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オトコたちのウットリワールド”をぶった斬り!「男性誌」のあぜ道 第13回

“幸福追求”アイテムとしての本道を行く男性誌『UOMO』~えも言われぬザラっと感

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UOMO(集英社/1月号)
 お寒うございます。漆原直行です。クリスマス前日、雨が夜ふけすぎに雪へとかわったところで、私の生活にはなんの影響もありません。

 年の瀬を迎えまして、世間的にはクリスマスだ、忘年会だと浮き足立っております。いちおう冬のボーナス時期でもありますが、もらえる人、もらえない人の違いもありますし、金額の多寡も厳然と存在していますから、フトコロ具合も人それぞれ……と、少々世知辛い前振りから入ってしまいましたが、2014年1月号の男性誌を見回しますと、コートや時計、靴などの話題にクリスマスネタも絡めたりして、巧みにお買い物欲を刺激する特集が組まれております。フトコロに余裕のある読者は、これらを参考にショッピングへと出かけたりするのでしょうか。たいへん結構ですね。

 一方、私はそんな余裕もございませんので、素敵なアイテムを所有した自分を妄想しつつ、大きな憧れと小さな敗北感を募らせながらページを繰り、牛丼をかき込むくらいのことしかできません。100万円越えの高級時計のレビューを読みながら、「ほへぇ~」と締まりのない独り言を漏らす。そんな年末を過ごしております。

 さて、今回注目したいのはこちらの特集です。

『UOMO』(集英社/1月号)
そばに置いておきたい、服以外のいいモノ。
「幸せになれる買い物」

 本連載の第8回でも軽く触れたのですが、UOMO(ウオモ)は特集タイトルの付け方が非常にうまい。そして、個人的にとても琴線に触れるタイトルが多いので、毎号わりと楽しみにしています。

 さらに同誌は、少ないモノクロページ枠の中ではありますが、週刊誌やビジネス誌っぽいニオイのする、文章中心の特集を掲載している数少ない男性誌でもあります。ちなみに今号では「誰だって失敗するときがくる! だから知っておきたい。謝罪の極意」という企画が掲載されておりまして、なかなか面白く読ませていただいた次第。ただオシャレなだけじゃない、ある種の下世話さやケレン味を感じさせる読み物企画をちゃんとつくり続けるあたりからも、編集・執筆陣の“雑誌愛”を感じてしまうのです。箸休めにも手を抜かない清々しさ、とでも申しましょうか。

●人類普遍のテーマ“幸福追求”について考える

 視点を戻しましょう。「幸せになれる買い物」特集ですが、大きく3部構成になっています。

Part 1 誰もが幸せな気持ちになれる エルメス、魔法の贈り物
Part 2 8名の識者と14の質問が生む、ここだけの名品図鑑。あの人が選んだ服以外の、コレ。
Part 3 アンケート&リサーチで「本当に喜ばれるアイテム」だけを厳選! 最愛の女性に贈る「魂のギフト」。

 なかでも「Part 2」は、とても秀逸でした。栗野宏文氏(ユナイテッドアローズ クリエイティブディレクション担当上級顧問)、祐真朋樹氏(ファッション・ディレクター)、作原文子氏(インテリアスタイリスト)、谷尻誠氏(建築家)、佐藤ナオキ氏(デザインオフィスnendo代表)、NIGO氏(クリエイティブ・ディレクター)、嶋浩一郎氏(博報堂ケトル共同CEO)、水野学氏(グッド デザイン カンパニー代表)と、そうそうたるメンツが並び、彼らがオススメする名品を紹介してくれるのです。それも「仕事に集中できるデスクライト」「料理意欲が湧くキッチン家電」「親しき友への出産祝い」など、テーマ別に商品が挙げられるので、とてもわかりやすい。それぞれに推薦者の寸評も添えられており、各人の個性が滲み出ているあたりも興味深いです。ページレイアウトも見やすく、素直に「いいな、コレ」と思わせてくれる企画でした。

 このように、内容的には端正で、意図もわかりやすく、扱われている商品も魅力的……と優等生っぽいつくりの特集ですが、何よりも着目したいのは、タイトルです。「幸せになれる買い物」とは、実に臆面がなく、ストレートに心を掴んでくるフレーズではないでしょうか。女性誌っぽいテイストのタイトルではありますが、そのミスマッチ感も魅力的に響いてきます。

 そもそも「幸せ」という文言は、自己啓発書でも頻用されるキーワードのひとつ。また、女性誌の特集などでも、タイトルや惹句でよく用いられています。そんな文言を、インパクトのある写真(俳優の伊勢谷友介さんが男前に肉をカッ食らっている姿)の表紙に見つけてしまうと、当然のごとく気になります。今号の表紙は、写真と特集タイトルが組み合わされることで醸される、えも言われぬザラっと感が白眉。否が応でも手に取ってしまうような引力を放っています。「ベストバイ」などの安っぽいフレーズで煽られるより、はるかに心に刺さってくるのですね。

 そんなこんなで、「幸せ」について思いを馳せるような、この連載では珍しい展開になってきましたが、そろそろ本稿の着地点を探してみましょうか。

 過去から現在に至るまで、さまざまな男性誌で、さまざまな特集が組まれてきたワケですが、その趣旨は煎じ詰めてしまえば「幸せ」という言葉に集約されるのかもしれません。そもそも“幸福の追求”はすべての人間に共通する人生のテーマであり、目標・目的といっても過言ではないでしょう。男性誌を読むのも、結局は幸せになりたいから。男性誌は単に情報収集するための媒体ではなく、幸福追求アイテムとしても機能しているのではないでしょうか。

 ここで突然ですが、今回をもちまして、本連載は終了することになりました。いわゆる最終回です。正直、志半ば感もあるのですが、これも大人の事情。仕方ありません。とはいえ、これからも男性誌界隈のことは、生温かく見守っていく所存です。またどちらかで、本連載のようなことができたら嬉しく思います。

 駄文によるお目汚し、まことに失礼いたしました。ありがとうございました。
(文=漆原直行)

【プロフィール】
漆原直行(うるしばら・なおゆき)
1972年、東京都生まれ。編集者、記者、ビジネス書ウォッチャー。大学在学中からライター業を始め、トレンド誌や若手サラリーマン向け週刊誌などで取材・執筆活動を展開。これまでにビジネス誌やIT 誌、サッカー誌の編集部、ウェブ制作会社などを渡り歩きながら、さまざまな媒体の企画・編集・取材・執筆に携わる。ビジネスからサブカルまで“幅だけは広い”関心領域を武器に、現在はフリーランスの立場で雑誌やウェブ媒体の制作に従事。著書に『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』『ネットじゃできない情報収集術』などがある。