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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第41回

権力にしがみつき、経費で豪遊、向島の芸者を愛人にしていた巨大新聞社の前社長

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 定年間近の販売局や広告局の社員たちは、大過なく定年まで勤めたいだけで、はっきり言って仕事はしない。烏山の歓心を買おうとでも思ったのか、社長直轄で、簡単に見かけ上の売上高と利益を増やせるマグロの業転取引に乗り出した。それが引き金だった。

 業転取引はマグロを最終消費者に届けるのでなく、業者間でぐるぐる回す循環取引だ。参加する業者がさやを抜くので、仮に1000万円しか価値のないマグロであっても、ぐるぐる回っているうちに何億円という価格で取引されるようになる。

 回り続けている限り、売り上げと利益は出る。しかし、どこかで決済が破綻すると、行き詰まる。そのババを一手に引き受けたのが大都通販だった。時価とかけ離れた高値の在庫を抱えることになった。破綻した時には、循環取引の対象はマグロだけでなく、ふかひれなど魚介類全般、さらには石油製品にまで広がっていた。

 こうした循環取引に参加するのは中小業者がほとんどで、大都通販のような大新聞社の子会社が入ることは極めて稀だ。循環取引に誘いこむ広告塔の役割も果たしたのだが、それを利用して稼ごうという海千山千の連中が、われもわれもと参入した。そして、循環取引は破綻、大都通販がババを引き受けてしまった。回収しようとすれば、中小業者が潰れるだけ。海千山千の連中は、ひと稼ぎして循環取引の輪から抜けている。

 通販会社に売り上げと利益がどんどん増えれば「異常だ」と気付かなければいけない。まともな大企業なら、誰かが気付き、損失が大きくならないうちに、撤退させる。ところが、大都にはそうした人材はいなかった。烏山は社長に就任して2年でワンマン体制を確立、人事を武器に、異を唱えるような社員をすべて外し、茶坊主集団で経営を切り盛りした。

 烏山ら大都の経営陣に大都通販巨額損失の情報が上がったのは、烏山が辞任に追い込まれる一年前だった。情報が上がるや否や、激怒した烏山は連日、向島の料亭街の一角にあるバーに側近たちを集め、収拾策を練ったが、もはや時すでに遅し、だった。

●経費で豪遊し、向島の芸者を愛人に

 このため、向島のバーでの鳩首協議の目的は事態の収拾策から、隠蔽工作に変わった。しかし、半年も経たないうち、表沙汰になった。大都通販があこぎな取り立てに動き、中小業者が潰れたためで、週刊誌が大都の横暴を書き立て、社会問題になった。

「『向島』というのが烏山の愛人か」
「そうです。彼女が芸者の傍らで始めたバーです」

 小柄小太りの烏山は、その風貌も重なって一般女性には全くモテなかったが、カネ離れがいいので、水商売で下心のある女は無視せずに付き合う。そんな中の一人に年増芸者がいて、愛人にした。大都社員なら誰でも知っているといっても過言ではない、周知の事だった。

 政治部記者、特に保守本流の与党、自由党に食い込んだ記者は、派閥の領袖クラスの政治家と付き合うので、赤坂や新橋の料亭に出入りする。もちろん、政治家におんぶに抱っこ、身銭は切らない。自由党担当の政治記者として有能であれば、赤坂や新橋の芸者と昵懇になることはあったが、大物政治家が時たまお忍びで遊びに行く向島とはあまり縁がないのが普通だった。しかし、烏山が出入りしたのは向島の料亭街だった。

 烏山はふてぶてしい傲慢な男だが、人懐っこさもあり、政治部時代は自由党の幹部連中と幅広く付き合い、いまだに本人自身は自由党に影響力を持っていると思い込んでいる。若い頃、派閥の領袖クラスに可愛がられたのは使い走りに重宝されたからだ。政治部次長、政治部長、編集局長と地位が上がると、お追従を言うだけで定見のない烏山は、派閥の領袖たちから遠ざけられるようになった。つまり、相手にされていないのが実体で、政界では烏山は“大都のピエロ”と陰口を叩かれたが、それに気づくような男ではなかった。その代わり、烏山の肩書に吸い寄せられるように、自由党中枢の情報を知りたい陣笠代議士たちが集うようになった。

 烏山の持っているのは、自由党担当や官邸担当の記者たちから集めた、すでに大都に掲載された通り一遍の情報だけだった。それを小出しにするだけだったが、新聞などろくに読まない陣笠代議士たちにはありがたがられた。烏山が料亭の会食代や芸者の花代をすべて持ったことも大きい。もちろん、烏山のポケットマネーではない。大都のカネ、取材費だ。
(文=大塚将司/作家・経済評論家)

【ご参考:第1部のあらすじ】業界第1位の大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に合併を持ちかけ、基本合意した。二人は両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)、小山成雄(日亜)に詳細を詰めさせ、発表する段取りを決めた。1年後には断トツの部数トップの巨大新聞社が誕生するのは間違いないところになったわけだが、唯一の気がかり材料は“業界のドン”、太郎丸嘉一が君臨する業界第2位の国民新聞社の反撃だった。合併を目論む大都、日亜両社はジャーナリズムとは無縁な、堕落しきった連中が経営も編集も牛耳っており、御多分に洩れず、松野、村尾、北川、小山の4人ともスキャンダルを抱え、脛に傷持つ身だった。その秘密に一抹の不安があった。

※本文はフィクションです。実在する人物名、社名とは一切関係ありません。

※次回は、来週9月6日(金)掲載予定です。

BusinessJournal編集部

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