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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第30回

不倫スキャンダルは出世の必須条件? 大手新聞、堕落の始まりは10年前

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 今では、スクープを狙って日夜駆けずり回る記者は天然記念物的な存在になりつつある。堕落が著しい大都と日亜では事実上、絶滅してしまったと言っても過言ではないだろう。跋扈しているのはリーク欲しさに走り回る記者と、抜かれた時の対応に腐心する記者だ。

 とりわけ、経済記者の世界はリークが幅を利かせている。民間企業にしても経済官庁にしても、自分たちの宣伝に使おうという下心が常にあるからだ。しかし、リークの対象から外れることもある。つまり、抜かれることもあるわけで、その時の対応も重要なのだ。

 松野に「抜かれた時の対応が得意」と指摘された北川は隣の席で頷くだけだった。だが、対面の日亜側の2人は怪訝な表情を浮かべ、松野の二の句を待つ風情だった。

「つまりな。新聞業界はスクープが命という建前だろ。だから、昔は、抜かれるとマイナス評価になるのが当たり前だった。北川の場合は、マイナスになるはずの評価をプラスにしてしまう、特殊な能力があったんだな」

「申し訳ありませんが、どうもよくわかりません。社長、わかりますか、どうですか?」

 小山が首を傾げながら、隣の村尾を見た。

「多分、北川君は仕事をしているふりをするのがうまいんじゃないか。それも神妙な顔をしてな。デスクの大半は特ダネとは無縁の連中がほとんどだから、特ダネのとれる記者には屈折した劣等感があるが、抜かれる奴には仲間意識みたいなものもあるだろう」

「やっぱり、年の功だな。村尾君の解説が大体当たっている。うちのように、部数がトップだと、経済部の取材は楽なんだ。取材相手に下心があるから、向こうからリークがある。特ダネはそれで十分でな。だから、リークの対象から外れた時の対応が大事なんだ」

「僕にはまだよくわかりません。鈍くて申し訳ありません。教えていただけませんか」

 怪訝な表情を残したままの小山が上目遣いに聞いた。

「やっぱり小山はKYじゃないな。つまり、平身低頭を貫き、抜かれた言い訳はしない。どんな取材をしてもいいが、デスクに小まめに報告を上げ、早朝から深夜まで駆けずり回っている姿を見せるんだ。それで、追いかけ記事はデスクの指示通りに書く。それがコツなんだな」

 松野があきれ顔で敷衍すると、小山はあっけらからんとして言った。

「なんだ、そんなことですか。それなら、僕だって、結構、得意ですよ」

「ばかもん! 村尾君、君は小山にどんな教育しているんだ。こいつ、大丈夫なのか、え?」

 小山のあまりにノー天気な受け答えに、松野は激怒した。村尾は内心「松野も小山といい勝負」と思ったが、苦笑いしながら、松野の怒りの火の粉を振り払うように取りなした。

「先輩、まあいいじゃないですか。小山は僕のいうKYじゃないところもありますが、そこがいいところでもあります。そろそろ、本題を話してくださいよ。お願いします」

 松野は、不機嫌そうに熱燗をあおっていたが、しばらくすると、冷静さを取り戻した。

「わかった。村尾君に免じて、小山君の無礼は水に流す」

 松野は含み笑いを浮かべながら、小山を睨み付けた。

BusinessJournal編集部

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