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「ダイヤモンド」vs.「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(10月第3週)

増税の口実に国債暴落リスクを煽るのは誰か?巨額借金支える財務省とメガバンクの談合

増税の口実に国債暴落リスクを煽るのは誰か?巨額借金支える財務省とメガバンクの談合の画像1「Thinkstock」より
 「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/10月19日号)は「日本国債のタブー」という特集を組んでいる。

 「日本国債が暴落の危機にひんしている。過去、何度も何度も繰り返し指摘されてきた。だがそれは起きなかった。『おおかみ少年』。いつしか国債のリスクを主張する者はそうやゆされるようになった。では、本当に暴落は起きないのだろうか。答えは否である。閉ざされた国債ムラの世界を取材すると、国債の“突然死”につながるリスクがいくつも潜んでいることがわかった。国債市場のタブーをあぶり出し、誰も言えなかった新たなリスクを白日の下にさらす」という内容だ。

 1000兆円を超えるまでに膨れ上がっている日本の借金残高。企業ならば、倒産するしかない状態だ。日本も同様に、国家の信用を象徴する国債がいつ暴落してもおかしくないと指摘され続けてきたが、暴落はしていない。

●メガバンクが国債を下支えする構図

 いったいなぜか。それは日本の3大メガバンク(三菱東京UFJ、みずほ、三井住友)が“国債ムラ”に「国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー、PD)」として参加し、入札を行うことで新規国債発行を支えているからだ。

 PD制度は2004年、毎年のように国債の発行額が増えたために、それまでの合議で決めた価格で金融機関が引き受けるシンジケート団中心の制度から、価格競争で入札する効率的市場制度へと欧米を見習う形で変更されたものだ。PDは効率的市場制度とはいえ、参加者は限定され、財務省・日本銀行の下、安定的で計画的に新規国債が発行されてきているのだ。市場メカニズムによって効率的に動いてきたわけではなく、いわば“談合”が続いてきた世界。日本の国債市場は、財務省・日本銀行・大手銀行の“あうんの呼吸”によって安定を保ってきたといっても過言ではない、という(特集Part1「日本国債という談合市場」)。

 1998年、当時の大蔵省資金運用部が国債の買い入れ停止を表明。市場との対話が不足していたために長期金利が急騰し、運用部ショックを引き起こした。この反省から財務省は、市場との対話を本格化。それまで傍流だった、国債等の管理を担当する理財局に省内きってのエリートを投入するようになり、2000年代からは「国債管理政策」に本腰を入れ始めたのだ(特集Part2「財務省の入札至上主義」)。

 また、3大メガバンクの国債買い支えの原資は、国内の潤沢な個人マネーだ。潤沢な個人マネーが預金などに流れ、銀行や保険会社を通じて、国債に投資されているという構図だ。個人が国債を直接保有する割合は約3%だが、間接保有も含めると5割を超すといわれている。金融機関にとっては国内に安定的で、めぼしい運用先がなく、国債市場で運用し、潤沢なマネーに利息を付けているわけだ。

 さらに、長年続く超低金利のおかげで、国債の利払い費の増加が最低限に抑えられ、借金残高の急増を防いでいた側面や、日本の低い租税負担率、つまり、いざとなれば増税できる点が財政再建の“切り札”として評価されてきた側面もある。今後もアベノミクスは低金利政策と消費増税政策を進めるために、数年内の国債「暴落」リスクは低そうだ。

●増税や社会保障費削減の言い訳として政府が煽る?

 懸念されるとすれば、貯蓄率の低下と経常収支の赤字だ。貯蓄率の低下は預金が減少することで、銀行が国債に振り向ける原資は少なくなる。経常収支は貿易や旅行などによる海外とのお金のやりとりの収支を表すもので、赤字になれば海外からお金を集めざるを得なくなる。国債も海外投資家に引き受けてもらう必要が出てくるのだ。経常収支の赤字は2020年前後から恒常化するとされており、ひとつの目安になるのかもしれない(特集Part3「巷の暴落説ウソホント」)。

 ほかにも、ゆうちょ銀行の上場に伴う国債の益出し、異次元緩和の出口戦略(日銀の国債大量買い入れの見直しで安定消化のバランスが崩れる)、リスク基準の見直し(銀行の自己資本の算出方法・国債のリスクウエートゼロの見直し)などがリスクではないかとダイヤモンド編集部は指摘する(特集Part4「国債が売られる日」)。

 なお、「暴落」リスクを語る際に厄介なのは、ほとんどの論者が「暴落」の定義を共有せずに話している点だ。ハイパーインフレに預金封鎖という戦争直後のような「暴落」を煽る立場もあるが、それは現実的ではない。数%金利上昇のショックの後、日本政府による大幅な財政引き締め・増税路線への転換で景気が冷え込むといった現実的なシナリオや、日本政府が自ら歳出削減できない場合にIMF(国際通貨基金)が進駐軍的に乗り出してくる占領政策といったシナリオもある(なにしろ、日本は米国の国債を大量に保有しているために、日本経済の安定は米国経済の安定に直結しているのだ)。つまり、想定される「暴落」の幅が広すぎるのだ。

 国債「暴落」説で気をつけたいのは、「暴落」を防ぐために増税をしようという財務省の枠組みに無批判に乗ってしまうことだ。また、この枠組みは、「税収を高めるために公共事業を増やそう。支出を減らすために社会保障制度を縮小すべきだ」という政策枠組みにもつながってくる。

 「暴落」が来る、と煽って増税をする口実に使っているのは財務省なのかもしれない。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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