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山田政弘「あの話題のニュース/トレンドの裏側は?“実践的”ビジネス塾」(第2回)

PB先進企業・靴のABCマート、驚異の戦略〜ブランド単体と小売、2つの顔で相乗効果

文=山田政弘

 NBではあるものの、小売(屋号)の名前に頼らず、ひとつの独立したNBとしての認知度、地位を確立するブランド、いわゆる「ナショナル・プライベートブランド(NPB)」とでも言うべき商品開発が、今後、小売のPB戦略の潮流となるだろう。NPBという商品を活用して商品ブランド単体としても売上を伸ばし、また小売としてもNPBを活用して集客増につなげ、相乗効果を生む。このような好循環を生んでいるのがABCマートのPB戦略なのだ。

●PBに自社の名前を使うと、長期的な成功の阻害要因になる

 反対に、自社(店舗)の名前を商品につければ、知名度が上がるのは早いが、その代償も大きい。最初に自社の店名や屋号(つまりセブンやイオン)を低価格訴求型PBの名前に冠してしまった多くの小売では、いつまでたっても「値ごろ/安い」といったイメージを脱却することができないのだ。

 このジレンマに直面しているのが、トップバリュセレクトやセブンゴールド、アパレルではユナイテッドアローズ等の付加価値型PBである。

 確かに、PBを始める際に商品ブランドに自社店舗の名前を使わないと、知名度を上げるのに苦労する。しかし、PBの立ち上げ期に多大な労力と、時間、コストはかかるが、そこを我慢すれば、ABCマートのようにメーカー(商品)としても、小売(店舗)としても収益を生むことができるのだ。

●小売とメーカー、それぞれの立場での成功という二兎を獲る者が次代の勝者となる

 現時点でセブン&アイ、イオンは、これまで述べてきた構図にまだ気がついていない。だが、これから数年以内に、セブン-イレブンやイオンの店舗に「このメーカー、あまり見たことないけど、美味しいな(品質が良いな)」というブランドの商品が数多く出てくることだろう。

 それこそが、両社がNPBの効用と意義に気がつき、PB戦略として次のステージに進んだことの証しになる。

 そこまで行けば、「自分の店舗でヒット商品が出た」と喜ぶどころか、逆に世界中の小売企業(他社)に商品(NPB)を卸売りする状況がつくれているはずだ。小売としても成長し、メーカー(企画)としても成長する。前述した2社に限らず、どの企業がABCマートの成功事例を踏襲して更なる成長を遂げるのか。この行方を注視するとともに、私自身、NPBを活用したPB戦略の推進と成長の実現を、クライアント企業と共に実現していきたいと思う。
(文=山田政弘/ストラテジクスパートナーズ代表取締役)

山田政弘

山田政弘

戦略立案、経営者派遣やハンズオン(常駐)型経営支援により企業の成長実現・企業価値向上支援を手がけるストラテジクスパートナーズ株式会社代表取締役。中央三井信託銀行、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)戦略グループ、国内ITベンチャーマーケティングディレクター兼事業開発室長、事業再生コンサルティング会社クライアントパートナー等を経て、全国に店舗を構える靴の製造小売企業株式会社シンコー・株式会社モード・エ・ジャコモの再生担当取締役・事業改革室長としてハンズオンでの経営改革に従事した後、現職。消費財関連のメーカー、小売・流通業やネット企業、外食企業等に対する事業戦略立案、ブランディング、マーケティング支援、製造業に対するR&D戦略等による企業価値向上支援を手がけている。また、複数企業の社外取締役、顧問を務める。主な著書に『数字を使ってしゃべれるようになるトレーニングブック』(明日香出版)『早わかり 図解&実例 よくわかる!ソーシャル・ネットワーキング』 『エッジ・ワーキング』(ソフトバンククリエイティブ)など。

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