社長の“採用基準”とは?

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 案の定、こんな調査データがある。文部科学省の「学校基本調査」によれば、2012年3月に大学を卒業した人のうち就職したのは63.9%。就職も進学もしなかった人たちは15.4%を占める。

 このような話をすると、一流企業の人事、一流大学の先生から反論される。「うちには、そんな人はいませんがね。今の若者も捨てたもんじゃないですよ」と。そう言われたとき、私はいつも「おっしゃるとおり」と応えている。

 いつの世もエリート層は存在するものである。そのような層とだけ接していれば、昔と変わっていないと思うのも仕方ない。しかし、日本の「中間層」が音を立てるように崩れてきている現実を見落としてはならないのではないか。良質な職場が日本の経済成長を支えてきた。言い換えれば、その中核を成す中間層がしっかりとしていたからこそ、日本はここまで来たのだ。学校時代、偏差値では優秀と言われなかった人が職場で大きな戦力になってこそ、日本は持続的成長を遂げられるのである。

●なぜ高専の就職率は高いのか?

 1990年代以降、「大卒は使い物にならない」「大学はあてにしていない」という実業界の声を反映して、多くの大学が「実学」に力を入れるようになった。ところが、英語やITをかじってみたところ即戦力にはならない。では頭でっかちかといえば、あまりにもものを知らない。今や、「新聞さえ読まない大学生」が当たり前になり、1面トップに出ているニュースさえ知らない。

 このような若い人が企業でも増えてきたせいか、「実学よりも教養を重視すべきだ」と強調する財界人の声が聞かれる。そこで、一部の大学では「教養重視」を売りにするようになってきた。そのような大学のカリキュラムを見ると、大学の「教養ある先生」が「大学らしい教養」を並べたエリート発想の内容になっている。「読み書きそろばん」もできない、ましてや、自分の人生計画、キャリアプランさえ立てられない大学生に、このレベルの教養を教えても馬の耳に念仏である。

 将来のエグゼクティブ候補も含めてしっかりとした中間層を育成するためにも、大学が自己満足している実学でも教養でもなく、「仕事魂」「実践知」を教えるべきではないか。私はこれをビジネス・リベラルアーツ(仕事に役立つ教養)と呼んでいる。

 近年、高等専門学校(高専)が産業界から高い評価を受けている。求人倍率は15.3倍、就職率は99%という高い実績を誇る。一橋大学、東京工業大学、そして、筆者に学位(博士/経営学)を授与した神戸大学も、ルーツをたどれば(旧制の)高専だった。これらの学校では、常に実務の進化とともに歩む研究・教育が行われていた。相変わらず職に就かない、職を見つけることができない学生が減らないとしたら、「勘違い教養」を教える大学の責任は大きい。公害を垂れ流していると言っても過言ではない。今こそ、親も子供ももっとシンプルに「食い扶持とは何か」を深く考えてみるべきではないか。その機軸で熟考、洞察することで、今の大学生にとって本当に必要な教養とは何かが見えてくる。

 企業がビジネス・リベラルアーツに裏付けられた「青雲の志」を持つ大学生を目利きして採用すれば、日本経済は新たな成長期を迎えるかもしれない。企業の経営者、人事はよく目を凝らして採用しないと、とんでもない不良債権を掴むことになるから、くれぐれもご注意を。
(文=長田貴仁/ジャーナリスト 経営学者)

BusinessJournal編集部

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