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アベノミクス、株価上昇過去最長でも批判多いワケ…戸惑うメディアと金融機関

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 株価は下落したとはいえ、為替は円安傾向が続いている。衆議院が解散した昨年11月16日は、ドル円レートで1ドル81円26銭だった。6月24日の為替は1ドル98円46銭。東証1部・2部上場メーカーの「想定為替レート」を調査した東京商工リサーチ(http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/2013/1238550_2164.html)によると、期初の対ドル想定レートを1ドル=90円と設定した企業は143社中62社と最多であり、90円と95円の合計は113社と全体の約8割を占めたという。想定レートを上回る円安が、企業の業績を引き上げているのだ。

「株価が下がってアベノミクスがダメになったという意見がありますが、それは間違いです。野田政権では、経済が浮揚する材料がまったくありませんでした。80円台に為替が振れてしまい、電機メーカーのほとんどが赤字になり、半導体メーカーのエルピーダメモリは倒産してしまった。日本の電機・機械の業界は相当な苦境に立たされ、明るい材料を見つけること自体が困難だった状況です。

 そこからアベノミクスが始まり、経済がよくなるということでまず反応したのが株や為替です。企業の将来利益が高まることを予想して株は買われ、上昇する。明らかに低すぎた株価が修正されることは、金融政策が成功を収めるための第一歩です。しかし重要な点は、金融政策の目的は2%の安定的なインフレを達成することで、それを通じて生産を拡大して雇用を安定化させることです。いまの失業率は4%台ですが、少なくとも3%台に下がり、働きたい人ができる限り雇用される状態をつくるというのが最終目的です。大胆な金融政策の成否は生産や雇用が拡大し、賃金が上昇して2%程度のインフレを達成・維持できるかどうか。そこで判断しないといけない」(片岡氏)

 金融政策はアベノミクスの第一の矢だ。黒田バズーカはこれまでの日本銀行の政策の多くを吹き飛ばした。黒田日銀による「異次元緩和」は、やっと3カ月目を迎えようとしている。いまの段階で失敗と批判するのは、時期尚早ということだろう。

●金融機関もマスコミも、まだ日銀の体制変化についていけていない

 野田政権に比べ、株価が上がり、為替も円安に推移しているにもかかわらず、野田政権時代の経済政策よりも安倍政権の経済政策に対する批判は大きい。それは日銀の金融政策についても同じことがいえる。安倍総理が自民党総裁選から大胆な金融緩和を日銀に促すと主張した。金融政策が政治案件に上ったが、日銀記者クラブの質問の多くは金融緩和による景気浮揚の可能性を疑問視するものだった。典型的なものが以下だ。

「現在、日銀は、物価目標を1%としていると思いますが、現在の日本経済において、一般論として、3%という物価目標が現実的な目標だと思われますか?」(2012年11月21日)

「金融緩和の有効性について、我々はどこまで期待してよいのか、総裁のお考えを伺いたいと思います」(2012年11月21日)

「総裁はあまり好まれない質問かもしれませんが、今回『無制限』という言葉を使われました。前回の記者会見の中でも、要するに欧米が行っている無制限ないし無期限に対し、日銀はそれを行っていないけれどもやはり緩和しているのだ、というご指摘がありました。今回、あえて『無制限』というキャッチフレーズを使われた理由について、日本も緩和姿勢が相当強いことを示していくのだというニュアンスがあるのかどうかを、お伺いしたいと思います」(2012年10月31日)

 これらはある意味で、日銀の理論が前提になった質問だった。

 つまり「すでに金融は緩和している状態であり、それでも景気がよくならないのは政府の規制緩和が足りなかったり、民間投資が弱かったりするからだ」というものだ。アベノミクスで例えれば、第一の矢である金融政策は限界までやっているのに、第二、第三の矢が放たれていないということなのだろう。

 しかし、アベノミクスで重要なのは第一の矢だ。大胆な金融緩和があってこそ、財政政策も成長戦略も効果を発揮する。財政政策は金融緩和とセットでなければ十分な効果を発揮しない。財政政策も成長戦略も歴代内閣は検討・実施していたが、デフレからの脱却はできなかった。しかしバブル崩壊以降、金融政策の大転換を主張した政権はなかった。この事実ほど、デフレの正体を証明しているものはない。

 だから金融政策が第一の矢であり、これまでの日銀の金融政策とは次元の違う「異次元緩和」はデフレ脱却のために必要な措置だったのだ。しかし、黒田日銀になってからの記者会見では、「異次元緩和」を問題視する質問が目立つ。

BusinessJournal編集部

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