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金融活用で児童養護施設支援?専従職員ゼロで“子どもの貧困”に取り組むNPO法人に迫る

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–世間一般的には、「日本は豊か」というイメージを持つ日本人も多いと思いますが、「子ども貧困」とは具体的にどのような状況を指しているのでしょうか?

 まず、OECD(経済協力開発機構)が2000年に発表した日本の相対的貧困率(貧困率<=等価可処分所得の中央値の半分>に満たない世帯員の割合)は、先進国内(平均11.1%)では米国に次いで2位(15.7%)でした。その後、09年に厚生労働省が公表した日本の貧困率は16%で、特に子どもの貧困率増加にもつながっています。
 
 また、私たちが支援している児童養護施設は、日本全国に約580施設あり、1〜18歳までの約3万人の子どもたちが暮らしています。そのうち、実の両親がいるのは全体の23%、実の母親のみは35%、実の父親のみは16%となっています。特に、母子家庭の貧困率は66%と突出しており、児童養護施設に入所する子どもの多くが経済的に厳しい環境で生活してきたことがわかります。

 児童養護施設には、親自身の病気や経済的理由、そして親からの虐待など、さまざまな家庭の事情により家族と暮らすことが困難になった子どもたちが暮らしていますが、彼らのうち実に53%が虐待を受け、心に深い傷を負っています。

–そうした子どもたちの実態について、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか?

 その子どもたちの実態を見ると、子どもたちの5人に1人は高校を中退しており、大学に進学する子どもは10%未満です。しかも、せっかく進学しても中退する場合もあるので、大学卒業率はもっと低い。また、子どもたちの正規雇用率を見ると、こちらも一般の人よりもかなり低くなっています。

 私は、このような状況は「愛情に接する機会が少ないことに起因しているのではないか」と考えています。つまり、子どもにとって、未来を勝ち取るために一番大切な能力、あるいは才能と言ってもいいかもしれませんが、「人から愛される能力」と「努力する能力」の2つに、なんらかの問題を抱えているのではないかと思っています。

 まず、「人から愛される能力」というのは、子どもの一番の資産である「かわいがられる」ことであり、この能力があってはじめて子どもは他の人からサポートを受けられるわけですね。この能力は、親からかわいがられる経験、親密な親子関係によって育まれるのではないか、と考えています。また、「努力する能力」についても、幼少期の親子関係によるところが大きいのではないかと考えます。「自分の人生には意味があり、自分の人生は素晴らしいものだ」と思えなければ、努力することに意味を見いだすのは難しいからです。

 施設で生活している子どもたちは、原則18歳を過ぎると退所しなければならず、経済的後ろ盾のない暮らしを強いられることになります。虐待された子どもの多くは、頑張って努力しても何もいいことはないという考え方を持ってしまっていることが多いので、「奨学金を提供する」という経済的なサポートだけで解決できるほど簡単な問題ではなく、子どもが大人との関係を通じて、自分の心を育てていくという過程をつくり直さなければいけないのではないかと考えています。

–具体的な対処法を教えてください。

 施設には、大きく変えなければいけないことが2つあると思います。1つは、多くの施設がとても大規模で運営されていること。子どもたちは大きな建物の中に大人数で生活していますが、普通の家庭では違います。子どもたちにとっては、小規模で一般の家庭に近い環境のほうが、大人との親密な関係を築くことができ、心を育てていくことができると考えられています。しかし、マンションの大きめの部屋、あるいは一軒家を借りて、施設の職員が親代わりになり、子どもが6人くらいいる家族のような形態で暮らすことができる子どもの数は、全国の施設にいる子どもたちの10%にも満たないのです。このような形態で暮らせる子どもの数を、増やしていかなければなりません。

 もう1つは職員の数です。一般的に児童養護施設では、大人1人が10人の子どもの面倒を見ていると言われていますが、これでは忙しすぎて、親が子どもに普通に接するような愛情関係を築き上げることはまず無理です。

 これらの問題を解決するための方法として私たちが提案しているのが、10年11月にスタートした寄付プログラム「Chance Maker」です。これは、月1,000円から始められる継続型の寄付で、国の補助金の制度などと合わせることで、例えば、毎月1000円ずつ継続して寄付をしてくれる人が500人程度集まれば、1つの大規模施設を小規模に建て替えられます。このような支援をいただくことにより、子どもたちが家庭に近い環境で生活することができるようになります。

●金融の知識を活用する

–わずか500人が月々1000円の寄付をするだけで、なぜ施設を建て替えられるのですか?

BusinessJournal編集部

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