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みずほ銀、負の遺産が旧第一勧銀の“ごみ捨て場”企業破綻で露呈〜不良債権の受け皿

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みずほ銀、負の遺産が旧第一勧銀の“ごみ捨て場”企業破綻で露呈〜不良債権の受け皿の画像1みずほ銀行本店(「Wikipedia」より/Yuukokusya)
 東証1部上場の土木・産業資材メーカー、前田工繊(福井県坂井市)の株価が上昇している。9月10日に1383円と上場来の高値をつけた。1月7日の409円の3.4倍だ。M&A(合併・買収)効果を期待されて買いが入った。

 会社更生手続き中の小野グループの中核会社・ワシマイヤー(福井市)と軽金属加工メーカー・ワシ興産(東京都)は7月末、東京地裁に前田工繊を資金スポンサーとする会社更生計画案を提出し、9月に認可された。これを受け、スポンサーの前田工繊は11月1日を目処に、ワシマイヤーに26億1500万円、ワシ興産に30億1500万円を出資して子会社にする。

 両社は11月30日末に金銭弁済を行い、その後1~2年で保有資産を処分して残りの負債を弁済する。担保権を有する債権や税金は全額支払う。その他の債権は100万円までは全額、100万円を超える部分はワシマイヤーが15%、ワシ興産が5.5%を支払う予定だ。資金現金化後の弁済率はワシマイヤーが債権額の5.5%、ワシ興産が5.0%相当となる見通しだ。

 小野グループの中核3社、ワシマイヤー、ワシ興産、眼鏡レンズメーカーのアサヒオプティカル(福井市)は12年10月26日、メインバンクの福井銀行から会社更生手続きを申し立てられた。10年にわたる粉飾決算が発覚したのが原因だ。3社の負債総額の合計は490億円。

 3社の持ち株会社・小野ホールディングス(東京都)は13年1月、東京地裁に会社更生手続きを申し立てた。負債総額は67億円で、オーナーの小野光太郎・前社長は3月、長男の稔・前副社長は2月、東京地裁にそれぞれ自己破産を申し立てた。アサヒオプティカルは三菱商事系の投資顧問会社、きずなキャピタルパートナーズと三菱商事が出資する中国の投資ファンド、中国・上海のレンズメーカーがスポンサーになった。

 ワシマイヤーはBBSホイールを生産している自動車ホイールメーカー。BBSホイールはメッシュタイプのデザインで知られ、フェラーリ、ポルシェ、ベントレー、アストンマーチン、フォードなどで採用され、数多くのF1チームに提供されている。前田工繊が有名な自動車ホイールメーカーを子会社にするとの期待感から株価は上昇した。

●大幅な業績アップが期待される前田工繊

 この前田工繊とは、一体どのような会社なのか?

 創業者の前田征利社長(68)は大阪大学基礎工学部卒業後に帝人を経て、70年家業の前田機業場に入社した。衣料メーカーから糸を与えられ、指定された通りに織物をつくり上げる「機屋(はたや)」と呼ばれる仕事である。だが、賃加工の仕事が「嫌で嫌で仕方がなかった」前田氏は27歳の時に独立した。

 72年11月、前田工繊を設立。繊維を使った土木資材の製造を始めた。地震や水害が起きると山間部では地すべりや土砂崩れ、道路の寸断といったさまざまな被害が発生する。そうした被災地の復旧工事で盛土や法面の補強用に使われるのが、同社の繊維を原料とした土木資材。福井県の伝統的な地場産業である繊維産業の技術を生かした製品群だ。2007年8月に東証2部上場を果たし、12年10月には東証1部に指定替えになった。

 13年9月期の連結決算の売上高は前年同期比17%増の193億円、営業利益は同51%増の21億円、当期純利益は同11%増の13億円と増収増益を見込んでいる。来期は子会社になったワシマイヤー、ワシ興産の売り上げが寄与するため、大幅な業績アップが期待されている。

 ワシマイヤー、ワシ興産の粉飾を10年間見逃してきた福井銀行は、13年3月期の単体決算で3社に対する貸出金償却分173億円を損金として計上。その結果、連結決算の純損益は最終損益段階で87億円の赤字となった。赤字決算は4年ぶりだ。

●小野グループと旧第一勧銀の腐れ縁

 小野グループを率いる小野光太郎氏(81)は、旧第一勧業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)の不良債権の受け皿役として知られる存在だった。

 80年代まで小野グループはアルミの鍛造を手掛ける福井県の中堅メーカーにすぎなかった。大化けするのはバブルが崩壊した92年からだ。M&A(合併・買収)を次々と重ねて、グループを拡大していった。イトマン事件の中心人物・許永中が買い占めていた相武カントリー倶楽部が、その皮切り。買い占めにあった住宅建材メーカーの寿工業や、プレハブ住宅メーカーのニッセキハウス工業、長崎屋系コンビニエンスチェーンのサンクスアンドアソシエイツ、複写機向け小型送風機メーカーのローヤル電機を傘下に収めていった。いずれも旧第一勧銀が仲介した案件である。

 バブル崩壊後の90年代、金融機関はいずれも不良債権処理に苦慮していた。親密企業に資金を貸し付け、不良企業を買収してもらうことで、不良債権を正常債権に転化する手法が横行した。小野グループは不良企業を抱いてもらうのに申し分ない規模だった。小野グループには多くの旧第一勧銀OBが天下りしていた。「一勧の不良企業のゴミ捨て場」(旧第一勧銀関係者)の役割を担うことで、グループは拡大していった。

 小野氏は不良企業をただで引き受けたわけではない。当然、十分な見返りが用意されていた。コンビニエンスストアのサンクスの転売がその典型例だ。サンクスは衣料スーパー長崎屋のコンビニ子会社。94年2月、経営危機に陥っていた長崎屋の再建策の一環として、メインバンクの第一勧銀はサンクスを小野グループに108億円で売却した。そして、その4年後の98年10月、小野グループはサンクスをサークルケイ・ジャパンに370億円で転売した。現在のコンビニ4位、サークルKサンクスである。小野グループはコンビニの転売で262億円の差益を手にした。

 小野グループと旧第一勧銀の蜜月は、02年に終わりを告げる。02年4月、旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行の3行が統合して、みずほホールディングス(現みずほフィナンシャルグループ)が誕生した。みずほグループの発足に備え、旧第一勧銀は飛ばしていた不良債権を処理することになった。小野グループに塩漬けにしていたニッセキハウスと寿工業の民事再生法を申し立てた。この時の不良資産を、小野グループは今日まで引きずってきたのである。

BusinessJournal編集部

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