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同人誌は著作権侵害? 回避は簡単なのになぜ事件化&泥沼化するのか?

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 この「手続」をサボっているから、問題となってしまうのです。

●ところが、解決の「手続」はまったく簡単ではない

 しかし、こんな「交渉の手続」が簡単にできるのであれば、そもそも、「同人誌’」をめぐる裁判など、我が国ではひとつも起こっていないはずです。

 第一に、著作者または著作権者(マンガ家)にアクセスする方法がわからない。マンガの巻末に住所や電話番号でも記載されていればよいのですが、そんなことは滅多にありませんし、すべてのマンガ家が、ツイッターやメールを使っているわけでもないでしょう。

 加えて、「成人向け同人誌’」の販売を、著作者が許諾するだろうか、という問題があります。自分が精魂注いでつくり上げたキャラクターや世界観を、そんなふうに使われることを「ああ、いいよ」と許してくれる著作者がいたら、私は心底「すごい度量だ」と思います。

●「同人誌’」の著作権侵害が事件化しにくい理由

 著作者、または著作権者が権利行使を決意すれば、「同人誌’」を叩き潰すことなどは造作もなく、差止の仮処分(確定判決の前に、裁判所が決定する暫定的処置)などは、即時に認められるように思います。

 では、著作者らは、なぜそのような権利行使を実行に移さないのか?

 私は、2つ理由があると考えています。

【理由その1】
「同人誌’」の存在が、必ずしも不利益といえない場合があるため。「同人誌’」が、著作物の宣伝広告の効果を発揮してくれる場合があるからです。また、そのような「寛容な態度」でマンガに好感を持ってもらえるという巧妙な計算もあるでしょう。

【理由その2】
「同人誌’」の創作者を告発するコストが高いため。裁判手続は金も時間もかかります。損害賠償の裁判となれば、著作権者の損害額を算定しなければならないのですが、これが恐ろしく難しい。「同人誌’」の販売の規模によっては、損害額2万円、裁判費用200万円などという話はザラです(略式手続<刑事訴訟法470条>で有罪確定した「ポケモン同人誌事件」は例外中の例外です)。

 なお、ツイッターにマンガの主人公の顔を使っている人は、許諾を得ていない限りすべて複製権の侵害被疑者ですが、では、その被害額はいくら? 提訴する相手を特定できるか? となることを考えれば、訴訟なんて手続は、とてもコストに見合わなくてやっていられないのです。つまり、コストの観点から、著作者または著作権者は、権利行使を「留保」していることになります。

 このほか、多くの場合は、差止の警告をされれば、「同人誌’」の製作者は直ちに販売の中止に応じて、事件になりにくいという性質もあります。また、「同人誌’」を含め、同人誌ビジネスは基本的に儲からないので、儲からないところへ損害賠償を請求してもメリットがないという理由もあります。

●著作権事件が泥沼化する理由

 確かに、著作権侵害は事件化(裁判等)しにくいですが、ひとたび事件化した場合、和解に至るケースのほうが少ないように思います。

 私は、これまでの「同人誌’」を含む著作権侵害訴訟の判例を、一通り眺めてきましたが、訴訟に至るか否かを決定づける要因は、「金(カネ)」より「怒り」の要素が大きいように思えます。人間はいったん「怒り」のモードに入ったら、「金」の問題など吹き飛びます。

 私は、以前、「初音ミク」の技術編コラムで、「このキャラクターを創成する立場であれば、間違いなくキャラクターに『愛』が込められていくのは当然のことです」と記載したことがありますが、これを逆方向から述べてみれば、「このキャラクターを『汚(けが)す』者であれば、間違いなくその者に『殺意』が込められていくのは当然のことです」となるのは自然な帰結です。なぜなら、自分の著作物は(それが二次的な著作物であったとしても)、自分の大切な「宝物」、自分が育てた「子供」のようなものだからです。

BusinessJournal編集部

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