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ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」第13回

強制わいせつ裁判敗訴の野村総研、被害女性支援者を控訴へ~法曹界から「詭弁」との批判も

文=新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

 この判決内容を受けA氏は今回、東京高裁に控訴し、一方の野村総研側は一審で「事実」と認定された一連の悪質行為の認定取り消しを求めて付帯控訴をし、東京高裁で争うこととなった。A氏は控訴に踏み切った理由について、次のように語る。

「内容を考えれば実質的な勝訴である。当方は多くの被害者女性たちに配慮して、被害者情報を加害者の野村総研に明かすような不要な立証は一切しなかったが、それでも大部分は真実の通りと認定いただいている。しかしながらわいせつ、脅迫、つきまといまで認定されている野村総研が、正当な告発について名誉棄損と主張している不当な主張が、たとえごく一部でも認められたままでは、このような恫喝訴訟の行為が助長されて被害者がさらに増えてしまうので、それは防がないといけない」

 ちなみに野村総研の代理人弁護士は、一審で東京地裁から「同社と共に脅迫行為を行った」と認定された森・濱田松本法律事務所の高谷知佐子弁護士が変わらず担当している。本裁判は東京高裁民事2部において、12月24日より口頭弁論が開かれる予定である。

h3●野村総研の姿勢に、法曹界から疑問の声も
 
 この事件について野村総研や、同社が所属する野村ホールディングス、野村総研への訴訟資料支援などをしてきたセブン&アイ・ホールディングスに対し、筆者は取材依頼を申し込んだ。そして、回答期日から遅れて、野村総研から以下のとおり興味深い回答が寄せられた。

「株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部 広報課

 取材のご依頼について

 ご質問の判決におきましては、弊社が請求の中で採り上げたブログ記事および送付文書について、被告の弊社に対する名誉・信用棄損、業務妨害が概ね認められ、被告に対し損害賠償の支払いが命じられております。被告がこれに控訴したことにより、現在も同人との間で係争中であるため、関連する取材はお断りをさせていただきます。」

 この回答内容から、野村総研は「同社の主張が『概ね」』認められた」と外部に説明している実態が明らかとなった。だが、前出のとおり訴訟費用の負担割合が「野村総研:A氏=9:1」とされたように、認容割合がわずか1割の内容について「概ね」という表現は適切ではない。

 ちなみに、判決文を含め今回の全裁判資料を見たある弁護士は、次のように野村総研の姿勢に疑問を呈す。

「この判決は弁護士が見れば、誰がどう見ても野村総研の実質上の大惨敗です。名誉棄損の判決においてはなかなか片方だけが一審から完全勝訴とはならない。認容内容も、判決を見ると損害内容が判決文においても定義されておらず不明なままで、信用棄損の範疇とも考えられるような微額のみを認容しているものです。これは森・濱田松本法律事務所という大手法律事務所を付けた野村総研側への配慮で、裁判所が最後に多少調整を付けたのではないかとも考えられる内容ですから、調整分とも考えられます。

 このわずかな内容をもって、野村総研の主張が『概ね』認められたなどとは、誇張を超えて虚偽というべき内容で、典型的な『詭弁』でしょう。名誉棄損罪を構成するかどうかはともかく、弁護士の倫理観としては、こちらのほうが名誉を不当に毀損する詭弁というべきではないでしょうか。まともに倫理観がある会社や経営者、もしくは弁護士であれば反省をするところでしょうが、一審判決を受けても野村総研や代理人弁護士は、なんら反省などしていないことを表していると思います」

 弁護士も疑問を抱くような姿勢を取る野村総研と、A氏の争いは、ついに東京高裁にその場が移された。今後も本裁判の動向を注視していく予定である。
(文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

労働環境改善による企業価値向上支援、ビジネスと労務関連のこじれたトラブル解決支援、炎上予防とレピュテーション改善支援を手がける。労働問題・パワハラ・クビ・炎上トラブル解決の専門家。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。著書25冊。

Twitter:@nittaryo

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