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クールジャパン、新たな税金バラまきの懸念〜省庁ごとに類似事業乱立、税金使途不明瞭化

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クールジャパン、新たな税金バラまきの懸念〜省庁ごとに類似事業乱立、税金使途不明瞭化の画像1経済産業省が実施する「クールジャパン・マッチンググランプリ」のHPより
 6月12日に通称クールジャパン法(株式会社海外需要開拓支援機構法)が可決成立した。

 海外進出を考えている事業体に対し出資の面から支援する株式会社、いわゆる官民ファンドを設立するというものだ。2013年度で500億円の税金を投入し、民間企業からも出資を募る。経産省職員はこう説明する。

「海外展開を支援する政策としてクールジャパン戦略推進事業がありますが、それは補助事業です。機構は補助ではなく、企業への出資を行います。そうすることにより、本格的に海外に出ようとする企業の後押しをしますし、機構からのお金が呼び水となり、民間企業や金融機関の資金がついてくる循環も生まれると思います。投資案件に対する判断は機構の専門家が行い、政府は関与しません。投資である以上、リターンは必要となりますが」

 機構の設立は今年の秋だ。政府が総株式の2分の1以上を保有し、収益性・波及効果の観点から選ばれたビジネスに対して出資を行うとしている。海外での商業施設の展開など事業期間が中長期にわたる事業でも、ビジネスモデルが立ち上がるまで持続的に支援するため、存続期間はおおむね20年だ

 一方、クールジャパン戦略推進事業の助成金の上限は1事業につき5000万円。今年度の予算は4.6億円で13件が採択された。採択は有識者が順位を決め、政府が足切りをするのだという。また、助成金は事業の半分までと決まっている。言い換えれば半分は企業が負担しなければならないため、企業側も「本気度が違う」という。

 順位づけを政府が決めないのは、成長産業や事業を判断する目利き能力が政府にはないからだという。そのために、政府は資金を出しつつも口出ししない民間の株式会社として機構を設立したのだ。

●官民ファンドの盲点

 ところで、官民ファンドとしてクールジャパン事業に出資する民間企業は、この機構が初めてではない。09年に2660億円の政府出資と140億円の民間出資によって設立された株式会社産業革新機構がある。この機構は市場開拓型の革新事業に出資するという目的で、これまで42の案件に投資している。クールジャパン事業では、昨年に民間企業であるANEW(2月事業開始。産業革新機構の100%出資による新会社)、出版デジタル機構(4月設立。産業革新機構が150億円を上限に出資)、グロザス(5月設立。産業革新機構が12億円を上限に出資)の3社に出資している。

 中でもグロザス、ANEWの事業内容については両社HPを見てもよくわからなかったため取材依頼をしたところ、グロザスからは「まだ説明できる事業になっていない」という理由で断られた。しかし産業革新機構の株の95%は財務大臣を株主とした政府が持っている。つまりは国民のお金を使っているということだ。その資金から12億円を投じて設立された企業であれば、民間であっても税金による事業だが、それが1年たっても報告できる事業になっていないという。また、ANEWからは「時間がとれない」という理由で取材を断られた。

 さらに産業革新機構にも取材依頼したところ、「記者クラブ加盟社のみの取材に応じます。加盟社以外の取材には答えられません」と断られた。その後、「個別の取材に対しては、個別に判断して対応する」と姿勢を軟化させたが、上記のグロザスやANEWを含めこうした一連の対応から、官民ファンドによる税金の使途はブラックボックス化し、チェックが難しいという実態がうかがえる。

 官民ファンドの問題はここにある。政府や独立行政法人などであれば説明責任が求められるが、官民ファンドとなると説明責任の対象が国民ではなく政府となる。政府と官民ファンドが癒着した場合、透明性の確保が難しくなるのだ。極論すれば「民間会社だから答える義務はありません」と言い放てる自由が官民ファンドにはあるといえる。クールジャパンも、その方便として使われる可能性は否定できない。

●乱立する類似事業に巨額予算

 そもそもクールジャパンとは何か?

 稲田朋美クールジャパン戦略担当大臣は、「各府省縦割りでやっていた政策に横串を入れて、オールジャパンで日本を再生する。クールジャパン戦略はそのための社会運動であり、経済政策や外交政策的な側面もあるものとして捉えています」と説明するが、この運動にいくらの予算がかかっているだろうか。平成24年度の補正予算ではクールジャパン関連予算として、843億円が計上された。内訳には経産省、総務省、国交省、法務省、外務省、農水省などの予算が入っている。

 クールジャパン戦略とは、ひと言で言えば「ジャパンブランドによる外貨獲得戦略」だ。日本のいいものを海外に展開し、買ってもらう。日本の良さを海外に知ってもらい、観光客を誘致する。農水省であれば食料品の輸出になるし、経産省であれは産業の海外進出支援、総務省であれば電波事業、国交省(観光庁)であれば観光客誘致、法務省であれば入国審査、外務省であれば国際交流ということになる。財務省の模倣品・海賊版拡散防止拠出金、文科省の文化芸術の海外発信拠点形成事業などもあり、クールジャパンが各省の予算獲得の言い訳になっている。

 例えば外務省が補正予算でクールジャパン関連予算として要求した「21世紀東アジア青少年大交流計画の拡充によるアジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流」(150億円)と似たものが、「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流(72億4800万円)」として復興予算に計上され、問題視された。

 前者は「日本経済の再生に向けて、我が国に対する潜在的な関心を増進させ、訪日外国人の増加を図るとともに、クールジャパンを含めた我が国の強みや魅力等の日本ブランド、日本的な『価値』への国際理解を増進させる」となっている。一方、後者は「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流事業を積極的に展開することにより、我が国の強みや魅力、すなわち日本ブランドを発信し、日本的な『価値』への国際的理解を増進する」とある。

BusinessJournal編集部

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