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楽天、東証1部上場の衝撃〜どんなメリット?新興市場厚み減の懸念、2市場統合へ発展も

文=和島英樹
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楽天、東証1部上場の衝撃〜どんなメリット?新興市場厚み減の懸念、2市場統合へ発展もの画像1楽天本社(「Wikipedia」より)
 11月25日、東京証券取引所はジャスダック市場に上場している楽天(証券コード:4755)株式を、12月3日から東証1部に指定替えすると発表した。これを受け26日、楽天株は人気となった。

“楽天東証1部市場に指定替え”の報は、いろいろな意味で注目を集めている。なぜなら同社株の活性化につながるとの見方がある半面、時価総額が巨大な同社株式が新興市場から抜ける影響も無視できないからだ。

 楽天は仮想商店街「楽天市場」を運営するほか、傘下にネット証券大手の楽天証券、楽天銀行、旅行予約サイトの楽天トラベルなどを擁している。電子書籍事業社「kobo」(コボ)にも注力している。同社は海外展開をにらんで今期から国際会計基準を導入、合わせて知名度上昇のために上場の準備を進めてきたと見られている。

 また、三木谷浩史社長がオーナーを務めるプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスは今年、創設9年目にして初の日本一に輝いた。開幕から24連勝の田中将大投手がパ・リーグの最優秀選手(MVP)に、また、則本昴大投手が最優秀新人賞に選出されるなど球界の話題を独占した。12月に楽天が東証1部に上場することで、年末の証券界でも大きく注目されることになった。

 東証1部に上場する意義は大きい。大手の機関投資家には、ジャスダックやマザーズなどの新興企業市場に投資できないような内部規定を設けているケースが多い。こうした大口投資家からの組入れが期待できる。また、TOPIX(東証株価指数)の値動きに連動する仕組みのファンドや、指数先物と組み合わせた裁定取引のポジションにも買い需要が生まれる。大手調査機関の試算によると、指数関連の買いニーズは約780億円に達するとされている。楽天ではさらにADR(米国預託証券)を発行できる仕組みも明らかにした。同社株式は近い将来、米国でも流通する見通しとなっている。

 個人投資家向けには、株主優待制度を導入する。楽天市場で利用できるクーポン(800円相当)や楽天イーグルス主催の公式戦への招待(抽選)・優待など合計5項目となっている。配当政策では、2013年12月期末に東証1部上場および楽天イーグルス優勝を記念して、記念配当1円(普通配当と合わせ4円)を実施する。

ジャスダック市場への影響

 一方、楽天がジャスダック市場から抜けることによる問題点を指摘する向きもある。楽天の時価総額は26日現在で約2兆円と、同市場内でダントツの首位。1部市場でも50位前後の位置に相当する。

 ジャスダックの時価総額2位はゲーム「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)で有名なガンホー・オンライン・エンターテイメントの約7500億円、3位は日本マクドナルドホールディングスの3000億円台で、以下はすべて2000億円未満という状態だ。

「新興市場に投資する投資信託などは、流動性のある銘柄に投資することが難しくなる」(投信会社)などとの声も聞かれる。市場の厚みが激減し、相場の変動が大きくなる可能性もある。ただ、「13年は年間で60社弱のIPO(株式の新規公開)があるため、新陳代謝が進む」(中堅証券)との前向きな見方もある。

 7月に東証と大証の現物市場が統合したことで、東証ではジャスダックとマザーズという2つの新興市場を抱えている。当面は両市場を並行して運営していく方針だ。しかし、楽天という巨大な新興銘柄が流出する影響は大きく、2つの新興市場の統合案が前進するきっかけになるかもしれない。
(文=和島英樹)

和島英樹/経済ジャーナリスト

和島英樹/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト。現みずほ証券、株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。解説委員などを歴任。20年6月に独立。近著に「1万円からはじめる勝ち組銘柄投資」(かんき出版)。

Twitter:@waji07

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