NEW

苦境の製紙業界、再編のカギを握る大王の迷走…創業家内の争い、北陸紀州との対立

【この記事のキーワード】

,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

※各業界の最新ニュースをお届けする新ニュースサイト「Business Topic」がオープンしましたので、ぜひご利用ください。

大王製紙技術開発本部(「Wikipedia」より/Fffkk)
 製紙業界第4位の大王製紙は6月27日、株主総会を開催した。佐光正義社長の取締役再任に反対していた筆頭株主の北越紀州製紙は総会に出席しなかったため、同社長の再任は賛成多数で認められた。

 大王が公表した臨時報告書によると、佐光社長の取締役選任の賛成(出席した株主の議決権に対する賛成の割合)は75.1%にとどまった。北越出身の社外取締役1人(賛成67.2%)を除いて、他の取締役選任については、98.2~99.4%の高い支持を得た。22%の議決権を持つ北越が出席していれば、佐光社長の再任は微妙だったということになる。北越は総会を欠席することで、決定的な対立は回避したが、火種はくすぶったままだ。

●大王製紙にインサイダー取引疑惑

 両社の関係が悪化したのは今年2月。大王の社員が「インサイダー取引や不正会計」を業界紙に内部告発したことが発端だった。大王の関連会社である川崎紙運輸が2012年7月から11月末にかけて、北越に断りなく北越株式を2%取得していたのだ。北越は大王に説明を求めたが、当初、大王はこれを拒否した。

 両社は12年11月、総合技術提携契約を結んだ。北越側は技術提携交渉をしている間に、大王の関連会社が密かに北越株を買い付けていたことを問題視。2月14日、「インサイダー取引の疑いがある」として、大王に第三者による特別調査委員会の設置を要請。誰が株式取得を決めたのかを検証するよう求めた。大王は川崎紙運輸との資本関係を解消し、川崎紙運輸は関連会社から外れた。

 大王が設置した外部委員会は5月中旬、「川崎紙運輸の株取得に大王本体は関与していない。違法行為はない」との報告書を発表した。これを受けて、大王の佐光社長は5月24日に会見を開き、「再三にわたって問題があると指摘してきた北越の行為は、大王の企業価値を傷つけるもので誠に遺憾だ」と強い口調で批判。その一方で、「できればこれで区切りをつけたい」と問題の幕引きを図りたいとの意向を示した。これに対して北越は5月28日、「『問題なし』との結論の妥当性、合理性に疑義がある」として「説明責任を果たすものとは到底いえない」とした。

 北越は6月25日、大王が27日に開催する株主総会で「佐光正義社長の再任人事案に反対する」と発表した。北越は、調査が不十分だとして大王に再調査を求めたが、25日までに回答はなかった。北越は「大王は利害関係者への説明責任を放棄しており、その責任は佐光社長にある。選任に反対せざるを得ない」とする文書を公表した。

 北越は一時、疑惑解明のために、株主総会での株主提案を検討していたが、結局これを見送った。創業家一族による大王株式の買い増しで、簡単には北越側の提案が通らないと判断したからだ。北越は、大王の社外取締役候補として1人派遣したが、株主総会には出席しなかった。北越出身の社外取締役選任の賛成票は低率にとどまり、創業家一族の反発が強いことをうかがわせた。

●大王前会長の不祥事の収拾に乗り出した北越

 株主総会前日の6月26日、子会社7社から55億3000万円を無担保で借り入れ損害を与えたとして、会社法の特別背任罪に問われていた大王製紙・前会長、井川意高被告の上告審で、最高裁第3小法廷は前会長側の上告を棄却する決定を下し、懲役4年の1、2審判決が確定した。

 創業家の3代目である意高氏は07年に社長、11年6月に会長に就任。だが、カジノのバカラ賭博に溺れた彼は、子会社からの借り入れをカジノにつぎ込んでいたことが発覚し、同年9月に引責辞任した。

 大王の佐光社長は、井川一族による「完全な支配体制」が不祥事の根本原因だとして“脱創業家”に踏み出した。これに創業家の本家で意高氏の父親である高雄氏が猛反発。佐光社長ら経営陣と高雄氏との血みどろの抗争が勃発した。

 佐光社長と高雄氏の間に立って“お家騒動”を収拾したのが北越である。両者から請われる形で北越は高雄氏側から大王の株式を100億円で引き取った。高雄氏は、この100億円を原資に意高氏が子会社から引き出した借金を返済し、大王の経営から手を引いた。北越は19.59%(議決権比率は22.2%)を保有する筆頭株主になった。その後、北越と大王は技術提携交渉に入ったが、その最中にインサイダー取引疑惑事件が起き、両社の間に亀裂が走った。

●分家の「新・井川家」の台頭

 大王vs.北越紀州に参戦してきたのが、創業家の井川一族だ。本家の高雄氏は、息子の借金の尻拭いのために株式を手放したので影響力を失った。とはいえ、事件に無関係な一族は健在である。