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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第46回

ホステスをめぐりヤクザとトラブルになった巨大新聞社の専務 ライバル新聞社長は二股不倫

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ホステスをめぐりヤクザとトラブルになった巨大新聞社の専務 ライバル新聞社長は二股不倫の画像1「Thinkstock」より

 【前回までのあらすじ】
 業界最大手の大都新聞社の深井宣光は、特別背任事件をスクープ、報道協会賞を受賞したが、堕落しきった経営陣から“追い出し部屋”ならぬ“座敷牢”に左遷され、飼い殺し状態のまま定年を迎えた。今は嘱託として、日本報道協会傘下の日本ジャーナリズム研究所(ジャナ研)で平凡な日常を送っていた。そこへ匿名の封書が届いた。ジャーナリズムの危機的な現状に対し、ジャーナリストとしての再起を促す手紙だった。そして同じ封書が、もう一人の首席研究員、吉須晃人にも届いていた。吉須と4ケ月ぶりに再会した夜、ふたりが見かけたのは、社長の松野が愛人との密会現場だった。そして、吉須からは例の手紙を預かった。中には、深井への手紙と同様の文面があった。

 おばさんがビール2本と二合徳利1本に御猪口を持ってきた。深井宣光は二合徳利を取り、開高美舞の御猪口にお酌をした。美舞はグイッと飲み干し、店の中を見回した。新しい客は入って来ていなかった。しかし、美舞は声をひそめるように話した。

 「私“ゴシップ通”なんかじゃないわ。変な噂立てないでね。でも、大都じゃ、太井(保博=やすひろ)専務、日亜じゃ村尾(倫郎)社長のことは結構知っているわよ。知りたい?」
 「うん、知りたいな。教えてくれよ」
 「以前に、うちの女性職員と大手新聞3社の若い記者たちと合コンを定期的にやっていたって話したことあるでしょ」
 「そんな話、聞いたね。でも、今はないんだろ?」

 「今はないわよ。ジャナ研で女性職員をあまり採用しなくなっちゃったでしょ。それに私たちも合コンなんて年じゃなくなったこともあるわね」
 「いつごろからなくなったの?」
 「15年くらい前に自然消滅したんじゃないかしら」
 「それなら、俺が若い頃はまだやっていたんだよな」

 「そうよ」
 「でも、俺、そんな会があったなんて聞いたことなかったな…」
 「ジャナ研に出向した記者が窓口だったの。深井さん、仲間にいなかった?」
 「親しいのにはいなかったな」

 「だから、誘われなかったんじゃないの」
 「そうか。吉須(晃人)さんはどうかな?」
 「経済部出身でしょ。あの人も呼ばれなかったかもね。ジャナ研って政治部系なのよ」
 「俺は政治部系だけど、呼ばれなかった。仲間外れだったんだろうな」

 「真面目そうに見られていただけじゃないの」
 「まあ、いいさ。ふたりの話、教えてよ」
 「あのね、ふたりとも合コンの常連だったの…」
 「それで、何かあったの?」
 「どうしようかな」

●専務は銀座のホステスをめぐりヤクザとトラブル

 深井は二合徳利を取り上げた。また、美舞に勧め、先を促した。
 「そんな、もったいつけないでよ」
 「…いいわ。あのね、太井さんは手当たり次第、ちょっかい出すんだけど、駄目なのね」
 「あの人、身長160cmそこそこで、俺と同じようなもんだからね」
 「それもあるかもしれないけど、それより派手派手でしょ。ダサいの。ブランド品で身を固めて、金のブレスレットなんかしているのよ、彼。それなのに根暗で。なんかちぐはぐなのね」

 「そう言われればそうだけど、記者としては若い時から嘱望されていたよ」
 「まあ、そうだとしても、あのダサさは駄目ね。でも、次期社長の本命なんでしょ」
 「ふむ。もててもよさそうに思うけどな」
 「駄目なのよ。ああいうダサイ人」

 太井に対する美舞の手厳しい評価に二の句が継げず、深井はビール瓶を取り、自分のグラスに手酌した。すると、美舞はくすくす笑った。

 「あの人ね、合コンでもてないと思い知ったの。それで、銀座のクラブに出入りするようになったらしいわ。知っている? 事件のこと」
 「事件ってなんだい? 知らないぞ」

 太井が編集局長だった10年ほど前、銀座のクラブのホステスに手を出し、その“ヒモ”だったヤクザに脅され、カネで片付けた“事件”のことだ。同じ政治部出身の深井はその“事件”のことは知っていたが、しらばっくれた。

 「え、知らないの? 銀座のホステスと関係してトラブルになったの。でも、やめましょ」
 「舞ちゃん、言い出して止めるなんておかしいじゃないの」
 「私、深井さんが知っていると思ったからちょっと言ったの。知らないのに、余計なことは言えないわ。私も噂を聞いているだけだから」
 「わかったよ。それなら、日亜の村尾さんはどうなの?」
 深井は太井の“事件”を知っていたし、聞く必要もないので話題を本筋に戻した。

●社長は会長秘書と記者に二股不倫

 「彼は女性にもてたわよ。身長が高くて、ちょっとカッコいい感じだし、優しいのね」
 「でも、彼は記者としては全然使い物にならなかったって話だけど…」
 「記者として駄目でも、今は社長でしょ。うちには今も付き合っている子がいるわよ」
 「へえ、それ本当?」

 深井はグラスのビールを口に付けたが、一瞬、手が止まった。全く耳にしたことのない話だったからだ。一昨日の夜読んだ吉須宛ての“差出人不明の手紙”に添付されていた「別紙・参考資料」にも載っていなかった。

 「誰なの? 若い子?」
 「若いわけないでしょ。合コンで出来たのよ」
 「そんな人がいるの?」
 「彼、もてるって言ったでしょ」

BusinessJournal編集部

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