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TOBめぐる西武HDとサーベラス攻防、カギ握るみずほFG佐藤社長…和解の可能性も

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西武
西武HD傘下のプリンスホテルが運営する「ザ・プリンス・パークタワー東京」(『Wikipedia』より)
「西武ホールディングス(HD)については、TOBがかかっているので私どもの立場は複雑。株主であり、メインバンクであり、みずほ証券が(IPO=株式公開の)FA(フィナンシャル・アドバイザー)になっている。従ってほとんど語ることがない。今後、TOBを踏まえながら西武HDの経営陣とサーベラスとが建設的な話し合いのテーブルに着いて、特に西武HDの企業価値の向上に向かってやっていただくのが望ましいこと。そのような動きが若干見えているとも聞いているが、今後、株主総会に至るまでのプロセスでどのような建設的な意見が交わされるかを注意深く見守っていきたい」

 5月15日の決算会見時に、記者から西武HD・サーベラス問題について聞かれ、みずほコーポレート銀行頭取も兼務するみずほフィナンシャルグループ(FG)の佐藤康博社長は、こう答えた。

 佐藤社長が指摘するように、この問題に関するみずほFGの立場は微妙だ。みずほFGは、西武HDの大株主であり、みずほコーポレート銀行は西武HDのメインバンクでもある。しかも傘下のみずほ証券は西武HDが準備中の再上場のFAについている。そればかりではない、西武HD現社長の後藤高志氏はみずほコーポレート銀行副頭取から、西武HD再建のために派遣された旧第一勧業銀行のエースであり、西武の資金繰りを支えているのはみずほコーポレート銀行にほかならない。

 この脈絡からすれば、みずほFGは本来、西武HD側についてしかるべきなのだが、実際はねじれが生じている。「そもそも西武HD再建のスキームの一環として、資本(1100億円)の出し手としてサーベラスを連れてきたのはみずほコーポレート銀行だった」(みずほ関係者)ためだ。佐藤社長が指摘する「立場が複雑」の根っこには、サーべラスに出資を依頼しながら、上場が当初の計画通りに進まないことに対するみずほFGの負い目が影を落としている。

●仲介役を果たせる唯一の存在

 だが、この佐藤社長の立場は、裏を返せば、対立が深まる西武HDとサーベラスを繋ぐ接点にあり、両社の仲介役を果たせる唯一の存在であることも意味している。佐藤社長が会見で漏らした「そのような動きが若干見えてきていると聞いている」とは、両社の話し合いの場にみずほの佐藤社長が介在していることを暗示している。

 実際、両社の対立が、サーベラスによる西武HD株のTOB(公開買い付け)にまで泥沼化した最中、サーベラスのアジア部門を統括するシニアマネージングディレクターのルイス・フォスター氏が、双方の弁護士を交えて佐藤社長と会談している。対立を解消するための条件面が話されたようだが、折り合うことはなかった。

 だが、その後も「サーべラス幹部と佐藤社長は携帯電話で連絡し合う関係にある」(みずほ関係者)という。一方、「佐藤社長と西武HDの後藤社長は非常に仲が良く、関係は良好」(同)という。両社の対立を解きほぐす鍵を握っているのは佐藤社長と言っていい。

 サーベラスによる西武HD株のTOBは、2回の期限延長にもかかわらず、目標の発行済み株式の44%に届かず、35.48%と3%強の応募にとどまった。

 さらに、西武グループの元総帥で創業家出身の堤義明氏が、6月25日に開催される西武HDの株主総会で、同社提案を全面的に支持する意向を明らかにしている。

 サーべラスが株主総会を控え、プロキシー・ファイト(委任状合戦)に打って出る可能性は残されているが、サーベラスが求める経営陣の一新などの提案は退けられる公算が高い。

 サーベラス・グローバル・インベストメンツ会長のダン・クエール氏(元米副大統領)は、西武HDとの対立に関し、同社経営陣と「条件を付けない、弁護士を交えない直接対話」を求めている。西武HDの企業価値向上という点で両社は一致しており、急転直下、両社が和解する可能性もある。

「株主総会に至るまでのプロセスでどのような建設的な意見が交わされるか注意深く見守っていきたい」とする、佐藤社長の動向から目が話せない。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)