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吉田潮「だからテレビはやめられない」(9月29日)

NHK深夜の脱力系トーク番組がクセになる謎〜あまちゃんブーム延命の魂胆も透ける

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『おやすみ日本 眠いいね!』公式サイト(NHK HP)より
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。


 深夜、不定期に放送している珠玉の脱力系トーク番組がある。以前も少し触れたことがあるのだが、先日第6弾が放送された。夜眠れない人のために、「眠くなるユルさ」をコンセプトにした『おやすみ日本 眠いいね!』(NHK総合/9月21日放送)である。
 
 司会は、NHKの人気連続テレビドラマ『あまちゃん』などを手掛け、今日本で最も注目されている脚本家・クドカンこと宮藤官九郎と、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹。毎回ゲストが登場し、視聴者からの「眠れない悩み」を受け付け、街の定点カメラの映像を流し、眠りを誘う音楽を紹介し、と全体的にゆるやかにのんびりのほほんだらだらと流しっぱなしの番組だ。1回でも観たことのある人はクセになるだろう。

 人気も知名度も高まってきているこの番組の何がいいかって、変わらないユルさと人選の妙である。もちろん、天下のクドカンを最大のうま味として、NHKが“悪用”しているワケだが、コンセプトを変えることなく、相変わらずのほほんな作りであるところが長所。

 第6弾のゲストは片桐はいり。ここのところ私は片桐にハマっていて、彼女の書いた旅エッセイ『グアテマラの弟』(幻冬舎文庫)や『わたしのマトカ』(同)を読み耽り、NHK Eテレの子供番組『時々迷々』を眺め、『あまちゃん』のあんべちゃんの立ち位置に思いを馳せていた。「もっと片桐の話を聞きたかったわぁ」と思いつつ、この番組の人選に膝を打つ思いである。電話ゲストの荒川良々や村杉蝉之介という、微妙に「ハズさず、でも狙わず」のセレクトも品がよい。

 もうひとりのゲスト、森山良子もよかった。息子・直太朗の「オネエ化疑惑」についてサラッと答える森山。「まだ完璧には(オネエに)なってないかも」だってさ。素敵な母ちゃんだなと思ったよ。小さなオルゴールを胸元のピンマイクの前でコキコキ手で回しながら歌う森山の姿は、一瞬、間抜けだなと思ったのだが、歌声の美しさにハッとさせられた。後ろから頭をはたかれた気分。そもそも森山の歌声をちゃんと聴いたことがなく、どちらかといえば清水ミチコのモノマネのほうに馴染みがあったもので(“ぞぅわぅわ~、ぞぅわぅわ~”ってヤツね)。いや、恐れ入りました。感動しました。うっとりしました。美声に。

●毒々しい市原悦子の「昔ばなし」?

 ちょっと振り返ってみると、この番組は第一弾の時からゲストの人選が絶妙だった。細野晴臣や矢野顕子、遠藤憲司ら日本音楽界の草分けさんたちが登場したり(細野なんか途中からベッドで寝てたもんな)、勝地涼や田辺誠一、小池徹平らクドカン組(?)の俳優がユルいまんまで出てきたり。これだけ『あまちゃん』がブームになっているのだから、ほかの華々しい面々をうっかりゲストに出すんじゃないかと心配したが、杞憂に終わった。あくまでも「眠くなるユルさ」というコンセプトを踏襲した、番組スタッフの矜持を感じた。

 で、私がいちばん好きなのは、市原悦子が読む「日本眠いい昔ばなし」である。ペンネームが「死後」というイラストレーターさんの絵がすごくいい。ほのぼのしているのにどこか毒々しい。過去の放送でのクレジットは「絵・死後」だったのだが、今回はなぜか「絵・死後くん」となっていた。うーむ。NHK的配慮が及んだのかしら。

 もちろん随所に「あまちゃんブーム」を年末まで持ち越そうとするNHKの魂胆も見え隠れするのだが、この番組は良心的なほうである。スジを通しているほうである。どうぞこのまま変わらずにいてください。クドカンの顔色とハリツヤが以前に比べてぐっと健康的になったのは、喜ばしい変化なのかもしれないけれど。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。