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吉田潮「だからテレビはやめられない」(12月15日)

相棒、刑事のまなざし…最近イマイチな刑事ドラマ、ときにグッと面白くさせる要素とは?

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『相棒 season12』公式サイト(「テレビ朝日HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。


 私はテレビの刑事ドラマ全盛期に育った。『Gメン 75』(TBS系/1975〜82年放送)で女性の全裸死体にドキドキし、『太陽にほえろ!』(日本テレビ系/72〜86年放送)の刑事殉職シーンで涙を流し、『西部警察』(テレビ朝日系/79〜84年放送)の無茶苦茶な犯人捕縛シーンに笑ってきた世代である。が、最近の刑事ドラマで心揺さぶられることはあまりない。一応さらっとは横目で観るけれど、お決まりのパターンに飽きてしまう。特に人気シリーズともなれば、2倍速で流して終わり。

 そんな刑事ドラマを観る時に注目しているのは、犯人役・加害者役である。ここにうまい役者が投入されていれば、マンネリドラマもパッとしない作品もぴりっと引き締まる。

 先日、久しぶりに『相棒 SEASON12』(テレビ朝日系)を観た。最初の頃(寺脇康文が出演していた頃ね)は面白いなと思っていたが、だんだん疎遠になっていた。妙に芝居くさかったり、どっかのパクリみたいな話だったりで、色褪せてきたからだ。映画版をやり始めてから俄然つまらなくなったような気もする。が、ちょっと前に岩下志麻が出ると新聞のラテ欄にあったもので、引き寄せられるように観てみた。

 岩下は演技力ではなく迫力の人なのだと改めて痛感。女優ライト(白く紗がかかるような、飛ばし気味のヤツ)に守られて、美しさは保たれていたものの、違和感が大きい。「あれ、この人こんなに演技が下手くそだったかしら?」と驚いた。芝居くさい、舞台チックな回だったので、これはこれでいいのかもしれないけれど。『相棒』って芝居じみた商業演劇風の回(お年寄りが好きそう)と、リアリティと緻密な計算でうまいことまとまっている回(トリックオタクが好きそう)との完成度の差が激しい。岩下の出演回は前者だった。それでもラテ欄に岩下志麻とあれば、釘付けになって観てしまう自分がいる。

 椎名桔平主演の『刑事のまなざし』(TBS系)も全体的にはなんだかぬるい作りではあるのだが、星野真里や奥貫薫が登場すると、ぐっと力作に見えるから不思議である。星野や奥貫は、被害者の悲哀も加害者の悪意もリアルに演じ切る。内に秘めた殺意が似合うし、芸達者だなぁといつも感心させられる。

●刑事役よりも犯人役に重責?

 12月9日に放送された、木村佳乃主演の2時間ドラマ『SRO~警視庁広域捜査専任特別調査室~』(同)も、どっちかといえば地味でパッとしない作品だった。が、われらがハンサムバカのキャプテン・田辺誠一や地味エロ女部・部長の安藤玉恵が出るというので、観ないワケにはいかない。

 猟奇的な事件を追う黒い長い髪の女刑事というところは、竹内結子主演の『ストロベリーナイト』(フジテレビ系)のほうが断然面白かったし、仕掛けも構造もセンスもハイレベルである。が、今回の犯人役・温水洋一と戸田恵子のシリアルキラー夫婦というのが新鮮だった。戸田の美声は惚れ惚れするくらい、人殺しにぴったり。情に訴え、涙を流して嗚咽した直後に、がらりと表情を変えてシリアルキラーに変貌する。崩壊した精神の持ち主として、戸田は大役を果たしたと思った。

 あれ? なんだかんだ言って、意外と刑事モノを観てたわ。正統派の刑事モノって微妙にツッコミにくいところがあって、本連載でもスルーしてきたのだけれど。刑事役よりもむしろ犯人役のほうが重責。刑事ドラマには、今後も犯罪者心理のリアルな描写を要求していこうと思う。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。