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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第50回

若気の過ちで若いホステスを孕ませた巨大新聞元社長、部下を使ってカネで解決?

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 「そういわれれば、そうですね。これ以上、話しても無駄です。もうあまり時間もないんで、もう1つ聞いておきたいことがあります」
 「なんだい?」
 「金曜日に話題に上がった、資料室にくるという伊苅(直丈)のことです。彼が握っている富島(鉄哉)さんのスキャンダル、教えてくださいよ」
 「なんだ、その話か。太郎丸さんとの約束は午後6時だったよな」
 「20分くらいありますよ。五稜ビルまで5分もかかりませんから」

 興味津々の深井が催促した。含み笑いを浮かべたままの吉須は、またタバコをくわえ、火を着けた。

●元社長のスキャンダル

 「君も、もう1本吸っておいたほうがいいぞ。これから行く『吉祥』って料理屋、タバコ吸えないよ。じゃあ、話すとするか」
 「太郎丸さんは僕と吉須さんを一緒に呼んでいます。きっと、大都、日亜両社に関係している話ですよ。情報を共有しておいたほうがいいです」

 深井もタバコに火を着けたのを見て、吉須はスキャンダルの概要を話し始めた。

 昭和50年(1975)年入社の伊苅が、支局から日亜政治部に上がってきたのは55年春だった。同じ時、3年間のジャナ研出向から政治部に戻ったのが村尾だった。配属先は2人とも官邸クラブだった。ジャナ研出向者は出向前に在籍したクラブに戻るのが原則だった。支局から上がってくる政治記者も、官邸クラブで修業させる慣行があった。そんなことで、2人は同じ官邸クラブで席を同じくすることになったのだが、類は友を呼ぶのだ。

 伊苅も村尾同様に記者としての能力は中レベル以下で、2人はすぐに親しくなった。1カ月もしないうちに、仕事のひと段落する深夜に飲み歩くようになり、そこには、村尾の親分で、経済部デスクの富島も頻繁に合流した。

 当時、富島は六本木にあるスナックの25歳前後のホステスに入れ揚げ、通い詰めていた。当然、村尾と伊苅も頻繁に出入りするようになったのだが、しばらくして“事件”が起きた。ホステスが富島の子供を孕んだ、と騒ぎ出したのだ。上昇志向の強い富島は狼狽した。今の日亜なら、出世の妨げになるようなことはないが、ジャーナリズム精神の横溢した連中が闊歩していた当時は致命的だった。

 富島は2人に対し、そのホステスに子供を堕ろすように説得しろと命じた。2人は何度もホステスと交渉し、片がついたようだ。

 ここまで説明すると、吉須はグラスを取り、残ったビールを飲み干した。
 「カネを出したんですか?」
 「そこまでは知らないけど、多分、出したんじゃないか。でも、若い子だから大したカネじゃないと思うな。決着したら3人ともそのスナックに行かなくなったらしいからね」
 「伊苅は村尾さんの女のことも知っているんですか?」
 「もちろんさ。村尾が距離を置くようになったのは10年ほど前からで、その前はズブズブの関係だった。役員の芽が出てきて、社内で総スカンの伊苅と親しくしているのはまずいと思ったんだな。今、伊刈ははしごを外されたと思っているよ」

 「でも、秘密を握っているから無碍にできないというわけですね」
 「そういうこと。おい、深井君、そろそろ、出ようや。遅れちゃまずいだろ」
 吉須に促されて、深井も席を立った。
(文=大塚将司/作家・経済評論家)

【ご参考:第1部のあらすじ】業界第1位の大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に合併を持ちかけ、基本合意した。二人は両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)、小山成雄(日亜)に詳細を詰めさせ、発表する段取りを決めた。1年後には断トツの部数トップの巨大新聞社が誕生するのは間違いないところになったわけだが、唯一の気がかり材料は“業界のドン”、太郎丸嘉一が君臨する業界第2位の国民新聞社の反撃だった。合併を目論む大都、日亜両社はジャーナリズムとは無縁な、堕落しきった連中が経営も編集も牛耳っており、御多分に洩れず、松野、村尾、北川、小山の4人ともスキャンダルを抱え、脛に傷持つ身だった。その秘密に一抹の不安があった。

※本文はフィクションです。実在する人物名、社名とは一切関係ありません。

※次回は、来週11月8日(金)掲載予定です。

BusinessJournal編集部

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