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吉田潮「だからテレビはやめられない」(9月9日)

NHK Eテレ、マニアな人選とシュールな奥深さ光る教育番組が、大人にも役立つ謎

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「お伝と伝じろう 公式サイト」(「NHK HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。


 ここのところハマってるのが、NHK Eテレ(旧NHK教育テレビジョン)である。Eテレの何がすごいかって、良質かつ企画力が優れている番組も多いのだが、うっかり「あら、こんなところにこの人が!」と驚かされることが多いのである。子供向けあるいは教育番組で、かなりマニアックで思い切った人選だったりする。

 子供の考察力を促す科学番組『考えるカラス』には蒼井優が出演。全体的にシンプルでオサレな雰囲気に仕立て上げられていて、蒼井のイメージ戦略by事務所にぴったり。本人の本性(肉食やさぐれ系)ではなく、あくまで事務所が理想とするイメージをEテレで実現成功。

 算数の教育番組『さんすう刑事ゼロ』は、モロ師岡が刑事役として算数の問題に挑んでいく。計算や解き方の解説はわりとあっさり。「え、これでいいの?」というくらい薄い。モロ師岡がちょいちょい小ネタを挟みつつ、算数よりも刑事ドラマのほうがメインに。なんという冒険。なんという挑戦。でも結構バカバカしくて、好きだ。

 小学生向けの道徳番組『時々迷々(ときどきまよまよ)』では片桐はいりがレギュラー。「こんなときどうする?」的な日常の出来事を子供たちがドラマで演じるのだが、迷った時にさまざまなコスプレで登場するのが片桐だ。番組自体がシュール一歩手前で、片桐のポテンシャルを100%発揮できてはいない。でも、意外と内容は奥深い。

 個人的には『テレビでスペイン語』に出ているナビゲーター、俳優の平岳大がいかにもラテン男っぽくて好物。真面目そうな容貌とは真逆で、ノリノリ&ツッコミ好きな講師・福嶌教隆先生もツボだ。ちなみにドイツ語ナビゲーターはちょっと硬さが残る高橋光臣ね。

『高校講座 地学基礎』のチェックすべきところは、MCの関口知宏(関口宏の息子で、やたら旅に出てる人)の目線。確実に、明らかに、はっきりと、しかも堂々とカンペを読んでいる。それでもフガフガと耳から空気が抜けたようなしゃべり口で自然を装う関口の姿は、ある意味、実直な印象。悪くない。なんだかすごく正直者のような気がする。

●大人を応援する国語番組?

 とまあ、マニアックで穴場な番組を見つけ始めると止まらなくなるのがEテレである。で、本サイト読者の諸君にオススメなベスト1をお知らせしておこう。

 毎週月曜午前9時20分からの、小学校高学年向けの国語番組『お伝と伝じろう』である。コミュニケーション力を高めるための秘訣をわかりやすく解説するのが、不思議な風貌のデュオ歌手「レ・ロマネスク」のふたり。ヒゲの麗人・トビー(男)と無口なファッションテロリスト・ミーヤ(女)だ。このふたりのイメージもなかなかにクールだが、番組自体も全体的にシュールな世界観で面白い。

 それだけじゃなくて、中身も子供向けのわりには営業マンにも役立つスキルが凝縮されているように思える。レ・ロマネスクの魅力もさることながら、人と接するのが苦手な大人や、KYと陰口叩かれている大人への応援番組としてオススメしたい。ホント、騙されたと思って、一度録画して観てほしい。

 お宝とサプライズがてんこもりのEテレ。残念ながら新聞朝刊のラテ欄ではこうしたシュールな番組の存在自体すら知ることができない。あの行数では、まず不可能。テレビ本体の番組表を毎度チェックするほど暇じゃない人のためにも、今後もEテレチェックを続けていこうと思う。民放局にはない「不敵の解放感」を楽しめるので。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。