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金融記者も懐柔され……

アベノミクス最大の懸念材料?金融庁長官、異例の3年目突入の舞台裏…業界から異論も

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金融庁が入居する霞が関コモンゲート(「Wikipedia」より/Rs1421)

 金融庁は、畑中龍太郎長官が留任して、異例の3年目に突入する人事を発表した。畑中氏は1976年の大蔵省(現財務省)入省。本家の財務省では78年入省の真砂靖次官が退任し、79年入省の木下康司主計局長が次官に就くため、年次差が3年に拡大する。

 畑中氏は金融界ではすこぶる評判が悪い。高圧的なモノ言いに加え、銀行や証券会社の箸の上げ下ろしにまで口を出し、金融界を萎縮させてきた。そんな畑中氏が留任したのはなぜか。

●留任のための根回し

「本人の残留に向けた活動の成果ですよ」と語るのは金融庁詰めの大手新聞記者。今回の人事では、畑中氏が退任し、真砂氏と同期の78年入省の細溝清史監督局長が長官に就任するのが既定路線だった。それをひっくり返すべく、今年3月頃から畑中氏が動いていた、という。

 畑中氏は有力議員やマスコミ幹部と頻繁に会い、後任の細溝氏がいかに適格性を欠くかを主張していた。細溝氏の次の次に政治家や業界に評判がいい80年入省の森信親総括審議官(今回の人事で検査局長)を据えたいと思っているのだが、細溝氏が長官になれば森を潰しかねない、と言い回っていた。また、財務省勤務が長かった細溝氏が長官になると、金融庁人事が財務省に支配されかねないとも言っていたようだ。細溝氏追い落としの本音が、自らの続投にあったことはいうまでもない。

 業界にはこわもての畑中氏も、有力政治家やメディアに見せる顔はまったく違う。若手の金融庁担当記者などは、自宅に招き入れて気さくに酒を振る舞い、ことごとく懐柔した。3年目突入でも目立った批判記事が出ないのはこのためだ。中には、畑中氏に言われるままに、森本学総務企画局長(今回の人事で退官)も後任として可能性が出てきた、という観測記事まで書かされた記者もいる。

●畑中氏は有能なのか。過去の実績は?

 畑中氏の留任について、麻生太郎副総理兼財務相兼金融担当相は「優秀な人材は、最後の最後まで使ったほうがいい」と説明した。だが、本当に優秀なのか。

 6月15日に行われた証券系の学会で講演した畑中氏は、「質屋ではあるまいし、今の日本の銀行はまったくリスクを取っていない」と高圧的に言い放った。そのうえで、銀行に貸し出しを促すことができるよう、金融庁の検査マニュアルを変えたと自慢したのである。要は、リスクが高いために銀行が貸し付けを躊躇しているような中小企業に、金融庁が貸し出しを“指導”できるようにした、というのだ。そうでなくても民主党政権時代に「金融モラトリアム法」で、中小企業のゾンビ企業が激増。どうやってその処理を進めるか、銀行は頭を痛めているところだけに、畑中発言は銀行関係者の怒りを呼んだ。

 自らの留任を働きかけた政治家に、畑中氏は「これまでの2年間は民主党政権で、自分の思うことができなかった」と述べていたという。だが、実際のところ、金融には素人だった自見庄三郎・金融相などは畑中氏の進言に忠実だった。安倍晋三首相が進めるアベノミクスは、いずれ民主党の経済失政を暴くことになるだけに、畑中氏の失政も表面化しかねない。それを糊塗するには、なんとしても留任したい、というのが本音だったのだろう。

 経済のグローバル化を進めようというアベノミクスでは、世界的に見て遅れている日本の金融業界の国際化が大きな課題になる。だが、畑中氏の本音は、反国際化の国粋主義で、しかも金融業界への政府の関与を深めるべきだというもの。どう見てもアベノミクスとは方向性が異なる。さほど注目されなかった人事が、実は安倍政権最大の懸念材料になる可能性が大きい。
(文=編集部)