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カジノ解禁、民営or公営どちらにすべきか?問われるデメリットへの手当てと国民議論

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「Thinkstock」より
 日本でのカジノ解禁を推進する国際観光産業振興議員連盟(IR議連、カジノ議連)は、今秋の臨時国会での法案提出を目指している。カジノ構想は、2020年の東京オリンピック開催決定を受け、いよいよ熱を帯びてきているといってよいだろう。

●民営型と公営型、それぞれの視点

 カジノ解禁の最大の論点は、カジノの運営を、民営とするか公営とするかである。カジノ議連が提出を目指している法案は、自治体の申請に基づき国が認定した区域において、国の許可を得た民間業者がカジノの設置および運営を行うという民営型である。

 民営型とすべきという意見は、民間投資をより促進し、民間活力を最大限に活用するという視点に立つ。そして、いかなる事業においてもリスクをとらない成功はあり得ないから(現に、競馬・競輪といった公営賭博は軒並み赤字となっている)、公営型カジノでは赤字となることが見込まれ、それを補填するための税金投入が危惧されるという観点や、公務員の新たな天下り組織の発生を防止するという観点を重視する。

 それに対し、カジノを解禁するとしても、民営は許されず公営でなければならないとする意見が根強く存在する。この意見は、日本においてこれまで例外的に許容されてきた賭博(宝くじ、競馬、競輪、オートレース、競艇など)がいずれも公営であることとの整合性や、取り締まりを強化して治安悪化を防ぐという観点を重視するものである。

●民営カジノが法的に許容されるか

 日本で民営カジノを認めることが許容されるかどうか。この点に関し、法律専門家の立場から結論を述べれば、政治判断によるということになる。その理由は、新たな法律を制定して民営カジノを設けることを禁じる判例も法律も存在しないこと、また、国会は憲法に反する法律を制定してはならないが、民営カジノの解禁の可否は、憲法問題ではないことである。昭和54年2月1日の最高裁判決は、「国、公共団体の行う所論指摘の行為が公認されていることとの対比から、私人が行う賭博行為を処罰の対象とすべきかどうかは立法政策の問題であり、憲法適否の問題ではない」と判示している(昭和53年7月21日の最高裁判決も同じ判断)。

 刑法の賭博罪の例外としてカジノを解禁することの実質的な正当化根拠は、「賭博に関連する公正な社会秩序」が確保できることである。それが確保できるのであれば、民営であっても差し支えない。

 このように、日本において民営カジノを設けることの法的な支障は存在しない。カジノを解禁するとした場合に、民営とするか公営とするかは、基本的には政治判断による問題である。

●善良な風俗や治安の維持など、求められる配慮

 しかし、一方で、カジノを解禁するとしても、善良な風俗や治安の維持などの観点から、公営であることを求める国民の意見や危惧にも十分に配慮すべきである。民営型カジノを解禁しようというのであれば、民営型であっても、「賭博に関連する公正な社会秩序」(カジノ解禁の実質的な正当化根拠)を確保できることをきちんと国民に提示する必要がある。

 すなわち、すでにカジノを導入し、問題を生じさせていない先進国の諸法制の長所を取り入れるとともに、日本の既存の不正対策法制(「犯罪による収益の移転防止に関する法律」など)や各分野の専門家の知見を最大限に活用することによって、カジノを解禁した場合に想定されているデメリットについて、十分に手当てができること、より具体的には、反社会的勢力の徹底排除、犯罪発生の予防、風俗環境の保持、広告宣伝の規制、青少年の健全育成のために必要な措置、依存症対策、多重債務者の発生防止、ゲームの公正性、チップその他の金銭の代替物の適正な利用などが確実に実現できることをわかりやすく説明しなければならない。

 国民の側も、単なる「イメージ」で捉えるのではなく、具体的に想定されている制度内容を緻密に精査する姿勢が求められよう。

●総体として、「メリット」が「デメリット」を上回るか

 この種の立法において、万人の賛成を得ることは、およそ不可能である。経済力が大幅に減退し、国民が窮状にあえぎつつある日本では、新たな雇用を生み出し、経済を活性化させ、財政を改善させるためにも、弊害を除去する担保措置を設けた上で、できることは全て実行すべきである。したがって、カジノ解禁の是非や民営と公営の選択についても国民が熟議した上で、総体としてメリットがデメリットを上回ると国民が判断し、カジノを解禁した結果、万が一、具体的な弊害が生じた場合には、迅速かつ的確なフォローを徹底して行うというアプローチが、妥当であると考える。
(文=山脇康嗣/弁護士)

●山脇康嗣(やまわき・こうじ)
1977年大阪府生まれ。慶應義塾大学大学院法務研究科専門職学位課程修了。東京入国管理局長承認入国在留審査関係申請取次行政書士を経て、弁護士登録。現在、第二東京弁護士会国際委員会副委員長。主要著書として、『詳説 入管法の実務』(新日本法規、単著)、『入管法判例分析』(日本加除出版、単著)、『Q&A外国人をめぐる法律相談』(新日本法規、編集代表)、『事例式民事渉外の実務』(新日本法規、共著)、『こんなときどうする外国人の入国・在留・雇用Q&A』(第一法規、共著)がある。

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