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吉田潮「だからテレビはやめられない」(8月26日)

ジャニーズやAKBの貶め方光るドラマ『天魔さんがゆく』、内容なくてもハマるワケ

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『天魔さんがゆく』公式サイト(TBS HP)より
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 夏に多いのがホラー系&納涼系のドラマ。正直、オバケとか心霊とかが人一倍苦手。びびり&怖がりなもんで。ひとりで深夜に観ることができない。でも、今夏は違った。それもこれも福田雄一監督のおかげである。

 深夜枠でひっそり放映されている『天魔さんがゆく』(TBS系/毎週月曜深夜放送)は、オバケ退治がメインテーマ。『ゴーストバスターズ』みたいなヤツね。主演は堂本剛。ジャニーズの中でも恥かきっ子っつうか、なんともいえないハミ出し方をしている人。かなり昔のドラマ『人間・失格』(TBS系)の時も芝居ができるジャニーズとして期待して観ていた記憶がある。実力があるのに奇天烈というか、アイドルの王道に肌が合わないタイプだ。

 主人公の法界天魔(堂本)は先祖代々おばけと対話して成仏させる特殊能力をもつ。有限会社おばけ警備保障(通称・オバケー)の社長として、日々おばけ退治(退治というより対話)に勤しむ。その右腕であり、番頭的存在が大覚慶三(皆川猿時)。皆川がこれまたいい味を出していて、ウザキャラを確立させている。NHK連続ドラマ小説『あまちゃん』の南部ダイバーの暑苦しい先生役の人ね。もみあげといい、背毛といい、平成の時代にかなりミスマッチな容貌なのに、憎めない・愛らしい・目が離せない。このオバケーをゲーム会社とカン違いして、うっかり入社してしまったのが岡崎旭(白目剥いたり、毒づく演技が可愛い川口春奈)。この3人がおばけ退治の依頼にしぶしぶ応対していくという物語。

 画面が暗くて、おばけが登場するシーンはちょっぴり怖いんだが、出てくるおばけたちがこれまた間抜けというか、笑える手練れを投入している。福田組では鉄板のラインナップであるムロツヨシや上地春奈がギャグ全開でオバケ役を演じたりして。低予算冒険活劇で一躍有名になった「ヨシヒコ」シリーズ(テレビ東京系)が好きだった人には、たまらない福田雄一ワールドだ。おばけが出てくる典型的なシーンで身構えていたら、なぜか「ふなっしー(激しく踊る、船橋市非公認のゆるキャラ)」が出てきたり。この脱力感たるや!

 私自身がいちばん好きなのは、堂本がおばけを見ると必ず気絶するという設定。「きゅーッ」と白目を剝いてぶっ倒れるのがおかしくて。しかも、堂本は気絶すると亡くなった父・法界天童(佐藤二朗)に会える。天国という設定なのだが、どうみても昭和のお茶の間コントみたいな場所。父であり同じ能力を持っていた佐藤に、おばけ退治の秘訣を聞こうにも、佐藤がおちゃらけてばかりで話にならない。佐藤二朗の魅力全開。たぶん、このシーンに台本はない。堂本と佐藤のやりとりはアドリブくさい。堂本はそれをいいことに佐藤に無茶ブリ。マイケル・ジャクソンやジャネット・ジャクソンのマネを強要したりして。

「ヨシヒコ」も、他の福田作品も観たことがない人にはわかりにくいかもしれないが、一度観ればハマるはず。ドラマとしての内容も芯も気迫もプライドもあまり感じられないのだが、とにかく肩の力が抜ける。ハマるギャグがあれば、2日間は思い出し笑いを堪能できる(私は佐藤二朗のジャネット・ジャクソンで1日思い出し笑い)。

 福田ドラマは深夜枠が多く、しかも5分ドラマだったりして意外と見逃しがちだ。ドラマ界の隙間産業的商法なのだが、ぜひ今後はチェックしてほしい。ジャニーズやAKBの使い方(貶め方)がうまいし、アンチアイドル派でもかなり楽しめること間違いなし。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。