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朝食ビジネス、秘かにブーム〜終日提供の人気専門店続々、縮小続く外食チェーンも拡充

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 まず、農水省の外郭団体「食の安全・安心財団」が毎年発表している外食産業の市場規模動向を見てみると、1997年の約29兆円をピークに年々減少し、11年には23兆475億円にまで落ち込んでいる。外食産業の市場規模縮小だ。なお、この統計における「外食」には、「国内線機内食等」「宿泊施設」「集団給食(学校・事業所・病院・保育所)」「バー・キャバレー・ナイトクラブ」が含まれており、これらを除いた市場こそメディアがふだん注目している外食産業であり、言い方を変えれば「レジャー産業としての外食」だ。

 その市場規模の推移を見てみると、ピークはやはり1997年で、16兆7500億円。2004年の14兆6500億円まで下降し、08年まで4年連続増加した後、リーマンショック後は再び減少に転じている。11年は前年からマイナス1.9%の14兆5600億円となっている。

 前出の石田氏は、外食産業は新しいマーケットの開拓に迫られていると次のように解説する。

「例えば、居酒屋はもともと中年男性がお酒を飲む場所でした。それを女性だけでも入ることができる店に変えることで、市場規模が拡大しました。しかし、今はまた若い男性のアルコール離れが顕著となっています。このように外食産業は人口動態やトレンドなどで常に変革を迫られますが、レジャー産業としての外食は、少子高齢化の影響で市場全体が縮小しています。今後も劇的な回復は望めません。朝食重視も、そんな中から出てきた戦略です」

 社会全体の“朝型化”も、朝食ビジネスに拍車をかけている。

 伊藤忠商事は今月から、夜8時以降の残業を原則禁止にして、その代わりに午前5~9時の時間外手当の割増率を引き上げる制度を導入した。残業を夜から朝に切り替えようというわけだ。さすがにこういう働き方を制度化している会社は少ないが、省エネ推進の観点から残業削減を打ち出している会社は増えている。そして、日本人の“早起き化”も、じわじわ進んでいる。総務省が5年おきに発表している「社会生活基本調査」によれば、日本人の平均起床時刻は01年が6時42分で、それが06年には6時39分となり、11年には6時37分となった。

 朝食時間帯の充実化には、このほかにもいくつか理由がある。まず、大手チェーン店は駅前や繁華街などで、ほとんどがテナントとして営業しているが、稼働率の問題だ。

「繁華街は一般的に家賃が高いです。営業してもしなくても、24時間分の家賃は取られている。売り上げがなかなか伸びない時代にあっては、朝の時間帯に店を閉めているのはもったいないわけです。経営的にいえば、家賃比率の理想は売り上げに対して7~8%。たとえ客単価が低くても、家賃分くらいは朝の時間帯で稼ごうという考え方ですね。また、大手で上場しているところは、株主に対して売り上げアップのための方策を提示しなければなりません。朝食時間帯のサービス充実化は、その1つでもあります」(石田氏)

 一方で、石田氏は朝食ビジネスが外食産業全体のトレンドとして扱われるのは、やや違和感があるとも語る。外食産業は、ほとんどが中小や個人経営の飲食店であるため、売り上げ全体に占める大手の比率は20%程度だからだ。

「個人の店がどこまで朝食に魅力を感じているかといえば、『採算が合わないよ』というところが多いです。実際、参入してもやめたところもある。例えば、埼玉を中心に居酒屋『いちげん』を展開している一源は、もともと24時間営業なので朝食も提供してみたところ、人件費も出ないのがわかったといいます。朝食をとって会社に行くという生活習慣を考えた場合、朝食ビジネスに甘みがあるのは大商圏のある都市部ですね」(石田氏)

 もう10年以上前になるが、アサヒ飲料は「ワンダ モーニングショット」という赤い缶コーヒーを発売して大ヒットさせ、今では定番となった。「朝専用」というキャッチフレーズのために、時間帯を限定した狭い商品になる恐れもあったが、結果は逆だった。

 朝の持つイメージや「価値」を上手に活用した外食産業の新しい展開は、まだまだ続くのかもしれない。
(文=横山渉/ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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