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クロニクル 資産家殺人事件にも関与か?数々の違法行為のはてに多額の負債を抱え自己破産

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「Thinkstock」より
 数々の経済事件への関与が疑われた会社が表舞台から、ひっそりと退場した。元ジャスダック上場の投資会社、クロニクルは7月末、自己破産の手続きに入った。民間調査会社によると、負債総額は23億円(2012年9月期決算時点)。

 子会社を通じて宝飾品販売やWEB情報事業を行っていたが、12年9月期の売り上げは993万円にとどまり当期純損失を29億円計上した。07年9月期以降6期連続で最終赤字だ。

 こうした中、過去の不適切な会計処理が発覚。13年3月中間期の半期報告書の期限内の提出ができず、7月17日付けでジャスダック市場を上場廃止となった。

 最後に名前が登場したのは資産家夫婦殺害事件だった。

●資産家夫婦殺害事件

 13年1月、埼玉県久喜市の空き地で、スイス在住のファンドマネージャー・霜見誠氏と妻の美重さんが遺体で見つかった事件である。水産加工会社役員の渡辺剛被告は1月30日、潜伏先の沖縄県宮古島市で逮捕され、強盗殺人、死体遺棄、詐欺未遂罪で起訴された。

 渡辺被告は、12年12月7日、一時帰国していた霜見夫妻を架空のパーティー話で誘い出した。車の中で睡眠薬を混ぜた酒を夫婦に飲ませて眠らせ、ロープで首を絞めて殺害した。当初、「霜見さんに投資で数億円規模の損をさせられ恨んでいた」と動機を供述していたが、その後、供述は曖昧になっているという。闇が深そうな事件である。

 この事件で、俄然注目を集めたのがクロニクルだった。殺害された霜見誠氏がファンドマネージャーを務めていたJapan Opportunity Fund(JOF)がクロニクルに投資していたからだ。

 07年4月、クロニクルの新株予約権(株式を購入する権利)付社債を13億5000万円で引き受けた。これは発行額(27億円)の半分。転換価格が27円なので、株式に転換すれば5000万株となる。クロニクルは、この資金をM&A(合併・買収)に充てている。

 次に、11年12月クロニクルの新株予約権72個(転換価格20円で、720万株)を引き受け、さらに12年6月に別の投資家から158個(1580万株)譲り受けている。

 クロニクルの株価は、12年前半は30円台。20円で権利を行使して普通株に転換して市場で売却すれば、単純計算で10円の利益が出ていたにもかかわらず、行使したのは20個分(200万株)だけ。譲渡されたものと合わせて210個(2100万株)を保有していた。

 クロニクルの株価は13年1月15日、14円からいきなり37円に急騰した。クロニクルの経営陣は誰も「なぜ株価が上がったのかわからなかった。霜見氏が株価を釣り上げたのではないかと社内の意見は一致した」しかし、株価が急騰した時には、霜見氏は既に殺害されていた。今もって、誰が株価を釣り上げ、誰が高値で売り抜けたのかわかっていない。

 霜見氏は中東のドバイで不動産・株式投資をめぐり、ある投資家から民事訴訟を起こされるなど、リスクの高い仕事をしていた。霜見氏がクロニクルの前身のエフアールと関係を持つのは、親和銀行(本店は長崎県佐世保市)事件の時からだ。

●親和銀行不正融資事件

 1998年5月、親和銀行の辻田徹・元頭取が商法違反(特別背任)で逮捕・起訴された巨額不正融資事件である。辻田頭取の追い落としを図った行内の反対勢力が仕掛けた女性スキャンダルに引っ掛かり、このもみ消しを地元出身の金融ブローカーを通じて関西の暴力団組長に依頼した。もみ消しはうまくいった。金融ブローカーや暴力団組長に対して、謝礼として不正融資が行われた。

 暴力団組長への迂回融資の受け皿になったのが、宝石販売会社のエフアールだった。エフアールの創業者である鈴木道彦社長は「自分の会社にも融資する」ことを条件に、融資の受け皿になることを承諾した。

 エフアールは、全く価値のない山林や模造ダイヤを担保に差し入れて、親和銀行から融資を引き出し暴力団組長に流した。辻田元頭取の特別背任で立件されたのは、もみ消しの謝礼金、65億円だけだったが、実際の不正融資は146億円に膨らんでいた。

 懲役3年6月の実刑が確定した辻田受刑者は、03年6月に服役中に死亡。親和銀行は07年8月、福岡銀行の傘下にはいった。

 親和銀行事件の受け皿となったエフアール株式の仕手戦で稼いだのが霜見氏だった。「あれが、私の人生を大きく変えた」と知人に語っている。以後、大物仕手筋の西田晴夫氏(故人)との交流が始まり、いわくつきの仕手銘柄で稼いできた。親和銀行事件における特別背任罪で起訴され社長を退いた鈴木道彦氏の資金運用を、霜見氏が担当していたと社内では信じられている。

 2000年9月にエフアールは社名を「なが多」に、06年2月に「クロニクル」に変更した。クロニクルは、転換社債・新株予約権を乱発して合計100億円の資金を調達し、この金を仕手戦に投入したことで知られている。この新株予約権を引き受けた1社が霜見氏がファンドマネージャーを務める投資ファンドだった。

 11年にクロニクルの孫会社が無許可でサプリメントを販売したため、薬事法違反容疑でこの孫会社の社長らが神奈川県警に逮捕された。今年3月証券取引等監視委員会は、クロニクルへの課徴金納付命令を金融庁に勧告した。課徴金額は6433万円。海外ファンドへの出資金の名目で元会長に資金が還流していたにもかかわらず、損失を計上していなかったからだ。5月には宝飾販売の子会社役員が顧客から預かった高級時計を私的に流用する不正も発覚した。

 経済事件で悪名を轟かせたクロニクルは数々の闇を残したまま、会社としての命を終えた。
(文=編集部)