NEW

暴力団融資みずほ批判に隠れる問題点〜オリコの責任、違法口座の蔓延、反社勢力の基準

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

みずほ銀行本店(「Wikipedia」より/Yuukokusya)
 みずほフィナンシャルグループ(FG)傘下のみずほ銀行が、同FGの信販大手・オリエントコーポレーション(オリコ)を通じた自動車ローンで、反社会的勢力への融資を放置していた問題で、当初「問題融資は経営陣には報告されていなかった」と虚偽の説明を行ったことや、記者会見などによる事実関係の開示が遅れたことなどで社会的な批判にさらされている。

 10月28日、みずほ銀行は金融庁へ業務改善計画を提出。今後はこの計画を精査する同庁の対応が焦点となるが、今回の問題の背景には、みずほ銀行とオリコの特異な関係がある。

 今回問題となった融資は、自動車購入希望者が自動車ディーラーを通じてローンを申し込み、そのローン審査をオリコが行い、ローンが実行されたのちで、その資金をみずほ銀行がオリコに融資するというかたちになっている。通常、オリコのような信販会社が扱う自動車ローンは、信販会社の資金により賄われ、銀行が融資をする形態は採らない。つまり、オリコとみずほ銀行が提携したこのローンそのものが、オリコと同行の特殊な関係の上に成り立った特異なローンなのだ。

 しかし、この融資の本質的な問題点は、別のところにある。今回のローンでは、オリコの審査では発見できなかった反社会的勢力へのローンの存在が、みずほ銀行の審査では明らかになっている。つまり、反社会的勢力に対する情報力が違うのだ。みずほ銀行は「銀行界でトップの反社会的勢力のリストを備えている」(金融庁関係者)と言われる。

 一方で、銀行にとっては、「反社会的勢力のリストを充実すればするほど審査が厳しくなり、顧客の数が減ることになる」(みずほ銀行関係者)という利益相反が起きる。みずほ銀行は、従来から金融庁に対して、「反社会的勢力に対する基準を銀行界で統一してほしいとの要望を行っていた」(同)という。

●ローン実行主体・オリコの責任と姿勢

 今回の事件では、みずほ銀行は「反社会的勢力を発見したにもかかわらず、その対処を怠った」として社会的批判にさらされた。しかし、反社会的勢力を発見できなかったオリコに対する批判はほとんどない。それどころか、オリコは取引先に対して、「一部マスコミ等において、弊社も加担して暴力団等の特定組織に資金を供給したかのような記事が見られますが、全くそのような事実はなく、弊社としては従来から十分な対応を行っております」とした上で、「本件は、銀行における管理態勢、法令遵守態勢に関して重大な問題点が認められたものとして業務改善命令が出されたものであり、弊社の業務内容や当該提携ローンの仕組みを問題とされたものではありません」と説明している。

 だが、問題ローンの申し込みを見つけられずに審査を通過させ、ローンを実行したオリコに責任はなかったと言えるのだろうか。

 さらに、自動車購入者が借り入れたローンのオリコへの返済が行われる銀行口座は、実はみずほ銀行にはほとんどない。ローン返済は銀行口座からの引き落としによって行われるため、みずほ銀行以外の金融機関に、反社会的勢力の口座が存在していることになる。

 銀行の規約では、反社会的勢力は口座が開設できないことになっているが、オリコから借り入れを行った反社会的勢力の返済口座は、現実には存在している。本来、存在してはならない口座が金融機関にあること自体は、まったく問題視されていない。事実、複数の地銀や信金では、この問題が発覚後に行われた自己調査により、反社会的勢力のオリコへのローン返済口座が確認されている。

 事態を重く見た金融庁は、あわてて金融機関に対して反社会的勢力との取引有無について一斉調査を行うよう要請している。しかし、反社会的勢力に対する情報力が不足していれば、当然反社会的勢力の口座を発見できない可能性は大きい。

 そもそもの「反社会的勢力の範疇とはどのようなものなのか」が定かでない以上、その基準は金融機関ごとに違っており、「厳しく規定している金融機関は処罰され、緩やかな金融機関は見逃される」という本末転倒の事態を招くことになる。

 みずほ銀行は今後、オリコと反社会的勢力についての情報を共有することで再発を防止するという。だが、みずほ銀行とオリコで反社会的勢力との取引が防げたとしても、これでは他の信販会社や金融機関にとっては効果がない。

「反社会的勢力」について金融当局が明確な基準を示し、その情報を金融機関、信販会社、クレジットカード会社、貸金業者などが共有しなければ、今回の問題はなくなることはないだろう。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)