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吉田潮「だからテレビはやめられない」(8月26日)

香川照之、ボクシング中継の新境地切り開く?豊富な知識と語彙のインテリ解説でアナを凌駕

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香川照之(「MEN'S CLUB」<ハースト婦人画報社/2013年7月号>より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 日本テレビの『24時間テレビ 愛は地球を救う』が放送された8月24日夜から翌日にかけ、24時間ほぼテレビをつけっぱなしだったが、一秒も『24時間テレビ』を観なかった。なぜなら、番組放送終了翌日の26日、日本テレビでは各番組にまたがってダイジェスト版が丸1日かけて放送されるから。オンタイムで観る必要ナシ。なもんで、つい他の局(特にNHKの新ドラマやドキュメンタリー)ばかりに目が行って、ふと気づいたら『24時間テレビ』は終わっていた。

 この24時間でうっかり興奮したのが、ボクシング中継『ボクシング ダイヤモンド グローブ スペシャル』(フジテレビ系列)だった。ロンドン五輪金メダリスト(しかも長身イケメン)・村田諒太のプロデビュー初戦である。実は、ボクシングにはほとんど興味がない。なぜなら、ボクシングのイメージが悪いから。

 私のような中年女にとっては、ボクシング=「猿顔チンピラボクサーあるいはそのファミリー」みたいなイメージだ。子供の頃、アニメ『あしたのジョー』は観ていたけれど、実際にはあんなボクサーを見たことがない。日本のボクサーって、なんか小柄で猿顔で眉毛剃っててチンピラっぽくて品がなくて。まったく応援する気になれなかった。

 そこに村田。爽やかである。プロボクシング界のダークな特徴「チンピラ興業っぽさ」が1ミリもない。勝手なイメージかもしれないが、えらくクリーンなアスリート風。入場するときもニコニコの笑顔で、応援席ともコンタクトをとる村田。しつこいが、爽やかだ。

 ただし、村田がイケメンで爽やかだから、テレビにくぎ付けになったのではない。試合だって、2ラウンドであっという間に勝っちゃったし。何にくぎ付けって、ゲストの香川照之である。

●冴え渡るインテリさ

 試合中、しゃべるしゃべるしゃべる。他の解説者が不要だったと思うくらいだ。熱を帯びた香川の声がアナウンサーの声を遮ることもしばしば。香川が熱狂的なボクシングオタクであることは知っていたが、民放局のボクシング中継で、香川が大興奮する声を聴いたのは初めてである。

 しかも知識が豊富で、一般人(特に中年女性)がわからないボクシング選手の名前をバンバン出して、とにかくしゃべりまくる香川。ただし、興奮して奇声を発する松岡修造や、一夜漬けの知識を披露する織田裕二とは異なり、言葉のセレクトや語彙の豊かさがインテリである。たぶん、アドレナリンで声が大きくなるタイプではなく、しゃべりのスピードが上がるタイプ。といっても、知識をひけらかす嫌味な感じではなく、「ああ、この人本当にボクシング好きなんだなぁ」とほのぼのする印象。

 ボクシングど素人の私からすれば、実況中継は香川ひとりで十分ではないかと思った。芸人や局アナ、女子アナ、元プロボクサーもいたけれど、まあ、彼らの影の薄いこと。試合後、放送席に村田本人を呼びつけたにもかかわらず、村田の肉声をあまり聞き出せないと言う放送席陣の不手際。というか、香川のコメントが最も多かったのが笑えた。

ぼーっとしている女子アナに「(海外の選手を)紹介しなくていいんですか?」と進行を促したり、取って付けたように呼ばれ、面白いことのひとつも言えない千原ジュニアが、他局ネタ(『半沢直樹』(TBS系)の「倍返しだ!」というセリフ)でダダ滑りするも、オトナ対応でサラッと流す香川。

 村田諒太というよりは、香川照之に魅せられた夜だった。あ、勝利おめでとうございます。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。