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『不格好経営 チームDeNAの挑戦』著者・南場智子氏インタビュー

DeNA、急成長の秘訣は“不格好経営”?優秀な人材を育てる非常識経営〜創業者に聞く

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南場 とても感慨深いものがありました。赤字というのは資源を食いつぶしている状態ですから、世の中の役に立っていない証拠です。やはりすごく肩身が狭かった。ただ、黒字になったとはいえ、オークションでも2番手、ショッピングでも2位グループです。やはり何かでナンバーワンになりたいという思いはありましたね。それで、1番を目指す勝負を挑むための新規事業の模索が始まったのです。

–それが、04年に開始した携帯向けオークションサイト・モバオクですね。

南場 それまでは、出品するにはまず撮影して、それをパソコンに取り込んでという形で、とても手間がかかりました。でも、モバオクは写メで撮って、2~3ステップですぐに出品できます。すごく使いやすいです。

 実はモバオクは以前から検討はしていたのですが、導入に踏み切れなかった理由は、従量課金制で高額になってしまうパケット料金にありました。しかし、このころパケット定額制が普及し始めたことで、サービス開発を急いだのです。

「パケット定額制の普及という時代の波をとらえ、タイミングに合ったものを一番使いやすい形で出す。これを実現してナンバーワンになったものだけが、拡大の良循環を手にする」

 モバオクの成功は、この真理を我々に刷り込みました。さらに、この成功は単にインターネットサービスの一端末としてモバイルを位置づけるのではなく、モバイルに特化したサービスの重要性を認識させ、同時に新しい巨大市場の可能性も示してくれたのです。

●Mobageの誕生

–そして、06年に始まった携帯電話専用ゲームサイト・モバゲータウン(現Mobage)で成長はさらに加速するわけですね。

南場 もともと、モバゲーはゲームサイトというよりは、モバイルSNSです。そこにカジュアルゲームがついているだけであり、SNSとカジュアルゲームのコンビネーションといえます。実は、「ネットオークション」「ショッピング」に続く事業として、「ゲームサイト」を立ち上げようという検討は、その前年の05年の夏に始まっていました。そして、その検討チームから「これならいける」という話があったのは秋になってからでした。やはり使いやすさ、楽しさが最大の成功要因だと思っています。私自身、ヘビーユーザーです。

–そうした成長軌道に乗り始めた最中の07年、総務省が携帯電話会社に対して「携帯フィルタリング」を義務化を要請したことで、一転逆風に見舞われることになりましたね。大きな危機だったと思いますが、そこはどのように乗り切られたのですか?

南場 とにかくできることをすべてやりました。経営トップの意思として、「利益よりもユーザーの保護を最優先する」という指示を明確にし、ユーザーに対する啓発活動、悪いユーザーをはじき出す仕組み、やってはいけないコミュニケーションが行われないような仕組み、また行われたらそれを排除できるような仕組み、そして行われる前に阻止できるような仕組みなど、被害者を少なくするためのありとあらゆることを全部やってきました。

 具体的には、啓発活動として小学校、中学校に出かけていき、安全な携帯電話の使い方について紹介しています。また、東京と新潟にカスタマーサポートセンターを開設し、24時間365日、総勢400名の体制でサイトパトロールを行っています。そして、社長を委員長とする「健全コミュニティ促進委員会」を発足させ、具体的な事例を徹底的に分析しながら、対策を講じています。

 その結果、事故件数はゼロに近い数になったのですが、でもまだゼロではありません。ゼロになるまで手綱を緩めずに取り組んでいきます。

–翌年の08年初頭には、売上拡大がピタッと止まるという事態に見舞われますが、その理由はなんだったのでしょうか?

南場 一言で言えば、モバゲーの収益源であるアバターが飽きられたということです。あの時は苦しかったです。それから2年弱にわたって苦しみました。

 アバターとは、サイトの中で自分を表すキャラクターのことです。いろいろな素材を組み合わせて着飾り、自分とは似ても似つかぬような美男美女をつくり上げてしまう人も多いのです。そして、そういう人は頻繁に着替えるヘビーユーザーでもあるわけです。アバター関連の売り上げが拡大を続けている中で、経営陣全員が、売り上げがヘビーユーザーに大きく偏り、盤石な構造とはいえないと認識していました。そして、その認識が現実のものになってしまったわけです。

●ゲームの素人が生んだ怪物ゲーム

–そういう中で、モバゲー事業の再起を懸けて投入されたのが、『怪盗ロワイヤル』ですね。

南場 当時はアバターの3D化など、さまざまな対策を打ちましたが、効果が出ませんでした。そこで起死回生を懸け全部で5つの新しいSNSゲームを投入し、中でも『怪盗ロワイヤル』が大ヒットしました。このゲームは本当に面白い。私が言うのも変ですが、これより面白いゲームはいまだにありません。歴史に残るゲームの一つだと思っています。

–『怪盗ロワイヤル』の開発プロジェクトリーダーは、それまでほとんどゲームをやったことがなく、しかも直前に担当していたプロジェクトが頓挫した方が務められたそうですが、どうしてそのような社員に社運を懸けたプロジェクトを任せたのですか?

南場 彼はその前に『モバまち』という口コミで成り立つタウン情報サービスを立ち上げたのですが、思ったほどリピート率が上がらず、結局打ち切りになってしまったのです。でも、わが社では失敗が減点になることはありません。それどころか、彼の評価はさらに上がったのです。大事なのは、プロセスです。『モバまち』での彼の作戦の練り方、実行の徹底ぶりはどれも高いレベルだと評価されたからこそ、社運を懸けたかけたプロジェクトに抜擢されたわけです。

–プロジェクトなどを任せる時などは、これまでの実績や経験、ノウハウ、そういうもので判断するのが一般的ですよね。

BusinessJournal編集部

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