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芸能人と整形の倫理学【1】

なぜ、整形すると叩かれる? 芸能人と美容整形 美の追求の倫理学

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「視点をクリアにする情報誌 月刊サイゾー」の記事がウェブ上で読める「サイゾーpremium」の記事から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。

――芸能人の告白や疑惑、大手美容外科の宣伝を通して、我々の日常でもその存在を認識する機会が増えてきた"美容整形"。それを「外見を改良し、美しくする手術」ととらえる向きもいるだろうが、その裏側には、生命倫理や人種差別に関わる問題などもはらんでいる。本特集では、「なぜ芸能人の美容整形が"叩かれる"のか」「美を追求するために、親から授かった身体にメスを入れることは罪なのか」ということを根底に、美容整形を倫理的にとらえ、整形大国韓国の実情、芸能プロ関係者の本音を浮き彫りにしたい。

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バラエティ番組で整形を告白した森下悠里。

 少しでも顔が変わった芸能人は"整形か!? "とネットで騒がれる昨今。こうした”疑惑”が囁かれる芸能人は沈黙を貫くことがほとんどだが、一方で、「メスを使わない手術はしたことがある」(グラビアアイドル・森下悠里)、「(鼻を指さして)イジりました」(モデル・小森純)など、ごく一部、その事実を認める発言をする芸能人もいるにはいる。また、新旧問わずメディアでは、大手美容外科の広告が増加。いつからか「プチ整形」という言葉が社会に広まり、美容整形は一般の人にも身近な話題となりつつある。

 しかし、今現在も「芸能人と整形」をはじめとした美容整形の話題は、基本的にタブー視されることが多い。また、美容整形という文化の背後には、カネと権力といった芸能界ではおなじみの話題のほか、一般には報じられない業界団体の対立や、生命倫理、人種差別に関わる問題までもが横たわっているのだ。

 まず本稿では、美容整形の歴史を遡りながら、それらの問題について考察してみよう。

 美容整形の起源については諸説あるが、『美容整形と〈普通のわたし〉』(青弓社)の著者であり、松蔭大学の川添裕子教授によると、「外見への医療的介入は、紀元前1500年前のインドではすでに行われていた」という。

「その頃のインドでは、切断された鼻を再建する手術が行われていたようです。その背景として、鼻をそぎ落とす刑罰の存在が指摘されています。このインド式の造鼻術は、形を変えながら現代に伝わっていると考えられています」(川添氏)

 なおその刑罰は、姦通の罪を犯した女性などを対象に行われていた。アメリカ美容整形ビジネスの光と影を追った書籍『ビューティ・ジャンキー』(アレックス・クチンスキー著・バジリコ)でも「顔を傷つけるのは明らかに社会による拷問だ。罪人に、ひと目見ただけでその人の罪がわかるような顔で生涯を送らせたのである」(同書P92)との言及がある。

 そして美容整形という概念が明確になったのは15~16世紀のヨーロッパで、鼻の再建手術などが行われていたが、その当時のヨーロッパでは、不完全な鼻は特別な意味を持っていた。先の『ビューティ・ジャンキー』によると、欠損した鼻や病気などで変形した鼻は、売春婦や敗者の印であるとされ、当時の戦中、戦死した兵士は死してなお、鼻を切り落とされ屈辱を与えられたという。また、「鼻柱が陥没した鞍鼻といわれる鼻は、梅毒によって軟骨が侵された結果であり、こういう鼻は不健康で堕落した、社会の嫌われ者という立場にあることを示していた」(同書P93~94)のだ。

 逆にいえば、整形で鼻の再建手術を行うことは、その人の社会性を取り戻す意味合いもあった整形手術は、その歴史の始まりから社会的に再認知されるという行為でもあったのだ。

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