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東電管内への越境売電で色めき立つ電力業界〜新電力、完全自由化加速は視界不良

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東電管内への越境売電で色めき立つ電力業界〜新電力、完全自由化加速は視界不良の画像1「Thinkstock」より
 電力業界が色めき立っている。中部電力と関西電力が、東京電力の縄張りである首都圏で、ついに越境販売を開始したからだ。

 中部電力は10月1日付で、三菱商事の100%子会社で電力小売り事業を手掛けるダイヤモンドパワー(東京・中央区)の株式の80%を取得した。出力10万kWの火力発電所を静岡県富士市の日本製紙富士工場の敷地内に建設し、2016年5月の稼動を目指す。三菱商事、日本製紙、中部電の3社で火力発電所の建設と運営を担う合弁会社を設立し、三菱商事が70%、日本製紙が20%、中部電が10%出資。社長は中部電から派遣する。

 新設の火力発電所で発電した電気の全量を、ダイヤモンドパワーが関東圏の顧客に販売する。同社は2000年の規制緩和で小売り参入が認められた新電力(特定規模電気事業者)で、首都圏の百貨店や工場などを顧客に持つ。同社は10月から東京都の48施設と新たに電気を販売する契約を結び、同社を買収した中部電力にとっては、東電管内への越境販売第1号となる。

 関西電力は子会社を新電力に登録し、14年4月に首都圏での電力小売り事業に参入する。今回登録したのは、商業施設やビルなどの電力設備の設置や保守管理などを行う100%子会社・関電エネルギーソリューション(大阪市)だ。

 2000年代から進む電力自由化にもかかわらず、電力市場では地域独占が続いてきた。ここにきて、中部電力、関西電力が最大の市場である東電管内の首都圏に参入するのは、東京電力福島第1原発事故に背中を押されたからだ。

 原発事故後、国の認可を受けて電気料金を本格値上げしたのは東京電力、関西電力、九州電力、東北電力、四国電力、北海道電力の計6社。特に、関西電力、九州電力、四国電力は事故前の原発比率が4割程度と高く、原発事故が経営を直撃した。

 中部電力は原発依存度が低く、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の長期停止の影響は比較的小さかったが、火力発電の燃料費増加に耐え切れなくなった。家庭向け電気料金を14年4月をめどに値上げすることを正式に表明し、これで本格値上げを表明していないのは、北陸電力、中国電力、沖縄電力の3社だけになる。

 電力料金の値上げの結果、大口顧客の新電力への契約の切り替えが起きた。13年4月に企業向け電気料金を値上げした関西電力は、7月までのわずか3カ月間で1000件以上が新電力に乗り換えた。兵庫県内に地盤を置く、みなと銀行は神戸市の本店と関西電力管内の65店舗で、電力の購入先を新電力のエネット(後述参照)に切り替えた。兵庫県宝塚市も市役所庁舎と市立小・中・特別支援学校の計37校を新電力に変更し、計1370万円の電力コストの削減を見込んでいる。

 12年4月に企業向け料金を値上げした東電管内では、13年3月までの1年間に約7000件の顧客が流出した。大手電力会社の料金値上げの追い風を受けて、新電力には事業拡大のチャンスが巡ってきた。

●追い風が吹く新電力

 新電力とは、自ら発電したり自家発電した企業から買い取った電力を販売する事業者のことだ。大手電力会社10社の送電網を使って、企業や自治体に電力を小売りする。2000年の電力自由化によって工場やオフィスビルへの小売りが認められた。自家発電するメーカーの余った電力を販売したり、発電所が小規模なことから維持管理コストが低いため、大手電力会社より5~15%程度安く提供できる。しかし、新電力はさほど普及しなかった。

 11年3月の東日本大震災による東京電力福島第1原発事故以降、大手電力会社の電気料金の値上げが相次ぎ、新電力への参入は一気に増えた。今年9月時点で102社。東日本大震災の発生前の10年9月の45社から2.2倍に増えた。販売電力量に占めるシェアは6月末時点で4%を超えた。

 最大手はエネット(東京・港区)で、新電力市場の約半分のシェアを握る。NTTの子会社、NTTファシリティーズが40%、東京ガスと大阪ガスがそれぞれ30%出資して00年7月に設立された。資本金は63億円。社名のエネットはenergyとnetwokとを合成させた造語である。池辺裕昭社長はNTTの出身だ。

 自家発電しているメーカーから電気を購入・販売しているほか、小型の火力発電所で発電を行っている。茨城発電所(茨城県神栖市、出力2.1万kW)、舞鶴発電所(京都府舞鶴市、出力3.5万kW)、イースクエア千葉発電所(千葉県袖ヶ浦市、出力9.8万kW)の3つの自社の発電所を持つ。13年3月期決算の売上高は1632億円、営業利益は48億円、当期純利益は35億円だった。

●新電力への流れ減速の懸念も

 政府は16年をめどに、個人がそれぞれの家庭で自由に電力会社を選べるようにする電力小売りの完全自由化を目指している。新電力への切り替えが家庭部門で広がれば、大手電力会社からの顧客流出が加速することになる。

 新電力の最大の課題は供給電力の確保だ。もともとスキ間狙いのため供給量は少ない。東京電力管内では企業や自治体が新電力に乗り換える動きがあったが、必要とされる電力の全量を調達できなかった。こうした中で、中部電は新電力のダイヤモンドパワーを買収した。さらに火力発電所を建設して、供給力を高めることにしたわけだ。

 中部電力と関西電力の“別動隊”といえる、新電力による越境販売が本格的な価格競争の幕開けになるかどうかについては、疑問の声が少なくない。火力発電所の新設は、10年単位の計画になる。新電力の供給力が急に増えることはないからだ。

BusinessJournal編集部

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