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日本取引所、大幅人事で加速する次期社長ポスト争いの舞台裏 奪還狙う財務省の思惑

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東京証券取引所ビル
「Wikipedia」より/Fg2)
 東京証券取引所と大阪証券取引所が合併して今年1月にスタートした日本取引所グループ(JPX)が、6月の株主総会で正式に決める大幅な人事の見直し案を発表した。取締役兼グループCEO(最高経営責任者)の斉藤惇氏が留任する一方で、取締役会議長というポストを新設、東京証券取引所の自主規制機関の理事長を務めてきた林正和・元財務事務次官を横滑りさせた。加えて、持ち株会社傘下の東京証券取引所社長に大和証券グループ本社の清田瞭名誉会長、大阪証券取引所社長には野村証券元専務で現顧問の山道裕己を迎えることも決めた。

「これで斉藤氏の後任は清田氏に決まりだ」と斉藤氏に近い人物は解説する。もともと斉藤氏の意中の人物は清田氏だったが、2つの障害があった。

 1つは業界の盟主である野村証券という壁。清田氏は二番手の大和の出身で、いきなり清田氏を据えれば野村のメンツが潰れる。斉藤氏は野村証券の出身だが、野村を退社した後、保険系の運用会社や産業再生機構などの社長を務め、苦労してきた。野村には世話になっていないという思いが強く、東証社長になった後も野村との関係はギクシャクしていた。

 もう1つの壁が財務省。東証のトップは長く財務省(旧大蔵省)大物OBの指定席だっただけに、財務省は今でもトップの座を奪還しようと狙っている。斉藤氏はすでに73歳。社長就任から5年がたっており、そろそろ引退のタイミングだった。それだけに、後任には財務次官OBを送り込もうと水面下で画策していたのだ。

 だが、斉藤氏はこの2つの壁をクリアしてみせた。東証と大証に大和出身者と野村出身者を並列させることで、野村のメンツを保ったのである。わざわざ大手メディアに、年齢と最終ポストを考慮して清田氏を東証社長にしたと書かせる手回しのよさだった。なぜ野村が東証より格下の大証の社長ポストなのだ、という声を封じたわけだ。

 財務省については「取締役会議長」という新設ポストを用意した。斉藤氏からすれば、会長ではなく取締役会の司会をする議長にすぎない、ということだろうが、肩書的にはトップであり財務省のメンツも立つ。

 そのうえで斉藤氏自らは留任したのである。つまり、取締役会ではグループCEOである斉藤氏が議論をリードしていくということなのだろう。斉藤氏としては、自らが権力を維持している間に、清田氏にバトンを渡す腹づもりに違いない。

 問題は、野村はともかく、財務省がそれで納まるかどうかだ。斉藤氏を追い落とし、日本取引所グループの人事権を握れば、傘下に役員ポストがたくさんあるだけに、天下りポストに苦労しなくなる。斉藤氏を追い落とすか、大和を締め上げて清田氏に野望を捨てさせるか。早晩、駆け引きが加熱する可能性が高い。
(文=編集部)