NEW
「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第40回

本社ビルにはバブリーな貴賓室 大手新聞社「不動産事業でも食っていける」

【この記事のキーワード】, , ,

 「ふむ。丹野に『帰りに案内しろ』と言ったんだが、駄目だった。25階に上がるエレベータも別で、制御室で操作しないと使えないらしい。なんのためにつくったのか、理解できないよ。米国大統領でも呼んで接待するつもりだったのかね」

●大都社長の女性スキャンダル

吉須がなかなか核心を話さないので、深井が単刀直入に突っ込んだ。
 「丹野さんはどんなスキャンダルを話したんですか」
 「松野(弥介)社長のことよ。昔、彼が“カラオケ狂い”で、自分の車の中に伴奏だけ入れたカセットテープを乗せ、ゴルフの行き帰りに練習している、という話を聞いたことがあったけど、女性問題があるとは知らなかった」

 「カラオケの話、いつ頃のことですか」
 深井は「しまった」と思ったが、後の祭りだった。話題は女性問題から遠ざかっていた。

 「20年以上前だな。俺も松野社長と同じ経済畑だから。銀行の広報マンから聞いた」
 「うちの松野、カラオケすごくうまいんですよ。特に演歌。昔の東海林太郎や三浦洸一みたいに直立不動で張りのある声で歌います。夜の街の女の悲哀を歌った曲が好きですね。僕も、1回か2回銀座のクラブに呼ばれたことがありましたから」
 「へえ、君、政治畑なのに、経済畑の松野社長と飲むことなんてあったのかい?」
 「うちの会社って、戦後しばらくしてから、ずっと、政治部出身者と社会部出身者が交互に社長に就く慣行が続いていたでしょ。それが25年くらい前から社会部出身者に代わり、経済部出身者が社長に就くようになったんです」
 「そんなことが関係するの?」
 「まあ、待ってくださいよ。松野は経済部出身の三人目の社長ですが、彼の部長時代に経済部と政治部で人事を含めて交流するようになったんです。そんなこともあって、政治部記者が経済部の酒席に呼ばれたりするようになったんです」

 「ああ、そんなことか。まあ、それはいいとして、俺はね、カラオケ好きの松野社長は銀座や赤坂に行きつけのクラブやバーがあるから、ホステスとおかしな関係になっても不思議じゃない、と思っていた。でも、丹野によると、社内の不倫だというんだな」
 「そうです。松野は前任社長の愛人スキャンダルを熟知していますから。水商売の女と危ない橋を渡るようなことはないですよ」
(文=大塚将司/作家・経済評論家)

【ご参考:第1部のあらすじ】業界第1位の大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に合併を持ちかけ、基本合意した。二人は両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)、小山成雄(日亜)に詳細を詰めさせ、発表する段取りを決めた。1年後には断トツの部数トップの巨大新聞社が誕生するのは間違いないところになったわけだが、唯一の気がかり材料は“業界のドン”、太郎丸嘉一が君臨する業界第2位の国民新聞社の反撃だった。合併を目論む大都、日亜両社はジャーナリズムとは無縁な、堕落しきった連中が経営も編集も牛耳っており、御多分に洩れず、松野、村尾、北川、小山の4人ともスキャンダルを抱え、脛に傷持つ身だった。その秘密に一抹の不安があった。

※本文はフィクションです。実在する人物名、社名とは一切関係ありません。

※次回は、来週8月30日(金)掲載予定です。

BusinessJournal編集部

Business Journal

企業・業界・経済・IT・社会・政治・マネー・ヘルスライフ・キャリア・エンタメなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト

Twitter: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

Instagram: @businessjournal3

ニュースサイト「Business Journal」

本社ビルにはバブリーな貴賓室 大手新聞社「不動産事業でも食っていける」のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!