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闘うジャーナリスト・佐々木奎一がゆく! ワーキングクラスの被抑圧者たち 第11回

有名専門スクール、パワハラ&強制退職の実態「つなぎ着て掃除しろ」他社へのスパイ行為も

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 細野氏は、「つなぎでトイレ掃除」という文言に恐怖し、やむなく「年内で」と回答した。間髪入れず、落合部長は、退職届を書くよう迫ったが、細野氏は、それを書くと全てが終わってしまうように思え、「印鑑がないから」と言って書かなかった。そして細野氏は、知人の法律の専門家から、退職を撤回するよう助言を受け、落合部長宛てに退職を撤回する旨をメールで伝えた。

 その後、細野氏は、バンタンの専門学校のパンフレット送付を依頼してきた高校生に、勧誘メールを送る仕事に従事。翌13年については、年始に有給を消化して1月14日から出勤する、と上司に伝え、有給の了承を得た。

 そして12年の最後の出勤日の12月27日、細野氏は落合部長に呼ばれて、退職届の出し方などをこと細かく記したA3用紙1枚のマニュアルを手渡されて、その通り書くよう言われた。細野氏は即日、断固とした調子で部長宛てに次の文面のメールを送った。

「退職合意をしておりませんので、渡された書類の日付(1月11日最終出勤日)で退職する意思はありません。従って、渡された書類に記入をして提出することもありません」

 だが、会社側は、13年1月8日付で、通知書を送付。そこにはこう書いてある。

「当社は、当社と細野氏との間で、細野氏が平成25年1月14日をもって、当社を退職することについて合意が成立していると考えております。そのため、平成25年1月15日以降、細野氏は当社に出勤する理由はなく、当社に入ることはできませんので、その旨ご理解ください。(略)現在お持ちの保険証、名刺ケース、社員証、名刺を速やかに御返却ください(略)また、当社内に残置してある細野氏の私物につきましては、当社から細野氏の住所宛てに郵送させて頂きます。草々」

 細野氏は当初は14日に出勤するつもりだったが、この通知により、出社を断念した。

●会社を提訴へ

 そして13年2月4日、細野氏はバンタンを相手取り、東京地裁に提訴した。請求の趣旨は次の通り。

 1.原告が被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する
 2.被告は原告に対し、金35,465円の金員を支払え(12年8月の時間外給与)
 3.被告は原告に対し、金26,250円の金員を支払え(同12月の減給分)
 4.被告は原告に対し、金26,250円の金員を支払え(13年1月分の減給分)
 5.被告は原告に対し、平成25年2月以降、毎月25日限り、金288,750円を支払え。(毎月の給与分として)
 6.被告は原告に対し、金1,000,000円の金員を支払え(落合部長、安住チーフによるパワハラの精神的苦痛の損害として)

 訴状で細野氏サイドは、上記パワハラを受けたことと、「退職意思表示は脅迫によるもの。しかし、退職届を出していないので、退職合意は成立していない」と主張した。

 これに対し、バンタン側はパワハラを全否定し、退職合意は成立していると訴えた。

 なお、会社側は細野氏のいう退職強要の場面について、事実と違うといって否定を重ねていたが、法廷で細野氏側は、落合部長がトイレ掃除をさせるよう迫ったりしていた会話をしっかり録音していて、それを文字に起こして裁判所に提出した。

 その点をバンタンに問い合わせたところ、会社側は、「確かに弊社と原告との面談における会話が記録されていますが、内容を確認しても、弊社の主張と齟齬する発言は確認できていません」と、否定していた会話内容が録音で明らかになったにもかかわらず主張し、「弊社としては、むしろ原告の主張こそ『説得力に欠ける』ものと考えております」「係争中であるため、詳細は控えさせていただきます」とのことだった。なお、原告側は取材拒否だった。

 当の社員は「退職に合意していない」「退職届も書きません」と言っているにもかかわらず、会社側は「退職に合意している」と言い張り、ロックアウト(会社からの強制締め出し)して退職に追いやったこの事件を、司法はどう裁くのか? 今後の動向に注目したい。
(文=佐々木奎一/ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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