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カジノ解禁の問題点、改めて整理~誘致合戦過熱で自治体に巨額損害、社会問題の恐れも

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●自治体に求められること

 自治体が今後行うべき行動は、次の2点である。まず、国に対して、最低限、カジノ設置区域の選定基準や評価要素をカジノ解禁推進法に規定することを求めることである。法案を事前審査した衆議院法制局も、これらの事項を法律に規定すべきであるとの意見を述べている。これらの事項が法律に規定されなければ、さまざまな憶測や不確かな情報などが流れ、悪質なブローカーやコンサルタントなどに判断を歪められる恐れがある。

 次に、カジノ誘致には、金銭面だけをとっても多大なリスクがあり、失敗すれば、損害がすべて住民に転嫁されることを肝に銘じ、最大限に慎重を期した対応を取る必要がある。具体的には、専門性が高く複雑な事項であるがゆえに、客観中立で、信頼できる専門的立場からのセカンドオピニオン・サードオピニオンを求め、常にそれを記録化しておくことである。住民訴訟が提起される多くの場合、それとセットで、市民から情報公開請求がなされる。それによって、どのようなプロセスで誘致活動が行われ、税金が支出されたかが明らかとなる。自治体が、きちんとした記録を残していなかったり、怪しげなブローカーやコンサルタントに判断を歪められ費用を支出したとなれば、目も当てられない事態となる。

 以上は、自治体の立場から見たものであるが、カジノ法制の透明化・明確化は、カジノ解禁の是非を考える上で、国民・市民も利害を同じくする。カジノ設置区域の選定基準・評価要素や選定プロセスすら法律で明確にしないことで得をするのは、巨大な利権を水面下で不当に囲い込みたい者だけである。

●徹底した熟議が必要

 筆者自身は、法律によって「賭博に関連する公正な社会秩序」(カジノ解禁の実質的な正当化根拠)を確保でき、かつ、国民が、総体として、メリット(雇用増、税収増、財政改善、観光振興、国際的大規模会議誘致、新たな文化の発信など)がデメリット(依存症患者や多重債務者発生の恐れ、勤労の美風への影響など)を上回ると判断したならば、カジノを解禁してもよいと考えている。

 しかし、その前提として、カジノ解禁は、いわゆる「飲む、打つ、買う」のうちの「打つ」という人間の本能的欲望に直結する深いテーマであるとともに、お金の稼ぎ方・使い方という意味で憲法27条の「勤労の義務」にもかかわる重大テーマである。また、特別法を制定して、いったんカジノを解禁すれば、多くの利害関係者が誕生するし、現行法制の多岐にわたって特例的措置を設ける以上、後になって廃止することは事実上不可能であり、もはや後戻りできない。

 従って、カジノを解禁するかどうか、解禁するとしてもどのような制度の建て付けにするかについては、国民間の熟議が必要であり、来年1月からの通常国会においても緻密な徹底審議が求められる。
(文=山脇康嗣/弁護士)

●山脇康嗣(やまわき・こうじ)
1977年大阪府生まれ。慶應義塾大学大学院法務研究科専門職学位課程修了。東京入国管理局長承認入国在留審査関係申請取次行政書士を経て、弁護士登録。入管法のほか、カジノ法制に詳しい。現在、第二東京弁護士会国際委員会副委員長。主要著書として、『詳説 入管法の実務』(新日本法規、単著)、『入管法判例分析』(日本加除出版、単著)、『Q&A外国人をめぐる法律相談』(新日本法規、編集代表)、『事例式民事渉外の実務』(新日本法規、共著)、『こんなときどうする外国人の入国・在留・雇用Q&A』(第一法規、共著)がある。

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